第23話 ナミカの話3

一日9時間の芝居の稽古が、そのまま

格闘技のトレーニングに置き換わった。


トレーニングは妹たちが所属するジムを

メインに、様々な場所へ出稽古した。

地球にも行った。


そして、仕上がり具合を第三エリアに住む

師であるリー氏に確認してもらう。

170センチ80キロという、格闘界では

比較的小柄な体格ながら、圧倒的な強さを

身に付けようとしていた。


各種オープンの大会に出て、しかし実力

すべては見せない。出げいこでは、

対戦相手になりそうな者をみつけて、

技をくらう。


30歳になり、

地下格闘技の宇宙大会に出るのだ。


この大会は一般には公開されない。

プロのメジャー選手も出場するが、観客や

選手には守秘義務がある。


格闘技界の世界一を決めるのが趣旨である。

莫大な報奨金が動いたし、少数の観客のみで

あるが賭けの対象にもなった。


参加選手12名、うち実績のあるシード選手が

4名、残り8名のうち、オープン枠が4名

あった。ナミカは、リチャード・タカオの

名でオープン枠4位で出場資格を得る。


ここでナミカは、一回戦こそ苦戦したものの

2回戦優勝候補のシード選手などを破り、

圧倒的強さで優勝する。


その模様は動画などには残っていないが、

解説者ラジープ・カーンの言葉を

ここに引用しよう。


「一回戦のリチャードは徹底的に寝技を

嫌がりますが、それでもタックルにいかれて

何度か危ない場面を迎えます」

「最後はタックル際にラッキーパンチが

入る形でリチャードがKOを奪いましたねえ

20分という試合でした」


「2回戦、優勝候補のマウンテン・リキとの

試合は緊迫した試合で圧巻でした」

「リチャードが女装して入場したところから

緊迫感が増しましたねえ、なんせリキは日頃から

性的マイノリティを批判していますから」

「序盤から、リチャードはリキの強烈な張り手を

何度か受けています。畳みかける攻撃に、これで

終わりかと思われましたが、いったん持ち直します」


「この時点でおそらくセコンドも含め寝技主体に

切り替えたんだと思います。そしてそれが裏目に

でました。」

「リチャードの、意図した攻撃ではなかった

可能性もありますが、ヒザがリキの顔に入ります」


「そこからのリチャードのラッシュが素晴らし

かったですね。独特のフェイントからのボディ

への攻撃、最後は掌打が入って悶絶しTKO」


「準決勝、オープンから上がって来た選手ですが

けして弱い選手でないのはその前の試合を見て

いればわかります」

「長身ですがスピードのあるオールラウンダー相手

に、リチャードは2分かかりませんでした」

「これも開始序盤にリチャードはいいパンチを

数発もらっているんですよね、これで沈まない

のは、打撃のダメージを非常に柔らかく受け

流しているのかもしれません」


「ええ、あまりこういったディフェンスをする選手

私もあまり見たことないんですが、これ、相手は

心折れるんですよねー、自分の回心の一撃で

相手が倒れないなんて」


「決勝ですが皆さんおなじみのサンシロウ・

エメリエンコとリチャードとの対戦となります、

二人とも示し合わせたかのようにジャケット

マッチとなりましたね」

「私の調べですが、リチャードはサンシロウの

兄弟子だそうですよ。同門対決のようですね」


「開始2分でリチャードの綺麗な投げからの

流れるような寝技、間接技で決着となりました」

「ジャケットマッチ世界一のサンシロウ相手に

これですよねえ、つまり、リチャードは相当

寝技もできるということがわかります」


「会員の皆様のみにお送りしておりますこの放送、

お楽しみいただけましたでしょうか、それでは

次回までごきげんよう、さようなら」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る