第28話 転生者とは
クラークがオーガの首をはね落とした瞬間。
「風の精霊よ、我が力を使い雷の精霊を生み出し、我に敵対する物を我が意思を使い、敵を喰らい尽くせ」
マリガが呪文を唱えると、周囲がバチバチバチと光りだし電気が集まりだした。そしてクラークに向かって腕を振り下ろしたと同時に、大きな稲妻がクラークを襲う。
バリバリバリバリバリッ
ドッゴーン
周りにはオゾン臭が立ち込める。稲妻はクラークの身体を確実に電撃が貫いていた。
クラークの近くにいたオーガとサイクロプスも倒れて、クラークの姿もその中に消える。
「お父さんっ」
「くくくっさすがのクラークさんでも今のは回避できないでしょう、ラーク君はこれだけの数を一人でも戦えますか?無理でしょう、さあ降参してください。私も同郷の者を殺したくないですからね」
マリガが俺に向かってそう言った。流石の俺でもクラーク無しでこれだけの数の魔物とマリガの魔法攻撃を相手にはできない。
「……殺したくないと言うよりも俺の身体目当てかな?『ショタコンは勘弁して欲しいな!日本では犯罪だよ』」
あえて日本語で言う。
そして俺に近寄る魔物達を避けながら逃げていたら、いつの間にか洞窟の前まで下がっていった。
「身体も欲しいけど知識の方が欲しいかな?例えば…………そう、君は『火薬』を作れるかな?」
身体の方を否定しないのかよ。マジこえーよ。
「……『黒色火薬』ぐらいならね」
俺はオタクだった分、知識は一般人よりは多い。ありとあらゆる本を見まくったから火薬の作り方ぐらいは知っていた。木炭と硫黄、硝石を混合して黒色火薬は出来る。
正直、前世での人類三大発明、火薬・羅針盤・活版印刷&紙は再現できる。
「それなら『銃とか大砲』作れますか?」
「………可能かもね」
ぶっちゃけ可能で、知識と土魔法が使えば銃や大砲は製造は出来る。
この世界では鍛冶屋は存在しない。
火を高温にして金属を溶かし、ハンマーで形を整えながら冷やして、剣を研ぐという工程をする者はまずはいない。
魔法使いが土魔法で金属を集めてから、土魔法で形を整えて出来るから、土魔法が使える魔法使いが鍛冶屋代わりだ。
その大まかに出来た物を、魔法が使えない者が、整備として多少加工する物がいたりもするが、それは鍛冶屋と言う仕事ではない。
つまり魔法さえ使えれば、剣や槍や防具などの武器が作れる
そして火薬を作り、銃や大砲の作り方さえわかれば、魔法使いは土魔法で銃や大砲などの兵器を大量生産できる。
「素晴らしい。知識があり、魔法が使える。君は世界を征服できるよ。一緒にしてみませんか?世界の半分をあげますよ」
マリガが俺を見つめて笑う。てかドラ〇エのラスボスかよ!
この世界の魔法の力は圧倒的だ。
だがしかし、欠点はある。
クラークみたいに身体強化出来るものは比較的いるのだが、魔法の方程式を解ける者が少ないのだ。
だから発動時には計算が必要で、それを戦闘時に出来るものは少ない。そして魔法は
俺やマリガみたいに、高度なレベルの魔法になればなるほど難しい計算が必要になる。
だから
そして銃や大砲は発動のためのタイムラグがないので、魔法の隙をカバーをする。
軍隊を集めて戦争を起こせば、どんな相手でも勝てるだろう。
だがマリガが考えているよりも、俺にはもっとすごいことができる。
俺の考えた
つまりは俺の知識さえあれば、強力な魔法使いを増員して、その魔法使いが土魔法で剣などの武器を作り、その上銃と大砲を大量に作る事が出来る。
つまり俺が本気になって世界を征服したいと思うなら、従う者を百人程度を集めることができたのならば、それだけで簡単に世界を征服できる。
「だが断る、争いごとに首を突っ込む気はない」
