ゲーム
gaiki
第1話 不可解な校舎(トオル視点)
起きたらそこにいた、なんて経験したのは初めてだろう。自分がなぜそこにいるのか、どのような経緯でここに寝ていたのか、全く思い出せない。ただ憶えているのは、目の前で同じように起き上がったクラスメイト達のことと、自分の名前だけだ。
俺が起きてから、全員が起きるまでにそれほど時間はかからなかった。全員が、ここはどこなのか、なぜここにいるのかというような顔をしていた。無理もない。こんな状況、ふつうに軽いパニックを起こす。クラスメイトは全部で9人。男子5人女子4人の少人数クラス。俺がトオルでケント、リョウタ、カイト、レンに、サクラ、カナ、エミ、ナノ。
俺らがいた部屋は、作り的に教室のように見える。窓を見ればグラウンドがあり、反対側には廊下がある。間違いなく学校だろう。けれどおかしなことがひとつある。
サクラ「ここほんとにどこなの?」
そう、ここは俺らが通っている学校じゃない。木造建築で2階建、どこかの小さな小学校のような校舎だ。
ケント「誰が知るかよ。知ってたらそいつが俺らを連
れてきた張本人だろうが。」
カイト「今そんなにケンカ腰になってもしょうがない だろ。」
カナ「とりあえず、ここから出ない……?」
俺たちは教室にある校内地図を見て、外に出ることにした。が、ここで外に出られたら俺たちをここに連れてきた意味が分からない。考えてみればわかることだが、この時の俺たちにそんな冷静さはない。
ケント「クソ!どこも閉まってんじゃねーか!!」
レン「落ち着けよ。まだ窓から出れるかもしれない。」
ナノ「私、ちょっと確認してくる。」
リョウタ「僕も。」
そのとき、なぜ誰も気付いていなかったのだろう。
エミ「ねぇ……。」
外に出ることに必死だったのか。俺たちはずっと一緒に行動していたのに。
エミ「あれ……。」
エミが指をさしている方向をいっせいに見ると、そこには吊られているサクラがいた。
時計塔にひとりいる彼女は、俺たちと一緒にいた彼女のように笑うことも、この状況に怯えることもなかった……。
カイト・レン「サクラ……!」
カイトとレンが同時にサクラのもとへ走り出した。それに続いて俺とケント、リョウタが走り出す。
ナノ「サクラは!?」
後からきたナノがカイトとレンにそう問いかけたが、どちらも何も答えられない様子だった。
「とりあえず、下ろしてあげよう……。」
俺は精一杯言葉を振り絞ってそう言った。
遠くで、エミとカナが2人で泣いている。
ケント「どーゆーことだよ!いつ!誰が!俺ら全員殺そうってか?!ふざけんなよ!」
カイト「もう黙れよ!今自分の心配をしてる場合じゃ
ないだろ!」
レン「おい、ケンカはよせよ。」
2人のケンカなんて正直どうでもいい。俺はまだ状況が飲み込めていなかった。何より、8人もいて誰も気付かず人1人を吊るすことなんてできるのか?怖い……。俺らと同じ場所に殺人者がいるということか……?
エミ「何で……?」
全員がエミに注目した。それは、サクラが死んだことに対する疑問のようには思えなかったからだ。
エミ「時計が止まってるの……?」
俺らはサクラが吊るされていた小さな時計塔の時計を見た。それは確かに、午前2時で止まっていた。
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