第9話 魔法


岩の檻の中にいるキマイラ。


関節には鋭い岩を関節に突き刺させて、動けなくしている。


そして目をつぶしているので苦痛の悲鳴をあげているが、なにもできない状態になっている。



……だが、これで終わらすつもりはない。



俺は気づいていた。


こいつは人を襲うことを楽しんでいる。


人を狙う理由は自分よりも弱いってこと知って、それを弄ぶことを目的をしていた。


過去に自分を虐めていた奴らと同じ目をしていた。


キラキラとしていて、瞳の奥から楽しくて仕方がないという目。


だから……俺ははじめは動けなかった。


過去の恐怖で。


しかし今回は違う、クラークが必死に俺を守ろうとした。


それを弄んだもてあそんだ


俺だけならいい……。



絶対に……許さない。



クラークを傷つけた!




「手を出した相手が悪い」



キマイラの下から尖った岩を突き出す。


「ぐがががががあっぎぁああっっっ!」


腹に突き刺さって腹は裂け、大量の血が噴き出し、苦しむキマイラ。


「頑丈な身体だな、奥まで内臓まで刺さらないのか・・ならこれは」


身体に突き刺さった岩の先端がキマイラの体内で変形し、ハリネズミみたいになる


「ぎゃあぐわあああっっっ!!!」


あまりの激痛に、ついには岩の檻の一部を壊す。


「ここで、死んでもらったら困るから、先にしとくか」


俺はある、オリジナル魔法の方程式を完成させる。


「ぐああああぁぁぁ!」


精霊魔法は火、水、土、風、光、闇と存在するが、エネルギーとして精霊をとらえるのなら、生命はどうだろうか?


命あるものはエネルギーがあり、精霊と同じようにして使えないか?



ゲームでいうならエナジードレインHP吸収



強制的に生命力を奪う魔法だ。


もしステータス表示があるならキマイラのHPが減っていくのがわかるだろう。


まあ余談だがこの世界に来て、赤ん坊ながらも「ステータスオープン」と叫んだが、全く表示されることが無かった。シールが横で奇妙な顔をしていたが赤ん坊の戯言と思っていたのだろう。



エナジー生命力が俺の体内に入るわけではない。


魔法を使える奴なら感じると思うが、目の前の空間に巨大なエナジー生命力が浮かんでいる状態になっている。


俺はクラークの胸に手を当てて、エネルギーを入れていく。


……あっちょっとエナジーカロリー入れ過ぎたかも?


……クラークが太っちゃうかもな?


太ったクラーク親馬鹿に抱きつかれるのを想像して暑苦しいと思ってしまった。




「……さて、お前にはもう用がない、そろそろ死んでみるか!」


エナジー生命力を吸い取られ干乾びたようになっているキマイラ。

俺に手を出したことを後悔しているだろ。恐怖でガタガタと震え、怯えている。



でも、許さない。



俺は近くの木を風の魔法で乾かし、そのまま風で木同士をぶつけ合わせる。


そしてこすり合わせることで、摩擦熱で瞬時に木が燃えだす。



「燃えろ」



火のついた木からそのまま炎が移動して・・・・・・・・・・キマイラを囲っている岩ごと炎が包み込み、そしてすべてを燃やして溶かしていく。



もうキマイラの断末魔すら聞こえない。




……だが俺はそれでは終わらせない。



「転生すら許さん」


俺は、もう一つのオリジナルの魔法の方程式を完成させる。


生命の魔法があれば、対極する死の魔法もあった。


これは魂を砕く魔法だ。これにかかったものはすべてを無に帰す。


生きている者に使えば、再生不可能な死回復しない傷を、死んでいる者に使えば完全なる虚無を与える。


そしてすべての魔法すら消し去る魔法だ。


真っ黒な巨大な球が現れる。


それがゆっくりと動くとキマイラの方に近づく。

するとキマイラのいた所は空間は炎さえも消え去り、全て無くなった。


まるで空間を丸ごと削り取られたかのように、何もない空間になった。




そして、この場から何かが完全に消えるのを感じた。






俺は強烈な睡魔に襲われる。


当たり前だ、7歳児が使ってはいけないレベルの魔法を連発したからだ。

魔力が完全に枯渇したに違いない。


おかげでどす黒い感情が消え去った。


しかし、だめだ、こんな魔物が出るかもしれない森……寝たら……せめてクラークを起こしてから……なんとかクラークを……。





















「……ラーク起きろ!」





「チュッ」





「ラーク起きろ、大丈夫か!」




「チュッ」



まてよ……さっきから口に違和感を感じるぞ。



「チュッ」

「口にキスしてんじゃねー!!」


俺はクラークにアッパーをかます。



「いたた、ラーク起きたか、良かった無事で」


全く何事もなかったかのように対応するクラーク親馬鹿、無事じゃあねーよ。


「大丈夫、父さん、どのくらい寝ていた。」


すっかり辺りは夕焼けで真っ赤になっている。


一刻ぐらいかな約2時間、というか、魔物キマイラはどうなったんだ?」


おい、もしかして二時間もキスされていたのか……お嫁にいけない、じゃないお婿にいけない……いやいやクラークが喜ぶだけだ。俺は女の子抱くぞ。


「さあ、途中で気を失ったから、よくわかんないよ」


俺はとりあえずごまかした。


俺が魔法でキマイラ殺したことは内緒にしておこう。証拠のキマイラは完全に消滅しているしな。


「お父さんの傷もなくなっているし、どうなったんだろうな」


悩んでいるクラーク、悪いがそのまま悩んでくれ。


言うつもりはない。クラーク父親が倒せなかったキマイラをが倒したとか、言うわけないだろう。


でも気を失っている間に、他の魔物に襲われなくてよかった。


多分、森に魔物がいなくなっていたのは、キマイラのせいだろうけど、おかげで助かった。






俺達はなんとか日が沈んだぐらいに村に帰ることができた。





そして、血まみれのクラークはシールにこっぴどく叱られていた。



























「……いくっ!」


「あっんん……私もう……駄目」


「まだ、まだ足りない」


「今日はすごいわね…あなた、これで6回目よ、私は何度いったことやら…」


「なぜか、全然疲れない……今晩はまだまだやり足りない。なあいいだろう」


「あっ、駄目もう……これ以上いくと壊れちゃう……」






ア~~~~~~ッ


眠れない。クラーク性欲馬鹿エナジー精力与え過ぎた。


もういい加減にしてくれ。




本当に……子供部屋を希望します。

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