第41話 酒とクラーク

「プハァァァァァ……一日の終わりはこれだよこれ!」


仕事から帰ったクラークは、俺の開発したビールを飲んでいる。


この世界には葡萄ぽい果物から作ったワインとか、アフリカであるような穀物に含まれる糖を、単純に発酵させた醸造酒ぐらいしかなかった。


しかし俺の知識から複発酵によるビールを作っていた。

ビールは大麦を発芽させて麦芽にして砕き、それにイースト菌によりデンプンを糖に変える。それにポップ似た植物を加えて煮て瓶に詰めて、そのまま発酵させるとビールは出来るのだ。


もちろん日本酒も作った。米は蒸した米に麹を入れ発酵させ、酵母と水を加えて醪を作り発酵させて濾過し加熱して水を加え濾過して加熱と……まあいろいろと並行複発酵酒は工程がめんどくさい。


ただこのマルトでは米の生産が増えている。今では小麦よりも簡単ですぐに食べられるから粉にしなくていいから、マルトでは米の方が多く食べられていて、大量に栽培されている。そのせいかわからないが、マッシュたちのおっさん連中には日本酒が大人気だ。

そしてエルフの呪紋による魔法によって、発酵が簡単に出来るので大量生産が可能になっている。


「あんまり飲み過ぎないようにね」


シールはつまみと晩飯を出しながら言う。

クラークは酒が大好きだ。ほっとけば酒樽単位で飲んでしまう。

まあクラーク自体は酒に強くて、酔って暴れたりはしないけど、飲み過ぎはクラークの身体が心配になる。


「くぅぅぅぅぅううたまらん、火酒はモローラが一番美味い!」


ビールの瓶を早速空けたクラークは、モローラを言う酒に手を出した。

このモローラと言う酒は俺が作りだしたオリジナルの酒だ。


火酒とは簡単に言えば蒸留酒。アルコール度数が高くなることから酒に火が付くことからが由来で、みんなからいつの間にか言われている。

もちろんブランデーとかウィスキーとかから作る火酒蒸留酒も作っていたが、モローラが最も好まれていた。


原料がこの世界独特な果物のモロ。

形はドリアンと言うよりも某漫画に出てくる〇魔の実ような形をしている。


年がら年中、常に木の実をつけるので、食料がない時の非常食として役に立っているのだが、いかんせん不味い。

果物なので甘いのは甘いのだが、甘さの奥に渋みと苦みがある。まるで渋柿のような不味さだ。だから非常時以外は食べない。

つまりは今は美味しい食事に溢れているマルトでは、まず食べる者がいないのだ。


ただこのモロは手間がかからず育ち、いざっていう時の非常食になるから、マルトが村だったころからあちこちに植えていて、マルト中に沢山生えていた。

街を広げるのに邪魔という理由で、このまま木ごと処分するのはもったいない。


……というか昔からマルト開拓当時からの迷信で、モロの木を切り倒すと不幸になると言われている。



だから利用方法を考えた。

モロの実を絞り、その果汁を加熱してから酵母を入れ発酵させる。そして発酵をして出来た酒を密閉出来る特殊な容器で加熱し、それによって出てくる湯気アルコールを集めて、蒸留することで出来たお酒がモローラだ。


味見を少しだけしたが、モロの実の独特の甘い果実の香りがするのだが、飲むと約50度ぐらいという高い酒精 アルコール度数のせいか、燃えるような感覚が口いっぱいに広がる。ちなみにモローラという名前はテキーラからもじったのだ。テキーラ並みに酒精アルコール度数高いのが名づけ由来だ。

その味はブランデーやウイスキーとかウォッカ、そしてテキーラとも違う味だった。前世でも味わったことのない極上の酒になっている。


まだ街の外には販売をしていないが、日本酒サケやビールと共に後々グレールにも販売をする予定だ。

すでにこの街に来ると珍しい酒が飲めるという噂が立ち、酒好きの観光客が大幅に増えていた。


「ごちそうさまでした」


「あらもういいの?」


「うん、父さんに付き合っていたら、いつまでたっても食事終わらないし」


「まあ確かにね」


シールが笑う。シールが止めなければクラークは延々と飲み続けるからだ。


俺はクラークが酔っていくのを、のほほんと見ているつもりはない。俺は忙しい。食事が終われば部屋に入って、新たに発表するための新しい発明本を書いていかなければいけないからだ。


「あと少しでラークは成人になるよな!成人になったら一緒に飲もうぜ!」


顔を真っ赤にしたクラークがそう言うが、この世界では成人しても10歳だ!

