11話「妹たちと運動会」 中編

「な、菜摘。 どうしてここにいるんだ?」

「うーんとね、うちのお母さんが作った煮物をお裾分けしに陽ちゃんちに行ったんだけど、そしたら陽ちゃんのお母さんが陽ちゃんは妹ちゃんの運動会に行ってるって言うから」


 菜摘はそう言うと一呼吸おいて


「来ちゃった」


 と、ニッコリと笑った。


「あ、レナちゃんおはよう」

「おはよう菜摘ちゃん」

「レナちゃんも一緒に来たんだね陽ちゃん」


 菜摘はそう言うと俺にニッコリと微笑みかける。

 なんとなく顔が笑っていないような気がするのは気のせいだろうか……


「あ、ああ。 まあな……」


 レナの方をちらっと見るといつも通りの猫を被った笑顔でいた。


「陽太くんがどうしても一緒に来てほしいって言うから」


 レナはそんなデタラメなことをさも本当かのようにほざいた。

 こ、こいつ……俺に脅迫してまで我が妹たちの運動会に来たくせに……

 それがバレたくないからって適当なこと言いやがって……

 腹が立ったのでレナを睨むと睨み返されたあげく足を踏みつけられた。


「ふーん、陽ちゃんが誘ったんだね」


 菜摘はぷくーっと頬を膨らませる。


「ま、まあ……はは」

「最近陽ちゃん全然構ってくれないからちょっと寂しいな」

「わ、悪い……」

「ねえ、私も一緒に見てもいい?」

「あ、ああ。 別に構わないけど」


 レナの方を見ると満面の笑みで「全然いいよ〜、菜摘ちゃんなら大歓迎!」なんてことを言っていた。


「じゃあお言葉に甘えちゃおうかな!」


 と、そんなこんなで俺たちは三人で運動会の観戦をすることになった。


 ❇︎


「ちょっとなんであの女がいるのよ」


 トイレに行くと菜摘が席を外した途端、レナは俺にそう詰め寄った。


「仕方ないだろ。 来ちまったもんは……てか俺のせいじゃないだろうが」

「あの女はあんたの後を追って来たんだからあんたのせいでしょ。 まったくせっかく堪能しようとしてるところなのにとんだお邪魔虫よ!」

「だったらお前が断れば良かっただろ」


 俺がそう反論するとレナは俺の足を思い切り踏みつけた。

 さっき菜摘がいた時よりも遥かに威力がでかい。 痛えよ……


「レナは誰にでも優しい気前のいいお嬢様で通ってるのよ。 断われるわけないじゃない」


 皆は本当のレナの姿を知らない……

 こいつの本性を知ったら皆びっくりするだろうな……


「まあいいわ。 とりあえず私が暴走しないように協力頼んだわよ」


 そう言った矢先、応援の一環としてチア服に着替えた智咲と茜の姿が現れレナは絶叫した。

 そしてタイミング悪く、


「レナ……ちゃん……?」


 菜摘がトイレから戻ってきた。

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