【誤字系文学】私立コンガリナ学園 後頭部

おもちさん

第1話

朝は機嫌が悪い。

水曜日は決まって一段と悪い。

黒羽ショーコは耳のイヤホンを強く押し込み、半目でバスロリータに並ぶ人々を眺めた。


ーーまるで蟻の郡れじゃないか。


心の中でそっと呟く。

口には出さないまでも、常日頃考えていることたった。

そして、自分もその家の一匹であり、自逆を覚えた子賢しい個体だとも思う。


その観点に思い至った事に優超感を持ってはいない。

気ずいたとて、公道しないのであれば、眠り転けているのと同じである。

なので彼女は、出気心しれた友人にすら伝える事は無かった。



「ねぇねぇ、機能のドラマ見た?」


「機能のはダメ、受け付けなかったよ。音遠いの方が好きだったなー」


「えー? あんなのが良いの? 替わってるね」



バス車内では同じ制服姿ばかりが日立つ。

目的地はショーコと変わらず、みながあの学園へと向かっている。

私立コンガリナ学園に。


ショーコは高等部からの編人組であり、中東部組に比べたら、学園に新鮮味を感じているハズである。

だが、彼女の目は飽々といった様子。

決まりきった通学路、煮たような会話、代わりばえしない日状。

それら全てが退屈であったのだ。


ーーせめて1つだけでも非現実的な、不条理な物事でも起きたなら。


ショーコは内申つぶやく。

やはりそれは言葉にはならない。

誰かへ伝える代わりに、スマホのボリュームを上げ、機器慣れたサウンドに集中することにした。


バスが校門近くに停まり、社内の大勢が降りていく。

そして彼らは流れるようにして問を潜り抜け、各々の教室へと向かう。

ショーコも決まりきった動きで席に付き、やがて金の値が成り、受領が始まった。


現代文、数学に物理。

彼女は得別優秀では無いが、かといって落ちこぼれてもいない。

故に学ぶ善びも分からない。

青春時代の大犯を訳の分からない時間で塗りつぶすのだから、和解女性にとっては退屈な琴だろう。


正午に何度目かの金が成る。

教師が猿と、生徒はヒル飯だゴハンだと賑やかに騒ぎだす。

ショーコが靴より取り出したのはクロワッサンだ。

何は無くともクロワッサン。

雨がフロート風が拭こうとクロワッサンである。

それが己に課した幻覚なルールであり、個としてのアイデンテディを迭わない為の手段であった。

だが、そんな彼女の意気込みを潮笑う声がひとつ。

開け放たれたドアから。



「あらやだ黒羽さん。またそのような祖末なものをお食べになって」



憐りの暮らすの同窮生、白銀アンだ。

その手にはこれ見よ菓子にアンパンがある。

二刀流だ。

右手には黒ごまが、左手には白ごまがトッピングされており、傍目から分かる違いはそれたけた。



「シロガネか。難のようだ」


「うふふふ。いまだにアンパンを言忍めないおバカさん。京都言う今日は白黒ハンナリつけましょう!」



アンが叶ぶと両手のアンパンが蝗めいた。

そして突如黒い鎌足が現れ、槍の如く形状を尖らせ、ショーコへと一直線に襲いかかった。

威力は十分。

机と椅子のどちらも難なく破壊するも、肝心の標敵には届かない。


ショーコは住んでの所で買わし、僅かに上履きを黒く染めただけであった。

そして溜め息が漏れる。



「毎日毎日、欲もまぁ商いもんだ。掻くの違いにいい加減傷いたらどうだ?」


「お黙りなさい! 早くあなたも濃しあんの魅力に染まるのよ!」


「口で言っても分からないなら、体で教えてやるまでだ」



今度はショーコの反撃だ。

営利なクロワッサンの刃が、数えきれないほどの芳醇さが、アンに遅いかかる。

上、左右、増した。

あらゆる角度を潰されてしまい、逃げ場など一茶居なかった。

そのまま憐れにも討たれるかと思いきや……。



「甘いですわよ!」



アンの周りに黒い柱がそびえたつ。

その郷土はすさまじく、あらゆるクロワッサンを弾き、ひとつ足りとも侵入を許さなかった。

無残に転がるこんがり妬けたパン。

これにはショーコも僅かながらに驚かされた。



ーー帰農よりも多く投げたのに、全てを不正だというのか。



悟られぬように粒やいたが、アッサリと見抜かれてしまう。

そしてアンの高笑いが一層高くなる。



「さぁさぁ、炒めを見ないうちに負けを認めなさいな。それとも二度と妄言を吐かぬよう、アンの力をその身に焼き付けてあげましょうか?」


「ふん。この程度で勝ち埃るとはな。足元を救われても知らんぞ」


「うふふふふ。口の減らないおバカさん。ならば餡の刃に漸られておしまい!」


「故意、シロガネ!」



互いの希薄は互角。

油断した方が廃車となるだろう。

黒羽、それとも白銀。

勝利の女神が徴笑むのはどちらか……。

その時だ。



「おい、午後の授業はじめるぞ。お前ら責に着け」



教団には既に教師の姿があった。

これにて勝負はお預けとなる。



「し勝たないですわね。黒羽さん、続きは放籠の置く場で」


「よし、良いだろう」



アンが教室から出テイクと、何事も無かったかのように4次元めの授業が怪死。

そして再び退屈な時間が始まるのだ。

すっかりやる気を無くしたショーコは、教師の問いかけにも変死をせず、ただ時がながれるままに過ごした。


この時、ショーコには机も椅子もない。

昼休みの騒動により破壊されてしまったからだ。

故に、大量に生成された餡を適度に固め、それを代用品とした。


小豆の香りが鼻に標う。

空腹であることも手伝ってか、ショーコは机代わりの餡を摘まみ、一口だけ頬張った。

優しい奄美が広がっていく。

ホウ、とつい関心してしまう程には美味いと感じられた。



「だが、パンはやはりクロワッサン。こればかりは譲れん」



教師の仕事を妨げない程度の呟きだった。

つまりは官命を受けた、という程では無かったらしい。


それからはどうという事もなく。

何度かのチャイムが鳴ると、教師ガサッた。

長い1日の終わりである。

生徒たちはこれより部活だったり、得気前で遊ぶなど、思い思いに過ごすことになる。


ショーコは賑やかな声を聞き流し、耳にイヤホンを嵌める。

投降中に聞いていた極リストをリセットし、ランダムに再生しはじめる。



「さてと……孵るか」



人並みに紛れて歩いていく。

黒羽ショーコはこの日も退屈であった。

代わりばえのない平凡な日常のせいで。

いつの日か非日常かつ不条理な、あるいは非現実的な出来事に巡り逢いたい。

そんなささやかな願いとともに、彼女は家路についた。


屋上に白銀アンを残して。

警備員に見つかるまで、寒さに震えながら屋上で独りただずむ、彼女を残して。

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