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 魔法学校は長期休みの真っ最中なのだけど、中庭を奥のほうまで歩いていくと、魔法学校の敷地内には思っていたよりも、それなりにお休みを満喫している魔法使いたちの姿をちらほらと見ることができた。

 噴水のベンチに座っておしゃべりをしている生徒や、ゆっくりと空を散歩している生徒もいる。

 そんな魔法使いたちの姿を見ていると一瞬、今、魔法学校がお休みであると言うことを忘れそうになるくらいだった。

 真面目なメテオラはお休みの日はきちんとお休みをするので、魔法学校にやってきたりはしないのだけど、なんと中庭には魔法学校の生徒が料理を作っている屋台のようなものまで出ていた。

 屋台はいくつか種類の違う屋台があって、店に魔法使いがいない屋台もあった。お金を置く箱が置いてあるので、商品が欲しいのならお金を置いて持っていいっても構わないということなのだと思われる。実際にそうやってその箱に銀貨を置いて、商品を持っていく魔法使いの姿を中庭を歩いている途中で一人二人と見ることができた。

 ……僕もやってみようかな? とメテオラは思ったのだけど、緊張していたからやめることにした。こういうときは無理なことはしないのが一番なのだ。

 メテオラはきちんと魔法使いのいる屋台でアイスクリームを一つ買った。


 魔法学校はもともとこの新しき森に魔法使いたちがやってくる前からあって、廃墟となっていた石造りの建物を魔法使いたちが再利用している建物なのだけど、ところどころには高いランプ灯が何本か建てられていたり、地下には水道や下水施設があったりと、その施設の充実ぶりはなかなか豪華だった。

 本来、大きな木の上やまたは根元、もしくは切り株の下に穴を掘ったりして暮らす魔法使いの生活にとって、この石造りの魔法学校や、それ以外のいくつかの人間が残した施設群を利用することは、最初は(アスファロットの厄災の直後であるということもあり、魔法使いは人間の文化を捨て、自然に帰るべきだという主義が強かった)抵抗が強かったらしいのだけど、今ではそんな意見はほとんど聞かなくなった。

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