まだまだ飲むのは早い。

だからまだ味見以外で飲むつもりはない。




俺は部屋に入り発明前世の記憶を本に書いていく。

大まかな原理と理論を書いていれば、リリックが全て実現してくれるから思いついたものを書いていけばいい。


そうそう酒のせいか、観光客も人口が増えたのでぺぺが発狂しかけていたのだが、昨日解決方法を提案した。


それはバラバラに書いていた報告書等は表を作り、それを大量に印刷して、細かく書いてもらう。そして業務を賢いマルトの住人従士者の子孫達に数十人に仕事を分散させた。そしてその内容を執事が的確に簡略化してまとめた後、決定と確認ぐらいをペペが許可をする様にシステム化した。


パソコンさえあれは、俺の前世の仕事でシステムエンジニア培った知識が役にたつのだが、さすがにパソコンはまだない。リリックに理論を言えば作れるかもしれないが、さすがに難しいから開発には時間がかかるだろう。リリックは今は忙しいから、難しいと思われる物パソコンを作るために手間取っては欲しくない。



『うぅぅ悪魔くんから神童くんに戻ってくれた』とペペが泣きながら俺に抱きついてきた。

そしてポポの仕事も簡略化できるところを考えて、仕事量を激減させた。ポポも激務から倒れる寸前だったから、身体が大きな二人に同時に抱きつかれて圧死しかけた。

それを見てルゴが大笑いしていたからムカつく。


ちなみにルゴはうちの隣に家を建ててやったので、そこに住んでいる。

流石に一緒に暮らすのは嫌だ。


『主は俺の身体抱きたければいつでも抱いていいんだぜ』と言って、平気で俺に抱きついたりしてくるからだ。

ルゴは絶世の美少女。しかも胸がでかくロリ顔。前世が童貞で死んだ俺にはめちゃくちゃ良い話だ。

欲望の限り抱いてやりたい。



……ただし中身がゴルドというゴツイオッサンでなければの話だ。

『俺が男って気にするな!気持ちいいことは好きだし、何人も男とはして慣れている』と言っている。


ゴルドがよくても俺は気にするんだよ!

せっかくの第二の人生……いや初の童貞喪失は大事にしたい。

中身がオッサンとはしたくない。外見が美少女でもそれはない。


ふう……変なこと考えていたら喉が渇いた。

確かキママスのジュースこの世界独特の果物が冷蔵庫にまだ有ったはず飲むか?

俺は部屋からでてからダイニングキッチンに入る。


「ダメよクラーク、ベッドまで待ってよ」


クラークがシールのスカートをめくり上げて顔を突っ込んでいる。


「待てない!こんな魅力的な妻を見て我慢出来る夫がいるだろうか!いやいない、いるはずがない!だからシールはここで俺に犯されるべきなんだ!」


クラークは完全に酔っ払っている。

普通の酒には強い醸造酒では酔わないクラークだが、さすがにアルコール度数が50度を優に超える蒸留酒のモローラを飲むと酔ってしまう。


クラークは酔っても、俺の前世の親父みたいに暴れたり、俺らを殴ったりはしないが、シールに対してはエロくなる。

まあシール以外の女に、こんなことしたらシールに殺されるだろうけど……。


「あっああんダメ」


駄目と言いつつ、抵抗をしなくなっているシール。その上自らスカートを持ってめくり上げ、クラークが舐めやすいようにしている。


「なにが駄目なんだ? こんなにも濡らしているぜ? 欲しんだろ?」


クラークがエロおやじのように言いつつ、シールの秘部を舐めづける。


「ダメッよ、ああんっこんなところでなんて!はしたないわ!ラークも来るかもしれないしっ……ああんんん」


なにがはしたないだ!

こんなこと年中しているだろう!俺に見せるのが恥ずかしいなら、俺が寝ているベッドの横でするなよ!


「いいんだぜ!乱れるシールが可愛い、ラークが来たら見せてやろうぜ」


そう言って素早くパンツを脱いだクラークは、立ち上がりシールを机に載せるとバックの体勢から、勃起しているチンポをシールに突っ込む!


