第48話 無詠唱
「なるほどね。宝石か」
アーデさんが【細工】スキルで装飾しながらつぶやく。
現在、生産職のトッププレイヤーが集まっているのでマジックリング関連のことを話すことにした。もちろん
「これはまた……凄い物を発見したね。【付与魔法】にそんな使い方があったんだね」
「結局【魔力操作】なんかも使ったんで正確なことは分かりませんが、狙った効果を出すことが出来たので【付与魔法】を使う事で効果を付けることは可能になると思います」
「そうだね。そこら辺は検証して確かめるしかないね。リューヤ君のは種族スキルだからそれが関係してる可能性もあるし。……よし、これで完成だよ」
流石アーデさん。耐久値は全く減っていないのにきれいに装飾してくれた。もしかして俺が採ってきた銀も使ってるのかな? ともかくこれならミキも喜んでくれるだろう。
「【付与魔法】か。効果が低いから取る必要は無いと思ってたんだが、取っても良いかもしれないな」
「そうだね。+1でも付くのと付かないのじゃあ変わってくるだろうし」
「更に言えば、今は効果は低いけどレベルが上がってステータスが上がれば効果も高くなっていくからね。損はないんじゃないかな」
【付与魔法】の最初の魔法で上げられる効果は1.1倍だが、ステータスが上がっていけば上がる数値も変わってくる。もっと攻略が進んでプレイヤー達のステータスが上がれば、必要なスキルになるかも知れないな。
「あっ、そういえばロンに頼みたいことがあったんだ。俺の装備を作ってくれないかな?」
「それについては問題ないが、良いのか?」
ん? どういう意味だ?
何でも掲示板では俺が装備を更新しない縛りプレイをしているのでは無いかと言われているそうだ。
まあ装備は武器以外初期装備だからな。そう思われても無理ないかもな。
鎧装備なら一応俺でも【鍛治】で作れるけど、はっきり言って重いから行動速度が落ちるんだよな。飛ぶ時の魔力消費量も上がるし。そう考えると皮装備とか軽い物の方が良い。
と言うわけでロンにボス討伐で手に入れたドロップ品を渡した。
「凄い量だな。これだけあれば5人分の装備一式は作れるぞ」
「俺の分とナツメの分だけでいいよ。あとはコレだな」
俺はインベントリからエマから買った道具を出す。
「コレは【錬金】を教えてくれた子から買ったものなんだけどね。この道具を使うと鉱物を糸に出来るんだ」
「…………」
「…………」
「…………」
……はい、ひそひそタイムです。少々お待ちください。
糸でも作っておくか。
どんなふうになるかは俺もよく分からないので、まずは銅を使って見ようかな。
道具の上に銅のインゴットを置いて、魔力を流す。
すると銅の下の魔方陣が光り出し銅が道具の中に吸い込まれるように消え、下の部分から細い糸が出てきた。インゴット一つでそれなりの長さが出てくるな。
こそこそタイムが終わったようだ。
「えっと、リューヤ君。まずその道具って私たち以外には話してない?」
「ええ、コウ達にはこういうの話してもあんまり得るもの無いですし、糸ならやっぱロンかなと思って」
「そう、ちなみに他に私たちに見せたい物とかある?」
他に見せたい物? ああそういえば、ロンにあげたい物もあったんだったな。
インベントリからミシンを取り出す。
「これは元々は
これもエマの所で見つけた物だ。ロンに上げようかとも思ったが【魔力操作】を持っていないと使えないので、手動でも動かせるようにエマと二人で改造した。もちろん【魔力操作】でも動くようになっている。
「ミシンか。こっちでは見たことないな」
「ミシンなら頑張れば作れると思うからまあ問題は無いかな」
「これなら問題はなさそうね」
そんないつも俺が問題を起こしてるみたいな言い方はやめて欲しい。
せいぜいがモルドのクエストクリアとか【魔力操作】とかクラーケンの討伐とか、
……結構あるな。
その後なんやかんやあって、ロンに大量のミスリルの糸と素材を渡して、三人と別れた。
俺は少し気になることがあり、おばちゃんのところに行きそのまま生産所にとんぼ返りした。
先ほどの糸を出す時に思ったのだが、魔方陣が光っている所から見て多分あれって魔法の一種だよな、と考えたのだ。
魔法なら詠唱が要るはずだ。だがあの道具は詠唱をしなくても使えた。なぜだろうか?
【鍛治】の時もMPは消費したけど詠唱は使わなかったな。
そもそも詠唱はなぜ必要なのだろう?
魔方陣が光っている所から見ても、魔法の発動その物には必要ないのではないか?
ではなぜ詠唱という物があるのか。
詠唱中に起こることと言うと……魔方陣が展開されて魔力が集まる?
この二つを詠唱が行っているとしたら?
もしかして詠唱をせずに魔法を放つ事が出来るんじゃないか。
魔力を集めるのは【魔力操作】を使えば良い。
魔方陣の展開は……さっき買ってきた紙とペンを使って魔方陣を書けば良い。
………魔方陣どうしよう。
ナツメを【
取りあえずこれで完成だ。
紙に魔力を流してみる。
……何も起こらない。
ナツメにも試して貰ったが結果は変わらなかった。
何が駄目だったのだろう。ちゃんと書き写したんだがな。
やはり無詠唱で魔法を放つのは無理なのだろうか。
後何かしていないことは……そういえばエマも魔方陣を書いてたな。
その時に確かインクを取ってきてくれとか頼まれたな。
……インク?
なぜインクを俺に取ってこさせた?
確かインクの名前は……魔インク。
インベントリから余っている魔インクを取り出す。
そういえばエマが特殊なインクとか言ってたな。
これで書いたらどうなるんだろう?
そういえば錬金板にも魔方陣が書かれてたよな。
そう思い、錬金板を取り出し【鑑定】で見てみる。
錬金板
特殊な魔方陣が書かれた板
木の板に魔石が混じっている
魔石が入ってるのか。
これも真似た方が良いかな。
木材はさっき全部リンカさんに上げたから無いな。
魔石に直接書くか。……いや無理だな。
そういえば【転写】があったな。
あのときはエマに使ってもらったけど、あの後に俺も【錬金】のレベルを上げて使えるようになった。
最初は紙に魔インクで魔方陣を書き、魔石に転写する。
その魔石に魔力を流すと、目の前に魔法を使う時のターゲットが出てきた。
もう一度魔力を流すと魔石から【ファイアーボール】が出た。
「よし!」
上手くいった! とは言え威力がかなり低い気がするな。
◇
その後検証を重ねた結果分かったことがいくつかある
【魔力操作】スキルが必須
【魔力操作】があれば持っていない属性の魔法スキルも放つことが可能
属性の魔法スキルを持っていた方が威力が高い
任意に威力の調整は出来ない
今のところこんな感じか。
取りあえず夕飯作りにログアウトするか。
あれ? レベル上げって結局木材を採りに行った時だけだったな。
しょうが無い。食後はナツメとラルミィに狩りにでも行ってもらおう。
俺? もうちょっと魔法のことを調べておきたいんだよね。
あと、ミキの棒も作ったし。……そろそろコウとルカにも武器を作ってやったほうが良いかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます