生徒会メンバーとの出会い
「あれは・・・」
「どうした雅也?」
「豊、あの子知ってるか?」
「あの子?」
「今急いで人混みの中に入っていった男子生徒だ」
「男子生徒・・・?」
「あ!僕見てたよ!あの綺麗な顔立ちしてる男子生徒だよね?」
高円寺と桐林の二人が話している所を元気良く割って入って話し出す榊原。
「誠!廊下で手を挙げて飛び跳ねるんじゃない!」
「まあまあ、豊そんなに目くじらを立てるな。それで誠、あの男子生徒は誰なんだ?」
「う~んとね、確か名前は早崎 響って言うらしいよ。今年の新入生だって。なんか僕の周りの子達が今年の一年生の中に、凄く綺麗な顔立ちで笑顔が素敵な男子生徒が入学してきたと噂してたからさ。実は僕ちょっと隠れて教室に見に行ってみたんだよね~」
「・・・早崎?確か早崎楽器て言う楽器業界では最大手のブランドグループの名前と一緒だよな?」
榊原の話に興味を示した藤堂が話に混ざってきた。
「健司良く知ってるね~。うん、その早崎楽器の御曹司だよ」
「早崎楽器・・・確かそこの代表取締役社長は敏腕社長として有名だが、基本的に社交の場を嫌い家族と共に田舎に引き籠もっている変り者だった筈。そう言えば今年そのご子息とご令嬢の双子の兄妹が入学してきた筈だったな」
「そうそう。ただ妹の方は、なんか病気で暫く自宅療養するから入学式から休学してるらしいよ~。正直兄があんなに美少年だと妹の方も美少女だと思うから、僕ちょっと見てみたいな~」
「そんなに凄い美少年なのか・・・ちょっと気になるな。今度俺も見に行ってみるかな」
「なら健司、今度僕と一緒に見に行こう!」
「ああ良いぞ」
「・・・あまり下級生の邪魔になるような事はするな!」
「もう~豊は口うるさいな~!」
桐林の小言に榊原は頬を膨らませるが、そんな榊原を無視して桐林は順位表を見上げる。
「早崎 響・・・順位は中間辺りか。まあ、どれだけ顔が良くても所詮成績は平凡か。それよりも上位の者が今年の生徒会メンバー候補だな」
「・・・・」
「・・・雅也?」
反応無い事が気になり桐林は横に立つ高円寺を見る。その高円寺はじっと順位表のある名前を見つめていた。
「早崎 響か・・・」
「・・・お前が俺達以外の人物に興味を示すなんて珍しいな」
「・・・そうか?」
「ああ、お前俺達以外は興味無いせいか誰にでも平等に優しく接しているだろう。そんなお前が一人に対して特別興味を示す事など今まで無かったぞ?」
「確かに・・・どうも入学式の時に見掛けてから何故か気になっているんだ」
「入学式?・・・ああ、あの時雅也が壇上に上がった事で会場内が騒然としていたな」
「まあ、あれは予想出来ていた事だったから良いんだが、ただその中で早崎君だけが動揺せず真っ直ぐ私を見ていたのが凄く印象的だったんだ」
「ほぉ、お前の顔を初めて見ても動揺しなかったのか。なるほど、それは気になる気持ちも分からんでもない。早崎 響か・・・俺も少し興味が湧いてきたかもしれん」
「あ!なら豊も雅也も今度一緒に見に行こうよ!」
「・・・気が向いたらな」
「・・・・」
榊原の元気な誘いに桐林は曖昧に返事を返し、高円寺は苦笑を浮かべる。
◆◆◆◆◆
まさか順位表の前で自分の事を話されているなど露にも思わず、私は喧騒に紛れて既にその場を後にしていたのだった。
───テストの順位発表から数日後。
あの後体力測定もあり、私はそこでも誰にも分からないように適度に手を抜いて、中間ぐらいの結果を残す事に成功していたのだ。
なんとか無事に最初の問題をクリアしてホッとしつつ、教室でもなるべく目立たないよう気を付けて、休憩時間のこの時間も教室の窓際の席で一人読書にふけっていた。
しかし何か視線を感じふとそちらを見ると、何人かの女子が顔を赤らめて私の視線から顔をそらす。
私はそれを不思議に思いながら視線を他に移すと、今度は別の所にいた男子がさっきの女子と同じように、顔を赤らめて顔をそらしたのだ。
・・・なんだ?もしかして私嫌われているのか!?
女とバレないようなるべく他の人と接しない日々を送っているせいで、クラスから嫌われてしまったと思い落ち込んでしまう。
本当なら今頃女子の制服を着て、女の子の友達を何人か作って休憩時間に楽しくお喋りしてる筈だったのにーーー!!
これも全てあの馬鹿響のせいだ!!!今一体どこにいるのよ!!!!
昨日の夜、寮の自室でお父様に電話をし響の捜索状況を聞いてみたけど、全く見付からないととても疲れた声で話された。
一応響らしい目撃情報はあったらしいけれど、すぐその場に向かっても既に去った後だったとか。
しかし響を探してくれているのは、見付けられぬ人は無いと言われる捜索のプロらしいのだが、そんな人でも見付けられないでいるらしい。どうも各地を神出鬼没に移動しまくっているようなのだ。
我が兄ながら本当に同じ人間かと疑いたくなるよ・・・。
とりあえずまだ暫く響の振りをして男装しなければいけないこの状態と、友達を作る事が出来ずもしかしたらクラスの人に嫌われているのかもしれないこの状況に激しく落ち込んでしまたのだ。
・・・とりあえず響に会ったらまず一発殴る!!
そう響に対して怒りが沸々と沸き、机の下で拳を強く握りしめたのだった。
その時、教室の入口辺りから黄色い声が上がる。
私はその声にまたか!と心の中でツッコミを入れながら声のした方をチラリと見た。
すると教室の入口近くの廊下に、案の定生徒会メンバーが勢揃いしていたのだ。
『生徒会メンバーが行く所常に黄色い声有り!』
私はこの学園に入学してから、つくづくそう思っているのだった。
何故生徒会メンバーが一年生の教室近くに現れたのかは知らないが、私には関係ないと騒然としている教室内を気にせず再び読んでいた本に目を落とす。
しかし、突然読んでいた本に影が射した。そこで私の前に何人か立っている事に気が付いたのだ。
私は不思議に思い顔を上げ驚きに目を瞠った。
「なっ!?」
何故か私は生徒会メンバーの四人に見下ろされていたのだ。
「わぁ~!やっぱり近くで見ても凄く綺麗な顔だね!僕の所でモデル出来そうだよ!」
「なるほど、確かに噂になる程の美少年だな」
「・・・だが、顔は良くても成績も運動も中間と言う平凡な能力だがな」
「豊、言葉キツイ!なら何で付いてきたんだよ!」
「・・・俺は雅也に付いてきただけだ」
「そう良いながら、ちゃっかりこの子の運動能力もチェックしてたんだな」
「健司黙れ!」
「お~怖~クールな顔で凄まれると怖いよな」
「僕もそう思うよ~豊はもう少し笑顔を覚えた方が良いよ!」
何故か私の目の前で、榊原と藤堂と桐林が言い合いを始めてしまった。
私はこの状況に頭が付いていかず呆然とその三人を見ていると、じっと私を黙って見ている高円寺に気が付きそちらを見る。
するとそれに気付いた高円寺がニコリと微笑んできた。その瞬間教室中に割れんばかりの黄色い声が響き渡ったのだった。
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