第4話 もし、僕が
もし、僕が、もし、あなたが
50メートルがあと1秒速かったら、
今よりも素敵な人生になれたのかしら
この、果てしなく普通で、見向きもされない顔やすがたが
より美しいものだったら、
死にたい、とつよく思う夜が減ったのかしら
もっと綺麗な言葉を選べたら、
もっとみんなに共感できる文章だったら、
誰かの心を強く揺さぶる言葉をかける人だったら、
きっと、その時は、
僕は、きっと僕じゃなくなってしまって
すごく、綺麗な、暖かい日常にゆっくりと溶けていく
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