《◎200話記念SS◎ ~気になるあの人! コーテナ&ルノアの突撃インタビュー⑥~ 》
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そして、”例の企画でここにやってきた”と告げると、何の抵抗もなしに騎士たちは王城へと通してくれたのである。
そもそもの話、この二人は誰に頼まれてこのような企画をやっているのか。そして、王城の人間達もその企画には素直に従うとまで来て謎が深まるばかり。ラチェットは二人の後を追い続ける。
「おや、これはラチェット君にコーテナさん、そちらの方は……ルノアさん、でしたっけ?」
黒い長髪。最初に見た人は男か女で間違えるかもしれないが、こちらの騎士様は立派な男性。フリジオだ。
「インタビューでやってきました!」
「あぁ、そういえば、そろそろそんな時間でしたね。いいですよ、お答えします」
精霊騎士が素直に従うなんて、一体この企画は何なのか。
実は裏でとんでもない何かが起きようとしているのかと不安にもなってくる。自然とラチェットは辺りを見回し始めていた。妙な視線を感じる気がして。
『僕の名前は、フリジオ・バロットウェノム。魔族退治の名家、バロットウェノム家の出身。精霊騎士団の風の騎士として、この身を捧げています』
バロットウェノム家は”数多くの魔族を退治した騎士の一族”として有名であり、その中でも目覚ましい記録として残っているのが、”怪物ヴラッド”を退治してみせたという逸話。その記録はフリジオらしく本物であり、一族代々に伝わっている。
『年齢は20。趣味は乗馬を嗜んでいます。特技はそれといってありませんが、大抵の事は熟せることくらいですかね……将来としては、一族の名に恥じぬバロットウェノムの騎士となる事。それ以外には特に考えていません』
魔族狩りの一族として、その名を遺す騎士となる。そのために名声と功績を手に入れる。
その夢をかなえるために彼が目を付けたのは、ラチェット達と共にいる”アタリス”だ。彼女はヴラッドの娘、この娘を退治したとなれば、ヴラッドの血を経ち切った英雄として名を知らしめることになる。
英雄になる。随分と大層な夢を持った男なのだ。この人物は。その夢のために手段を選ばないあたりは狂気とも思えるが。
「僕から以上ですね。もう少ししたら、あの二人がやってくるかと……」
「フリジオさん、お勤めどうも」
「報告に来た」
フリジオの元へやってきたのは、プラタナスとディジーの二人。
二人とも”王都のガーディアン”として有名な精霊騎士だ。誰もが泣いて逃げる巨体を持つディジー、この広い庭の中で逃げ切る者を一人として現わさない弓の名手プラタナス。精霊騎士として歴は浅いというが、その実力は本物である。
「おや、どうしてこんなところに」
「インタビューです!」
「い、インタビュー!?」
プラタナスが慌てふためいた。
「まままままま、待つっす! 確かに私は精霊騎士団ではありますけれど、皆さんのような凄い一面とかなんて早々ありません! ですので、考え直すことを、」
「そんなことありません! プラタナスさんのおかげで、王都の平和はいつも守られているんですよ! 凄くないわけないじゃないですか!」
「い、いや、その……照れるっすよ……」
ルノアのフォローは気を遣う言葉でも何でもない。実際真実だ。
王都で事件が起きれば、真っ先に動くのはプラタナスとディジーの二人だ。現にプラタナスは無法者を一人として逃がしたことはない。その功績は常に、王都の住民の耳に届くくらいだ。
「じゃ、じゃあ、少しだけ……」
「では、張り切ってどうぞ!」
コーテナのマイクが向けられる。
『プ、プラタナス・クウェールと申します! その、精霊騎士団の中では、まだ歴が一番浅い半端者ではございます……ですが、水の精霊騎士として、王都にかかる魔の手の全てを撃ちぬく所存でございます!』
敬礼をしながらも、そのインタビューに彼女は真面目に応えていく。緊張しているせいか、眼鏡は盛大にズレているが調整はしない。
『年齢は20っす。その、休日とかそういう日はありませんが、暇がある時間はディジー先輩と一緒に見回りをしているっす。視力には自信があります! 今までの水の精霊騎士様達の顔に泥を塗らないよう、全力を尽くします!』
テンパリながらも謙虚な一面は覗かせる。精霊騎士として、そこまでの歴がない故にまだ残ってしまっている仕草とクセ。とてもじゃないが、この国の一端を担う騎士の一人とは思えないと言いたくなってしまいそうだった。
『ディジー・カロウ。25歳。よく聞かれるけど、身長は225……土の精霊騎士』
慌てっぷりが目立ったプラタナスと違って、ディジーはとても冷静で落ち着いた自己紹介である。最も、彼はプラタナス以上に謙虚で大人しいのが原因かもしれない。
『自分も暇があるときは見回りをしている。プラタナスとは騎士学校時代から関係があって、精霊騎士になるまで続いてる……皆によく言われるのは怒りっぽくて、テンションの凹凸も激しいって……気を付けてはいるんだけど』
その言い分はもっともである。彼は途端に怒り出したかと思うと、途端にテンションを上げることもある。最初は対応に困ったものだとラチェットは頷いている。
なんだかんだ言いつつも、緊張感はそれほどない、くだけたインタビューは続いている。気兼ねなく答えてくれるフリジオ達、これにはコーテナやルノア達も落ち着いてインタビューをすることが出来た。
「ん……?」
そんな中、ラチェットは視線を感じた。
……雷の騎士。クレマーティだ。
彼は一瞬、こちらに目を向けたかと思うと、何も言わずにその場を立ち去った。
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