第74話 ゴシの話15

アンドロメダは長い曲なので、同じパートが

繰り返される。


2回目のパートは、女性ボーカルで始まった。

しかしこの声、マルーシャのものでも、ウインの

ものでもない。テルオの声に似た透明感と、

どこか脆さとはかなさを感じさせる声質。


アミの声だ。


アミがノーマルの発声でステージ上で歌うのは

公式のライブとしては初かもしれない。

メロディが落ち、ビードが落ち、アミの声だけ

が会場に響く。静まり返っている。


 輪廻の繰り返しだけがわたしを作り

 輪廻から飛び出してわたしは振り返らない

 それは輪廻のパラドックス

 それは輪廻のパラドックス


そこから打楽器が入り、和声が入り、ラップが

入り、歓声が入り、高まっていく。


アラハントの演奏が終わった。


メンバーが控室に戻ってくる。

ゴシが顔をぬぐって出迎える。


「いやー、最初はどうなるかと思ったけど」


「あれ?ゴシさん泣いてんの?」

アミが鋭く指摘する。


「いや、ちょっと目にゴミが入っただけだ」

ゴシ・ゴッシーが太古から使われ続ける言い訳を

口にする。


「こんなんで泣いてたらこれからさきうちらの

 ライブ来れなくなるよ」


夜になって、サクハリンの二人も加わって軽く

打ち上げだ。ホテルから歩いていける、クラブホビー

というカニ料理専門のレストランの個室で行う。


軽く打ち上げるのも、サクハリンのジェフ・タナカが

明日早朝から連れて行ってくれるところがあると

いうからだ。


「けっこう楽しいところがあるんですわ、

 近いですし」

「うちもめっちゃ好きやねん」

リョーコ・ミルズもそう話す。


が、どこに行くかは行ってから、ということのようだ。


そして早速翌朝、目的地まではゴシ・ゴッシーが

運転することになった。


「まあ実際目的地まではほとんど自動運転なんですよね、

 目的地トークンさえ取れれば」

「インターフェース違うだけで基本どこも一緒だと」


ジェフのアドバイスを受けながら出発だ。


そして到着したのが、空港近くの巨大なエンターテイメント

パークだった。一気にアラハント女子3名のテンションが

上がる。


「あ、じゃあうち4名まで使えるグループ優先パス

 あるんで」


ほなあとで、と言って4人が先に行ってしまった。

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