この世界を平和に生きたい俺には全く関係ないこと。
世界を征服したいとか思ったことがないし。そんなめんどくさいことする意味がない。
例えば俺がこの世界ではなく、魔王のいる
だって自分の生死をかけてする事では無い。
少なくとも俺はラノベの主人公は出来ない性格だ。
「そうですか?男女ともにモテてハーレムできますよ」
思わずマッチョなマリガとクラークが、裸で抱き合っているシーンを思い浮かべてしまった。
うっ……きもい。
「さてラーク君はこの世界に来る時の願いは……なにかな?やはり魔法関係かな?」
完全にゴブリンやオークに周りを囲まれている。答えないとすぐにでも襲い掛かられそうだな。
「魔法使いになって……
モテたいとか恥ずかしい。こうなると童貞感そのまんまだ。
「前世ではモテなかったのですか?だからハーレム作りましょう。それなら私が可愛いがってあげますよ。私はこっちに来ていろいろと性技を覚えているから、テクニックもあって何人もの女や男を虜にしていますよ。前立腺でいかせて男性の快感を教えてあげますよ」
「お断りします。まだ子供なんで遠慮します。大体男はノーサンキュ」
マリガが舌なめずりしている。
もうこえーよ。いくらイケメンでも嫌、それと俺はそんなことに興味はない。
「俺らみたいな転生者はほかにいるのか?」
俺はマリガに聞く。いるのならいるで知りたい。
もしマリガ並みのチート能力がある者がいるなら脅威だ。
「結構いますよ。私は何人もあったことあります。ただし知っている限りは皆『小学生』以下の年齢からの転生者ばかりですけどね」
げっ何人もいるのか?あの神はそんなにも手違いを何度もおこしているのか?
てかみんなチート能力持っているのか?
「なんで『小学生』以下なんだ?もしかして何か秘密があるのか?」
不思議だ。
でも大人なら多少でも知識があるかもしれない。だからこの世界は、転生者によって発展していなかった。
「さすが身体は子供でも大人の頭脳を持っていますね………。まるでどこかの名探偵みたいですよ。その通りで条件があります。寿命が
げげっ俺って111歳は生きていたのか??
てかコ〇ンネタはやめーい
「『小学生』以下だから知識がないのか。みんなは魔法の計算できるの?俺らみたいに全員が魔法が使えるのか?もしかして他の能力でとか?」
この世界の魔法は計算が必要だ。小学生には習っていない難しい計算が必要になる。
「うん?なにかおかしいですね……転生者には計算式は必要ないよ?呪文の詠唱だけで魔法は発動出来る?……もしかして計算しているのですか?君だけだよまともに計算しているのは?」
今マリガがトンでないこと言ったぞ。
「へぇっ?ちょっと待て……いらない?計算が?魔法は?」
なら計算式は?えっ?
「知らなかったのか?転生時に魔法を使えることを選んだものは、計算など必要としないよ。もちろん魔法を使わない他の能力を選んだ者や、新しい呪紋を使った魔法の開発時には計算はそれなりと必要となるけど、どの転生者も基本精霊に愛されるので、計算は
すげぇーそのことは聞きたくなかった。
俺って無駄な事をしていたのか?
「…ちょっちょっといい?タンマな………光の精霊よ我のためにすべてを照らせ」
俺は全く計算せずに光魔法を唱えると、俺の頭の上に光の球が浮かび辺りを明るく垂らす。
消費する魔力は大きくなったが、呪文を唱えるだけで魔法が出来てしまった。
「は、ははは」
思わずショックで思わずその場にへたり込む。俺の苦労って……。
「ほう、普通はピンポン玉クラス大のライトの呪文を
感心したように言うマリガ。
「そっちは転生時になにを望んだんだ?」
