act.49 解散。ララと愉快な仲間たち

 持参していたありったけの食糧を広げる一行。黒猫とミハルが哨戒しているので付近は安全だと判断していた。


「ところで、ミサキ姉さまはどちらへ行かれたのでしょうか?」


 フィーレ姫の質問にララは首を横に振る。


「あの人の行動は誰にも分らない。忍者顔負けなんだ」

「へえ、そうなんですか」

 

 ラーメンをすすりながらグスタフが相槌を打つ。その隣ではリラ・シュベルベがラーメンをすすっている。何やら意気投合している様で、フィーレにはそれが気に入らないらしい。


「面白くありませんわ。まったく」

「そうだな。どこかで良い男見つけないとな」

「そうですわ。ララ姫」


 暢気な光景である。周囲では戦争中であろうに、ここは平穏そのものだった。

 ここに集う戦力に対して攻撃を仕掛けることは無意味だと判断されているのだろうか。


「強いと悟られることが良いのか悪いのか、分からないな」

「良い事だと思いますよ。ララ様」


 糧食をかじりながらフィーレが返事をする。

 この姫はそんな粗末な食事であっても優雅に食するのだ。ララは自分と比較して、この姫から感じる女性らしさを言うものを学ぼうと考える。

 自分もこういう風に優雅になれるのだろうか、女性的な美しさを出せるようになるのか、考えて答えが出るわけがなかった。


 正午まであと15分というところで動きがあった。王城より大挙して押し寄せる異形の群れ。北方よりは多数のロボットとサイボーグ、航空機と戦車が接近してくる。


「最後の一仕事だ。黒猫、ミハル、準備しろ」

「了解」

「わかりました」


「待って下さい、ララ姫。あれは私たちベルグリーズの魔術師にお任せください。グスタフ、フィーレ、行きますよ。シュナイゼルも手伝ってください」

「了解しました」

「分かりましたお師匠様」

「師匠。お任せ下さい」


 リラ、グスタフ、フィーレ、シュナイゼルがそれぞれの機体へと乗り込む。


「私の合図で一斉に魔力を放出。上空の黒猫さんは退避してください」

「聞こえたか黒猫。退避だ」

「了解」

 

 黒猫が高空に退避するのを確認したリラ・シュヴァルベが合図をする。


「一斉射撃、始め!!」


 その合図でベルグリーズの機械兵士にんぎょう達は一斉に魔力を放出した。やはり彼らは魔力を放出する広範囲攻撃が得意なのであろう。上空に迫る戦闘機や戦車、ロボットやサイボーグ、そしてバンパイアをはじめとする人外の群れをことごとく破壊し焼き尽くした。


「わかってはいたが、何ともすさまじい火力だな」

「連合宇宙軍の戦艦一隻に相当します。まともにやり合うとなると少々厄介ですね」

「まあ、今は敵対していないのだから安心しろ」

「そうですね」


 ララとミハルの会話にマユが割り込んできた。


『ララさん。もうすぐ正午になります。撤退か継戦かを選択せねばなりません』

「撤退する。もう闘う理由はない」

『わかりました。他の方はどうされますか』

「旭さん以外は皆元の世界へと帰っていただきます。旭さんはどうされますか?」

「僕はこのまま戦うことにします。状況を見ながら人と人外の架け橋となれるように」

「では選別です。糧食と水、日本刀とサバイバルナイフ、それに拳銃です。どうかご無事で」

「ありがとうございます。ララ姫。貴方と一緒にいる間、楽しかったですよ」

「私もです。旭さん」

「さて、ボクはどうするかな?」

「玲香さんは帰らないのですか?」

「ボクは情報複写体ってやつなんだってさ。つまりコピー。帰るところなんてないんだよ」

「じゃあ、アルマ帝国に来ますか?」

「そうしてもらえると嬉しいよ。黒猫みたいな獣人がいっぱいいるんでしょ」

「そうだな」

「じゃあ行く。面白そうだし。ララちゃん可愛いし」

「だそうです。マユ姉さま」


『分かったわ』


 その時、戦場全体にアナウンスが流れた。


「社長戦争開始より48時間が経過しました。現在生存している代理の方は帰還もしくは24時間の継戦を選択できます。各自口頭ではっきりと意志を述べてください。繰り返します。現在生存している代理の方は帰還もしくは24時間の継戦を選択できます。各自口頭ではっきりと意志を述べてください」


「帰還する」


「継戦します」


 ララと旭が返事をする。

 ララとヒナ子とソフィアはその場で光に包まれて転送された。ソフィアをヒナ子はララの装備品扱いとなっている為、同時に帰還したようだ。

  

 そこに地中からアルマ帝国の特殊艦ケイオンが浮上してくる。


「ベルグリーズの方々、こちらへどうぞ。遠山玲香准尉もケイオン艦内へお入りください。ミハル中尉とコウ少尉は甲板上で待機願います」


 甲板上から拡声器を使ってネーゼが呼びかける。皆がケイオンに収納され再びケイオンは地中へと潜航した。


 そこへ一人取り残された日向旭は日本刀を担ぎ、あたりを見回していた。


「やはり、ビンイン陣営の排除が急務でしょう。アライさんとの約束を守らないとね。もう少しポイント稼ぎましょうか」


 そうつぶやき、旭は王城方面へと歩いていった。

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