第7話 魔法のその後

 【クリーン】の【魔法】を何度も成功させた自分は、次にまだ取得していない【魔法】を成功させられないかと考えていた……。


 どんな【魔法】で試すのが良いか考えたが、本来なら自分の属性である雷属性で試したいけど、さすがに失敗して部屋が燃えたり、感電しても嫌なので無難な風属性を試したいと思う。 

 【クリーン】が何属性なのかは分からないが、雷属性ではないことは分かったので、ステータスに表示されている自分の属性は得意属性なだけであり、他の属性も使えるのではないかと考えていた。



 そよ風を起こす程度で考え、イメージを固めて【魔力】を手のひらに込めてみる。



 ……。




 ……。



 ……反応がない。



 イメージ不足なのかな?


 そもそものイメージの仕方が間違っているのかな?


 科学的に説明しろといわれても室内で風を起こす方法なんか知らないしな。


 扇風機?


 それからいろいろな風に関するイメージを試してみたが、どれも反応が無かった。


 そもそも属性があると言うことはファンタジー要素で魔法現象が起きるのだろうか?


 正解への道がわからない迷宮を進んでいるみたいだ……。


 試行錯誤しながら数時間が経過したが、失敗続きだった。


 今日の練習が出来る時間は終わり、収穫は【クリーン】が成功したことだろう。


 やはり異世界転生だとしても慢心せず、頑張ったほうが良いかもしれない。 なんでも思い通りに行くと思ったら大間違いだな。


 仮に才能が有っても、天狗になって【魔眼】だけの人とかになるのは嫌だしな……。


 だけど諦めるのはまだ早いので、今後も引き続きこの練習しようと思う。



 ☆



 【クリーン】が成功してから数日後……。


 現在考えられる【魔力】消費方法は、【クリーン】しかないので、ひたすら【クリーン】を繰り返す作業をしていると、手のひらに【魔力】を集めるのもだいぶ慣れてきて、連続して使用する事が出来る様になっていた。

 そして、連続して使用する事が出来る様になった事により、【魔力】が足りなくなり【魔法】が発動しなくなった。 


 しかし、【クリーン】が発動しなくなったのもたったの数分だけで、【魔力】が自然と補充されたのか、すぐに【クリーン】が使える様になっていた。


 これにより分かったことは【魔力】が枯渇しても、ラノベ等でよくある気絶にはならず、ただ【魔法】が発動しないだけらしい。

 しかも、【魔力】の回復スピードがかなり早いのかもしれない。 【クリーン】の【魔法】が単純に燃費が良いだけかもしれないが……。


 これなら安心して【魔法】の練習が続けられる。


 もしかしたら、そよ風を起こすのは【魔力】が足りないだけかもしれない。 そう考えると自分の【魔力】量はかなり少ないのかな?


 自分は産まれたばかりだから基準がわからないな。


 今後は【魔力操作】、新【魔法】の練習、【魔力】消費、【鑑定】を繰り返そうと思う。 一気にやることが増えたな。



 言葉に関しては、母親にアウ~・アウ~と話しかけては返事を聞いているが何を言っているのかが、未だによくわからなかった。


 【ステータス画面】や【鑑定】等の文字は何故か日本語だったりするし。 勝手に知っている言語に変換されてるのかな?


 どうせなら異世界言語とかのスキルが最初から欲しかった。




 ☆



 それから数日後……。



 毎日の日課である【魔力操作】をこなしていたら、部屋に知らない男性が母親と共に入ってくるなり、何かを叫びながら抱きついてきた。


「○△×○×○▲!」


 自分に抱きついてきた金髪の爽やかな男性は、かなりのイケメンだった。


 イケメンは爆死してしまえば良いのにと少しだけ思ったが、このイケメンが自分の父親である可能性が高かった。


 そして金色のカッコイイ革の鎧?を着ており、ちょっと痛かった。 赤ん坊に抱きつくとき位は鎧を脱いで欲しいものである。


 鎧が痛いアピールを母親にしてみたら、イケメン男性は母親に頭を叩かれていた。

 イケメン男性の身長は母親より頭1つ分高く、鍛えられた細マッチョなのが羨ましい。 爽やかイケメンなのに何故か凄く強そうに感じた。



 未だに自分の容姿はまだわからないが、両親共にもの凄く美形なので、将来的に自分もイケメンになれる可能性があるかもしれない。 イケメンになれるなら、それだけでも転生の価値が有りそうだ。


 それにしても父親は何の仕事をしているのだろうと気になった。

 見た感じでは鎧を着ていて前衛職だけど、騎士っぽくは無いから傭兵だろうか? 金色の鎧を着た騎士や警備兵がいたら成金っぽくて嫌だしな。 まあ、金色の傭兵も微妙か。


 父親の鎧をこっそり【鑑定】してみたら、【雷天竜の鱗鎧】という名前が出てきた。 【雷天竜】がどんな強さかは分からないけど、雑魚では無いのが分かる。 もしかしたら父親は結構凄い人だったりするのだろうか?


 しかし、父親は自分にべったりでかなりの親バカな感じだった。 ちょっとイケメンにベタベタされるのは奇妙な感覚だった。


 ……初めての子供だと親は大体こんなものなのかな?



 ☆



 この2日間、自分にはじわじわと不満が溜まって来ていた……。


 その理由は、ずっと近くに父親が居たせいで、【魔法】の練習が全く出来なかったからだ。


 しかし、父親は2日間位の滞在をしたら、名残惜しそうにしながら家から出て行った。


 イケメンにそんな顔をされたら、惚れてしまいそうだ。




 そして、やっと父親から解放され【魔法】の練習を再開するのだった。


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