「私はこっちの世界に来るときに『魔法が使える魔法剣士で勇者になりたい』と言って選びましたからね。まあ今はどちらかと言えば魔王の方が近いですけれどもね」
「うわぁー中二病かよ」
まあこんな世界だから、それだけのチート能力があれば勇者の夢は実現するだろうけど。
「……まあ中二病は魔法使いでモテたいと願ったラーク君とあまり変わりませんよ、これからはラーク君は私と一緒に来てもらいますよ。クラークさんも死んだことですし、この数の『魔物』を一人で相手できますが?ここで死んでも再び転生はきっとされませんよ……ではそろそろ降伏してくれますか?」
手を振り上げたマリガ。
グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
周りにいる魔物の咆哮が、辺りの空気を震わせる。
「大人しくそのまま魔法の使えない洞窟に入ってもらえますか?もちろんその剣をそこに置いてください。そうすれば絶対にラーク君を傷つけたり殺したりはしませんよ」
「その通りにして、俺の貞操の保証は?」
「それはどうでしょうかね、でも痛いことはしませんよ!そこは保証します」
マリガと後ろの男たちも口元を歪めて笑う。
俺は女顔だが男だ!と叫びたいけどマリガは男の方がよさそうだし、その後ろの男たちもその
「なら断る!」
俺は浮かべていた
辺りは強い閃光で、真っ白な空間に変わる
「「「うわっ」」」
マリガ達は眩しさで目をつぶる。
俺はもちろん光魔法防御の闇魔法で目を保護しているので、周りは普通に見える。
この隙に話している隙に、計算をし終えた魔法を次々と完成させていく。
残っていた全てのゴブリンとオークの首が飛んでいく。
風魔法で空気に真空を作りだし、気圧差で斬ったのだ。
流石にオーガやサイクロプスたちには、この風魔法は効かないので、次には土魔法で周りの土から堅い金属を作り出して、巨大な十字手裏剣を作り出す。
「ふんっ」
俺は
ヒュンヒューン
手裏剣が独特な風切り音を立てて飛んでいくと。
ザクッ グッ…
ザクッ ギャー
その手裏剣は風魔法でコントロールしているので次々サイクロプスとミノタウロスの首を狩っていく。
残るはオーガ2体のみ
グギン グガッ
オーガに当たると手裏剣が一体のオーガに刺さったままになってしまった。
「ちっ」
オーガは皮膚が固く、手裏剣がオーガの身体に深く刺ささったまま、動かなくなってしまった。
俺は残り一体のオーガに向かって走っていく。
「闇の精霊よこの光を喰らい瞳に正常な光を取り戻せ」
呪文が唱えられると真っ白な光の闇がとり払われる。
流石だな!対処が見事。
「なんだ!一瞬で?あのガキ一人で全部やったのか!」
マリガの後ろにいた男が叫ぶ。年のころなら20代後半だろうか赤色の髪をしていて釣り目だがイケメンな顔立ちだ。
俺があのわずかな間に、ほとんど魔物を倒した事に気づいたみたいだな。
俺は素早くオーガに近づくと、計算をし終えた魔法を完成させる。
ウガアヴァァァァァガァァァァ
さっきの光魔法の閃光から、まだ視力の回復をしていないオーガは、叫び声をあげて暴れている。
「消えろ」
ピンポン玉くらいの大きさの真っ黒な玉を、オーガに向かって放つ。そしてオーガの胸に当たると同時にその魔法が発動される。
ギューーーン
わずかに聞こえる高速のモーターみたいな音がして、オーガが玉に吸い込まれていく。
そして全て吸い込まれると真っ黒な玉も消える。
「なんだ今の魔法は?見たことないぞ」
もう一人の後ろにいる金髪の男が叫ぶ!ゴツイ身体をしてかなり厳つい顔をしている。
これは以前キマイラを倒した魔法の改良型で、当たれば確実な死が待っている死の魔法。
「これは知らなかったみたいだな、これは
これは命の魔法の対極の魔法だ!
