第95話 ディエゴの話

アラハントのメンバーが太陽系外縁ツアーから

帰ってきて数か月が経ったころである。

剛腕プロデューサー、ゴシ・ゴッシーに、

新たな話が入ってきた。

 

国務長官、ケイト・レイから直々にだ。

 

マッハパンチ、ボッビボッビ、そしてアラハント

の3バンドでバレンシア共和国でのライブに

参加してもらいたい、という。

 

それも、バレンシア共和国で今最も売れている

かもしれないバンド、ネハンのゲストとしてだ。

ネハンのプロデューサーにはすでに話が

通っているという。

 

ただし、と言う。

今回は、ゴシ本人とヘンリクは参加できない。

というのも、わけ合って危険をともなう

ツアーになるかもしれないからだ。

 

バレンシア共和国では、極右勢力が台頭し

はじめてきている。ネハンはデビュー当初から

業界でも一匹狼な態度で、政権にも批判的だった。

そういったイベントで、極右勢力の標的となる

おそれがある。

 

「優秀なプロデューサーが失われれば、そのあとに

ダイヤモンドの原石となるバンドが出てこなくなる」

 

ちなみに、ボッビボッビには直接掛け合って、

だいぶ前からハントジムで護身術を習ってもらって

いるらしい。残りの2バンドは皆武術の心得が

あるので問題ないとか。

 

今回のツアーには、私も民間人として参加し、ライブ

開催の裏で、バレンシア共和国の政府高官と、非公式

会合を行う、とケイト・レイは最後に付け加えた。

 

すぐに承知して、3バンドのメンバーに連絡する。

早速その日の夜、対策会議を行う。私が一声

掛ければ、すぐみんな集まる、ゴシは気合を入れた。

 

そして夜、たまたまゲルググで3バンドのライブ

があったので、打ち上げでその話になる。

まず、ネハンの話になった。

 

太陽系外縁では、思ったより音楽が盛んだった。

内縁は、おそらく活動の規模では我々がいる第3

エリアが最も活発だ。いいメジャーバンドも

たくさんいる。

 

しかし、総合的な実力という意味では、第2エリア、

バレンシア共和国のネハンが一番だろう、ということ

で3バンドのメンバー皆一致した。

 

音楽シーンという意味では、第2エリアは見る人

によってあまり面白くない。ありきたりなのだ。

それほどでもないアーティストが、メディアの

売り込みによって、売上を上げてしまう。

 

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