「あーーあんんんんらめぇぇぇ」


いきなり突っ込まれ感じるシール。


「あん?ほれこれだけで感じるのか!嫌がっているくせに俺のチンポはそんなにもいいのか!」


「あんあんあんっクラークのチンポは一番よっ」


「なに俺以外のチンポ知っているのか!許さん」


クラークは激しく腰を動かす。


「知らないけどっクラークのチンポが一番大好きーーー!ああんあんだからやめないでー!」


「いや許さない!このままいかせてやる!」


シールの胸を揉みしだき、覆いかぶさるように腰をふる。


てか……。もう勝手にしてください。


どうせ元冒険者として、一流の二人だ!俺がここに居る気配ぐらいは気づいているのだろうけど、これで声を掛けたら俺の負けになる。


要は『ラークに気づかれるから止めて』プレイなんだわ!バレたらバレたで見せつけるようにするからタチが悪い。

シールもクラークと毎日しているぐらいだから淫乱だ。

まあ、夫婦生活が上手くいっていていいんですが……。


ただ不思議とこの二人は妊娠をしない。

俺には10人近くは弟か妹が出来てもいても、おかしくはない計算なんだが……。

俺はもう普通にキッチンの横を通り、冷蔵庫の中のジュースをコップに注ぐ。



「あぅぅんんっらめーラークがいるからやめてーー!ああん」


「なに?ラークがいるだと?俺には見えん!なら見えやすいようにしよう」


クラークはシールを抱きかかえ、駅弁の体位でやり続ける。


「ああん恥ずかしいっらめよっ!ラークに恥ずかしい所が見えちゃう」


いやいや見せる気満々だろ!

子供に見せつける親がどこにいる!

この世界の親はみんなこうなのかと、悩んだこともあったわ!だからいろんな人に話を聞いた。

リリスには殴られたけどな!


結論からするとクラークとシールだけが、単に俺にしているところを見せるのを好きな変態なだけだ!

俺が嫌がったり恥ずかしがると余計に喜ぶから、リアクションをできるだけしないようにしている。


いくら二人とも彫刻みたいな綺麗な身体同士でセックスしていても、自分の親だと思うとなぜか恥ずかしい。

AVを見ている気分にはならない。


……ただマッシュたちのセックスは興奮するので、たまに覗き見しているけど……!

まあ後は二人でのんびりここでしてくださいと、俺は部屋に戻ろうとした。


「うっ」


突然シールが口を抑える。


「どうしたシール!」


している途中でシールが吐き気がしたみたいだ。

そりゃあんな体勢で腰を動かされていたら、酔って吐き気もでるわ。


「ごめっううううっ」


シールがクラークを突き放して、キッチンの流しに走り出す。


「おえぇぇぇぇぇ」


シールが吐いている。


「どどどどどど、どうしようラーク!」


クラークが俺の肩を掴み揺さぶる。

おいっそんなに揺らすと俺も酔って気分が悪くなるだろう!


てか! その手でベタベタと俺を触るなよ!しかも汁の付いている勃起したチンコを俺につけるな!


「大丈夫だよ、母さんは父さんが乱暴な体勢でしていたから目をまわして気分が悪くなっただけだよ」


俺がクラークの頭をポンポンと叩き、安心させる。

てかどっちが子供だ!


