第10話 はるかにとおい

 いつもの場所から、貴女を眺める。

 揺れる電車を気にも留めずに、僕の知らない本を読む。

 光に透ける明るい髪はさらさらと流れて、どこまでも綺麗に映る。

 桜色に染まる頬に、微笑みを浮かべる口元に、袖から覗く小さな指に、少し可愛いと思ったりして。

 そんな貴女は、僕の世界からはとっても美しく見えて。

 


 いつもの席から、貴方を眺める。

 友達の会話に加わりもせずに、一人静かに音楽を聴く。

 静かで真っ直ぐな佇まいは、誰よりも目立って見えて。

 男の子にしては少し長いまつ毛に、太い首から覗く喉仏に、すらりと長い指先に、ときめいちゃってりして。

 そんな貴方は、私の世界からはとっても眩しく見えて。


 ああ。こんなにも近いアナタは、どこまでも遠い。

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