第4話 前に進むために

「いやー健太の知り合いのツテがないってわかった時は詰んだと思った。やっぱ持つべきものは信頼できる先生だなっ!」

「どの口が言うかっ!それはそうと、でも今回の元凶でしょ?これで本当にいいの、先輩?」

「だからだろ。向き合う時が来たんだよ。男にはけじめ、つけないといけない時があるんだよ。…負けるなよ」


六年ぶりだった。最後に遊びに来たのは小学六年の時。あの日以来怖くて前を通ることすらできなかった。時間をかけドアの前に立つ。深呼吸。よしっ。二回目のチャイムで本人が出た。今日来た旨を告げ、話す時間をもらう。彼に言われるまま、一階のリビングで待っていた。Rの家はあの時からあまり変化してないように見えた。少ししてTシャツに短パンというラフな格好で2階からRが降りて来た。寝起きだったらしく、見るからに眠そうだ。

「…久しぶり」

「ああ」

「話が、あるんだけど…」

絞り出すように声を出す。

「何?」

「俺、お前のこと嫌い。無視されたことについては自分にも非があると思う。そうじゃなくて。お前の行為、目に余るものがあった」

「健太、俺もお前の付き合いの悪さにイライラしてたよ。何で断るんだよって。でも今にして思えば俺とお前じゃ根本から違ってた。正反対だろ、俺ら。俺たちはこじらせすぎた。もう終わりにしよ」

何だ、俺だけじゃなかったのか。Rも悩んでたんだな。

「そうだな。もう会うこともない。俺のことは忘れろ」

「ああ。…じゃあな、

「!!?…、じゃあな、


「ねぇ先輩、行かなくていいの?赤坂、泣いてたよ?」

「今はそっとしておこう。…頑張ったんだな」

久しぶりに泣いた。涙はしょっぱかった。いつの間にかは聴こえなくなっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る