Presenty——07

 いつの間にかスリープモードに移行していたらしいパネルが光る。

 ————と、遠隔操作か。

 次々にウィンドウが展開され、その動きを目で追っている内に気付けば読み解けなかった文字列は日本語へと切り替わっていた。


       ▼


 ようこそ。新たなる未来へ。

 Presentyはあなたの家族であり恋人であり友人であり、生活をより豊かなものへと変えるでしょう。


       ▲


 P……re……ああ、プレゼンティ。

 女がそう名乗っていたことを思い出す。


 改めて勧められたチュートリアルを確認してから目を通したマニュアルもきちんと日本語に直っており——たまに翻訳のしようがないのか、アルファベット混じりだが——各部位の名称や取り扱い方など、細部までよく作り込まれている。

 これがブラフなら才能の無駄遣いもいいところ。


 端末にはマニュアルの他にメンテナンス用のソフトも組み込まれているようだ。

 機体のコンディションチェックをリアルタイムで行えるらしく図面には首より下、胴体部分の表示もある…………。

 蓋が開いた時には頭部しか伺えなかったが、梱包を解き切ると四肢も含めて現れるのかもしれない。


 現在、取り外しが可能らしい両手両足の接合部——二の腕とふくらはぎには『分離中』の3文字が記載されている。


「ご不明な点などありましたら遠慮なくお尋ねください」


 ざっくりとだが一通り目を通し終えた直後に声を掛けられ明弘は悩んだ。

 おそらく、彼女には答えられない・・・・・・


「本当に、ヒューマノイドなのか……?」

「はい。ご覧いただきましたマニュアルの通りです」

「だったら買ったのは父さんか? どうして電源に触れてもいない内から起動してる?」


 HB——在りし過去の記録書History Booksシリーズ。

 ゼロナンバー。

 ロボット工学者チャルロイド・マーチンが生物学的観点から設計した特殊内部機構Morgansモルゲンスを搭載し、より人らしく、人に近い存在へ昇華された人型ロボット——の、復元版レコンストラクション


 与えられた情報を鵜呑みにするとして、しかし、彼女が機械ロボットであるなら電源を入れなければ精巧なばかりの人形————物言わぬ置物だろう。

 それが、どうして、すでに稼働状態にある?

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