第114話 ピエールの話9

月の第3エリアとクリルタイ国に乗せられて、

戦争へ走ってしまった、というのはあながち

嘘でもない。実際にそのように見えている。

 

しかし、第3エリアとクリルタイ国のリアン・

フューミナリの狙いは、どうせ戦争を起こすなら、

早めに起こさせて早めに潰そう、といったものだ。

 

ナミカ・キムラは考える。背後には、バレンシア

共和国に充分に準備させて、そして戦争を長期化

させようと企む勢力がいると。

 

そして、その勢力が誰か、どこか、を明らかにする

には、金の流れを調べればよい。しかし、そこで、

財務システムの在り方が問題になってくる。

 

収賄とマネーロンダリングの問題だ。

 

どこかから資金を受け取り、その見返りに、政治的

工作を行う。不正に得た資金を洗浄し、収賄に

用いる、あるいは自分で使用する。

 

逆に、そういったことが困難な例を挙げてみよう。

第3エリアのある国では、通貨が全て電子化され、

お金のやりとりが、すべて相対処理される。

店に買いに行けば、店の貸借対照表と損益計算書が

その場で更新され、同様に個人の貸借対照表と

損益計算書のデータベースも更新される。

 

そして、そういった国の中には、社会主義の国も

ある。つまり、所得の上限があるのだ。そういった

ところでは、ひとつの口座や一人あたりの口座の

合計などでもチェックするため、個人でどこか

から不正な大金を受け取ることはまず不可能となる。

 

ちなみに、厳密なシステムなため一見面倒に

見えるが、店舗に行った際に決済カードを

忘れても、指紋認証や網膜認証で本人確認して

残高確認や買い物ができる。

 

個人間の少額キャッシュのやりとりも、携帯端末

上で可能だ。やってみれば意外と不便を

感じない。

 

そういった仕組みを採用している側の人間から

すると、政治家がマネーロンダリングしたいから

厳密なシステムを入れないだけだろう、という

ような言い方になる。

 

ただ、時代や経済の状況によって、そういう

厳密さから解放が必要な時期があることも

否定できない、と研究者などは言う。

 

話を戻すと、バレンシア共和国含め、財務

システムが厳密でない主要国がいくつか

あるというわけだ。

 

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