「いやっいつもしているのに、こんなことになったことないもん」


俺の胸で泣いているクラーク。

まるで子供みたいだぞ!父親が自分の息子にする態度ではない。


「ハイハイ診とくから」


ぶっちゃけこの街で、一番腕のいい治療師医者はこの俺だ。

一般的にはシールが街一番の治療師なのだが、俺は生命の精霊魔法を使い、四肢欠損すら治療ができるから、知っている限り俺を超える治療師はいない。


俺は近づきシールの背中を撫でる。


「大丈夫母さん?ちょっと診るね」


「うん……大丈夫よ……ちょっと吐き気がしただけだから……おぇぇ」


大分苦しそうだな……変な病気でないのならいいけど……。

俺は生命の精霊を呼び出してシールの身体の全体を探る。


「こっこれは!」


俺は事実を知って驚愕する。

















「うん妊娠だね、妊娠一ヶ月半ちょい7週目だ、女の子だよ」


ポポはシールの身体を鑑定してそう言った。

翌日ポポを家に呼んだのだ。ポポの鑑定能力は病名や悪いところが俺よりもわかる。


……この街には、俺を超える凄腕の名医がここにいたわ。



「あらーまー女の子だって!どうしましょうあなた」


「わっわっわわっやっやっやったー!女の子だーーー!」


クラーク部屋中を飛び跳ねる。

俺が生命の魔法を使いわかった事実は、シールの体内にもう一つの生命を感じた。

つまりは妊娠だ。


なぜかシールは妊娠しづらい体質だった。


毎日あれだけクラークの精を注いでも妊娠しない。何度かはシールの体内に生命を感じたことは有ったが、すぐに消えていた。

本人も気づいてないレベルだったので、二人クラークとシールには言わなかった。



「ラークちょっと」


ポポは喜ぶ二人に聞こえないように、声をかけてきた。

俺とポポは二人を置いてこっそりと家の外に出る。

風魔法を使い、周りに音が聞こえないようにする。


「妹の事?」


俺はポポに話を切り出した。


「そうだよ……もしかしてラークは気づいている?」


ポポは流石と言わんばかりに俺を見つめる。


「まあ、ポポがわざわざ俺だけに言ってきたぐらいだから察しがつく……。神の加護がある者……つまりは転生者ということかな?」


俺は不思議に思っていた。よく妊娠しづらいシールから俺が産まれたのだと思っていた。

多分俺は転生者だから、神の力が働いて無事に生まれたのかも知れない。

だからあれだけ妊娠しづらいシールが妊娠をした。つまりは神の加護がある転生者を身ごもったということだ。


「さすが俺の旦那さん」


ポカッ


俺はジャンプして背の高いポポの頭をどつく。


「痛いよ」


ポポは頭をさする。


「変なこと言うからだ!何度も言うが成人したら形式的に結婚するだけだぞ!一緒に暮らしたりもしないし、今までと変わらないから!」


ラドゥン王との約束もあり、俺が成人したらシルフ姫とポポと俺が、結婚する事になっている。


「それはわかっているよ、まあラークになら抱かれてもいい……」


ドカッ


「それ以上の変なことを言うと蹴るぞ」


俺はポポを蹴り飛ばす。


「イテテテッもう蹴っているし」


俺には男を抱く趣味はない。ポポは男に抱かれることに抵抗はないだろうが、俺にはあるからな。


「つまりは妹は転生者というわけか?どこの国出身かわかる?」


「いやわかんないな、今のところ転生者で女ぐらいしかわからない。下手すると地球生まれではないかもしれない」


「あっ」


そうだよな、地球とは違う異世界からも新たに転生してもおかしくない。


「どんな能力持ちになるかわからないから……気をつけてね」


ポポはそういう。

前世の記憶持ちで、下手すると俺と同じ大人の可能性もある。それなら普通の赤ちゃんとは、意味が違ってくる。

例えば、殺されて恨みを持ちつつ、この世界に来た場合だったら……。それ故、得られるチート能力が、簡単に相手を殺す能力とかだったら……。


そしてチート能力持ちだとかなり危険な存在になる。

それは俺やクラーク達の命が脅かされる。それとマリガみたいに、俺の敵になる可能性だってある。


「まあ俺の妹になるわけだ、そこまで心配しないよ」


いざという時は、俺の魔法で何とかするしかない。どこまでできるかわからないけど……。

あんなにも喜んでいるクラークとシール両親を悲しませるわけにはいかない。


「そうだね、ただ生命値が上下しているから、無事生まれる可能性も低いかも」


ポポはそう言った。


「えっ?転生者なのに?」


神の加護があるのでは?


「転生者だからと言って絶対に死なない訳ではないからね、俺にはよくわからないけど鑑定には、無事に生まれる確率は10%ぐらいと」


険しそうな顔でポポが言う。


「それは良くないな」


無事に生まれる確率が一割とかは低すぎる。

シールは元々妊娠しづらい体質なら、流産しやすい可能性も考えられる。

ここは兄貴である俺が何とかしないとな……。




窓越しに喜んでいるクラークとシールの姿を見て、俺は心を決めていた。


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