想い紡ぐ旅人

加瀬優妃

プロローグ

『朝日……』


 私を呼ぶのは誰?

 とても、懐かしい声がする。


 私はいつのまにか、深い森の中にいた。

 まわりを見渡しても、誰もいない。

 見上げると……背の高い樹木の向こうに、真っ白な空が見えた。

 木漏れ日が眩しい。


「誰かいるの?」

『……』


 何も聞こえない。でも、誰かが私を見ている気配がする。


 ふいに、辺り一面が草原に変わった。

 見覚えのない景色……なのに、なぜか懐かしい。

 草木がいっせいに風になびいて、まるで踊っているみたい。それに、すごくいい香りがする。


 ――ふと振り返ると、いつの間にか男の子がいた。


 白い服に白いズボンという少し奇妙な格好をしている。年は私と同じぐらいか、ちょっと上かな?

 茶色い髪が光で金色に輝いて見えた。

 ものすごく、綺麗な男の子。王子様みたい。

 左耳に小さなピンク色のお花のピアスをしている。


『……やっと会えたね……』


 彼がそう言って右手を差し出した。

 私は彼の手をとろうとした……。

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