「初めて聞くし、私は使えない魔法だ。やっぱりラーク君の魔法特化能力によるものですね。素晴らしい」
マリガが感心したように言う。
フフフ、これは完全に俺専用の魔法みたいだな。チート能力といっていい?ならちょっと嬉しい。
「さて、これでお前らの操っている魔物を全て倒したし、どうする?まだ俺は魔力も余裕あるぞ」
俺は死の魔法を3つほども発動させ、俺の周りに回るように浮かばせる。
敵が近づくと自動で追尾し、当たって確実な死をもたらすように設定してある。
「ふふふははははははははははははははっ素晴らしい。本当に素晴らしい。ラーク君、決めた絶対にお前を私のものにしてやろう」
マリガが馬鹿笑いをしている。
まだ俺を手に入れるとか言っているよ。
「この状況で俺に勝てると?まだ他に使える魔法はあるし、この死魔法はその地面の
魔法を
俺のオリジナルの死の魔法には絶対に合わせれられないはずだ。
「リガコノカトスハ、キストキカイシ」
「ハマキ、キスト?」
「キスト!ルス」
「チッ、キストダーガシ、クノネッナットシシシ」
マリガ達が言い合っている。なにを言っているかわからない。どこか俺の知らない国の言語だ。
「ちょっとラーク君すまないね、私は最後まで戦うつもりなんだけど、他の者が君の魔法ビビッてね逃げたいってさどうする?二人を見逃してくれるか?もちろんこいつらはマルト関係の人を虐待とかはしていないよ、昨日まで私と一緒に行動していたからね」
マリガがあきれたように言ってくる。
「……見逃すとか思うか?……と言っても殺すのは簡単だけど、拘束は難しいかもな、マルトの人に手を出してないなら……めんどくさいから見逃してもいいよ」
大体、俺にはこいつらを殺すとかが、まだできないかも知れない。
正直言って、人を殺すことには躊躇がある。
「ありがとうラーク君、だが私は最後まで戦うよ。勝ったら私についてきて」
マリガが剣を抜いて俺に構える。
俺も計算しながら剣を構える。
後ろにいた二人は二手に別れて去っていく。
俺は少し警戒を解き、自分の周りに浮かばせていた、死の魔法を消す。
さすがに長時間の維持は魔力的につらい。
「いやいやないわ、何度も言うように無理。あとモテモテを願ったけど男相手は絶対に無理!」
男相手なんてあり得ないだろう。
「どうにかしても手に入れますよ」
マリガが俺に突っ込んで斬りかかってきた。早い!
キンッ
「ほう素晴らしい、その年でその動きはすごいですね」
俺は剣で受け止める。もちろん身体強化魔法はしっかりと最高レベルにかけている。
キンッカンキンッ
「大人げないっ!子供相手にはもうちょっとは手を抜けよ」
マリガの剣を必死に受け止める。身長の差と技量の差で一気に俺は追い込まれ、下がっても追いつかれ上から振り下ろされる剣を避けるだけで精一杯になっていく。
いくらなんでも子供と大人では、根本的に無理がある!クラークたちが、俺に対して適度に手を抜いていたのがよくわかる。
でもマリガは俺を殺したくないのか、致命傷を合わせないようにして攻撃してくれているので何とか防ぐことが出来ている。攻防がしばらく繰り返される。
1分近く打ち合っていたのでさすがに疲れてきた。
……なので俺は風魔法を完成させる
ゴォォォォーーー
「ちっ」
突風が吹き、マリガが飛ばされ後ろに下がる。
俺はそのすきを逃さず、計算し終えた次の魔法を使う!地面から無数の尖った石を作り、そのまま風に乗せる。
「風の聖霊よ我に風の力を具現化して‥‥」
おせーよ!俺が最後まで言わせるわけないだろ。
計算が終わっていた魔法を発動。
マリガの周りの土が盛り上がる。
ゴッゴッゴッゴッゴゴゴゴ
ガァーガァーガァー
盛り上がった土から岩がマリガを取り囲み動けなくする。
ガコーン
マリガが剣を振ると一瞬で岩が砕かれその場から離れる。
ちっこれで勝てるほど甘くないか!
「すごい!ここまで追い込まれたのはクラークさん以来ですよ、剣のセンスもすごいですが、それよりも魔法との連携が素晴らしいです」
マリガが感心したように言う。
「それはどうも」
これでも毎朝剣の訓練はしているし、一人でも魔法の訓練はしている。
俺はこの合間にも計算をしつづける。
「なので……すべての魔法を禁止にします」
「はあっ?そんなの条件を飲めるわけないだろ」
マリガがとんでもない提案をする。それをされたら俺はただの子供だ。大人のマリガに勝てるわけがない。
「そうしましょうねラーク君」
マリガが剣を高くかかげて。
「ガール、キスト」
マリガはそう叫んだ。
とてつもない違和感と虚無感が訪れる。
やばい何かされる!
俺は計算ができていた、風魔法と火魔法を同時に発動させる。
しかし……魔法が起こらない。
「あれっ」
そして同時に、俺の身体にかかっていた身体強化の魔法が解けていく。
身体に重力を感じ、剣が本来の重さを取り戻していく。
やばい!なにかされたぞ!
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