1話僕と彼女の物語

心電図アラーム音とナースコールと




人工呼吸器のアラームが頻繁になり続ける。



ナースステーションの隣の 200号室。




通称リカバリールーム。



ここが彼女がなくなった部屋であった。





急性期病棟。



そこは生と死のはざまでもがき苦しんでる人たちを対象に僕が働いている。





そう。ここは彼女の最後の場所であると同時に僕の職場でもある。



看護師。



それが僕の仕事である。



尊い仕事なのかもしれない。



だけど僕は時々この仕事が嫌になるときがある。



もちろん仕事はとてもハードで忙しい。




ただそんなことでいやになるというわけではない。



問題は死が身近にあり過ぎてしまうということなのだ。




当たり前のように人は生き、当たり前のように人は死んでいく。



当たり前っていったい何なんだろうか。




自分の中でいろいろなものがマヒしていく。


そんな感じがしていた。




そんなこと思いつつ、今日も僕は働く。




彼女との記憶を置き去りにして。




僕は当たり前のようにまた死と向き合って生きていくのだ。




いろんな後悔を残しながら。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る