41 大魔法使いソマリ
大魔法使いソマリ
魔法の森と呼ばれるこの森の本当の名前を知っているものは誰もいない。もしかしたら最初から名前なんてないのかもしれない。だけど今はこの森は魔法の森という名前で呼ばれている。
この広大で美しい森の中に、たくさんの魔法使いたちが『空渡り』によってやってきたからだ。
空渡りとは、なにかとても大きな災いが起こったときに、その土地を捨てて、魔法使いたちが集団で、それも数人や数十人の規模ではなく、数百という数の集落の単位で移動する大移動のことだ。
メテオラはその当時、生まれたばかりだったからなにも覚えていないのだけど、九年前、ここよりもっとはるか北の大地で『大魔法使いアスファロットの厄災』と呼ばれる大事件が起こった。魔法使いの住んでいた当時の森は焼けてなくなり、人間たちの暮らしていた北の王国も、そのときに破壊されて大地の上から消えてしまったそうだ。
そんな大事件を起こした張本人である大魔法使いアスファロットは、今ではアスファロットを倒したことで魔法使いたちから『森の英雄』と呼ばれているソマリお兄ちゃんがやっつけた。
ソマリお兄ちゃんはアスファロットから次の『大魔法使いの称号』も受け継いで、今では魔法の森に住む魔法使いたちの長としての仕事をしている。
大魔法使いとなったソマリお兄ちゃんの最初の大仕事が空渡りだった。燃え尽きて灰になってしまった古い森を捨てて、魔法使いたちが暮らしていける新しい森を探すための大移動が開始された。
ソマリお兄ちゃんはその役目も十分に果たした。
黄金の民の代表や、当時の指導的立場にいた魔法使いたちと一緒になって、空渡りを敢行し、空と海を渡って、魔法使いたちはこのなにもない新しい森にやってきた。
そして、今ではこの森が魔法使いたちの住む魔法の森と呼ばれる新しき森になったのだ。
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