第11回:オーソドックスにエモーショナルな征服で行くのか、それともメランコリックにオルタナティヴな征服に寄せて行くのか
□アレンジの段階で、それぞれの好みやこだわりがぶつかり合っちゃう事はあります□
花:六村目。『ミキトキ村』。
魔:はい。ミキトキ村はゴマタゴマ山の麓にあって、五村目と割りかし距離が近いんですよ。お酒の名産地で、ミキトキ村で造られた地酒が、ゴマタゴマの温泉街で良く売られています。
花:持ちつ持たれつって感じですね。
魔:はい。だけど実際の征服には、五村目と六村目で期間が空いちゃって。三カ月くらいブランクがありました。
花:ここらで一息休憩、戦いの疲れを癒やした感じでしょうか。
魔:いえ、征服自体の構想のストックは常にあるんです。だけど世界全体を通しで見た時に、このまま六村目もオーソドックスにエモーショナルな征服で行くのか、それともメランコリックにオルタナティヴな征服に寄せて行くのか。正直メンバーとも意見が割れてしまって。
花:今回の世界征服メンバーですね。一体どんな意見が交わされていたんでしょう?
魔:そうですね。
花:征服軍の中で意見が割れると言うのは、しょっちゅうある事なんですか?
魔:普段はほとんどないです。ただアレンジの段階で、それぞれの好みやこだわりがぶつかり合っちゃう事はあります。アプローチの違いでね、もっとポピュラーに攻めよう、いやプログレッシヴだ! なんて(笑)。そこはもう、お互いその道のプロですから。せめぎ合いですね。
花:なるほど。魔王さまも部下で苦労されてるんですね。
魔:部下の全員が全員、同じ気持ちで同じ方向を見るなんて私は『有り得ない』と思ってますから。だってお互い、個性を持った生き物同士ですからね。最終的に戦略に従って動いてくれるのなら、いやいやでも構わないと思ってますよ。参謀がニューウェイヴ征服派だろうが、支援部隊がサイケデリック征服派だろうがね(笑)。
ーーどんな趣味嗜好であれ、最終的には自分に従ってもらう。そう言い切る魔王の口調には、自らの征服への確固たる自信が感じ取れた。取材班は彼の語るカタカナ語の意味がほとんど分からなかったが、適当に「うんうん」と頷いていたらなんだか満足げな表情だったので、何とか会話は成り立ったのであろう。
いずれにせよ六村目のミキトキ村の征服は、一言で表すなら『オーソドックスでエモーショナルな、それでいてメランコリックかつオルタナティヴで、クラシカルとテクニカルを融合させ、パワフルでスピード感に溢れ、ポピュラーでありながらプログレッシヴで、ニューウェイヴとサイケデリックを見事に調和させた一村』に仕上がっているので、まだミキトキ村に観光に来たことがない読者の方はぜひ楽しみにしてもらいたい。
□普通に着替えて、コーヒー牛乳とか飲んで□
花:プログレッシヴ魔王。
魔:誰がプログレッシヴ魔王ですか。呼ぶ時は普通の魔王で良いです。
花:普通の魔王も、普段からよく温泉とか入りに行かれるんですか?
魔:そうですね。普通にライブの合間とか、時間を見つけてこっそりつかりに行ってましたね。
花:いやらしい……!
魔:なんで??
花:合間に、こっそり温泉だなんて……いやらしいことを考えてたに違いないわ!
魔:何言ってるんですか。私は本当に、ただ温泉に入りに行ってただけで……。
花:温泉って、そう言う意味だったのね!? ヤダ!! ケダモノ!! 魔王!!!
魔:魔王ですけど……アナタ温泉をどう言う意味で捉えたんですか……。
花:いやらしい意味で『温泉』に入って……その後は?
魔:いやらしい意味の温泉ってなんですか。普通に温泉に入りました。その後は、普通に着替えて、コーヒー牛乳とか飲んで……。
花:牛乳? それって、いやらしい意味の牛乳?
魔:そんな意味の牛乳ないですよ。無理やりいやらしい方向に持って行こうとするのやめてください。また読者に誤解されちゃうじゃないですか!
花:ある意味『コーヒー牛乳』を飲んで……その後は?
魔:他に意味なんてないです。普通の意味でコーヒー牛乳を飲みました。その後は、普通に部屋に戻って、普通に料理を楽しみましたよ。
花:普通に料理……つまり魔王にとっての”普通”と言うのは、もはや”いやらしくて当たり前”、”いやらしいのが普通”だと言うことですね?
魔:違います。普通は普通です。そうやって何でもかんでもいやらしい事と絡めてしまう花園さんの考え方こそ、真にいやらしいんじゃないでしょうか?
ーーインタビューの結果、魔王は普段からいやらしい事ばかり考えている事がわかった。この後もいやらしい意味で「ドライヤー」だとかいやらしい意味で「枕」だとか、NGワードを連発する魔王。普段は厳かな雰囲気でインタビューを受けつつも、頭の中は「コーヒー牛乳」やら「ドライヤー」やらの単語でいっぱいだったと言うわけである。いやらしい……!!
□疲労困憊や腰痛、MP回復などさまざまな効果□
花:はああ、生き返る……!
魔:ゴマタゴマの温泉はファンタジアでも随一です。山の奥地にある天然の露天風呂は『ドラゴンのお風呂』とも呼ばれていて、疲労困憊や腰痛、MP回復などさまざまな効果があるんですよ。
花:え? 今なんて言いました?
魔:疲労困憊や腰痛、MP回復などさまざまな……。
花:いやらしい……!
魔:……はい?
花:疲労困憊や腰痛だなんて……一体どうして、そんな症状になったのかしら? いやらしいわ……!
魔:またか……。
花:ちょっと!?
魔:!?
花:ドコ触ってんですか!? 魔王さまのヘンタイ!!
魔:は!?
花:プログレッシヴヘンタイ!!
魔:何ですかその新手の変態!? 私触ってないじゃないですか! 大体男湯と女湯で仕切られてんのに、触れるわけないでしょう!? 誤解を招くような発言はやめてください!
花:助けてえ!! 魔王さまが疲労困憊し腰痛になるまで、いやらしい事を……!
魔:誰か! 誰かあの子を助けてあげてください!!
ーーインタビューの結果、魔王は普段からいやらしい事ばかり考えているプログレッシヴ(時代に囚われない)ヘンタイであることが分かった。この後もいやらしい意味で「マッサージ」だとかいやらしい意味で「バスタオル」だとか、止まる事を知らない魔王。今回のインタビューは果たして無事皆さんの手にお届けできるのだろうか? 心配である。
(文:高宮第三高等学校新聞部・二年三組 花園優佳)
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