第15話 話を聞きたいの
ポライオンは今日も朝早く目覚めました。
両親がぐっすり寝ているので、そっとおきだしました。
まだ静かな動物園をお散歩するのは、気持ちよいものです。
朝のお散歩から帰ってくると、オライオンもポニーちゃんも起きていました。
「ポライオン、早起きだな」
大きなあくびをします。
「ちょっと朝のお散歩に行っていたの」
ポライオンは、軽く答えました。
「気を付けないとだめよ。まだ園長さんたちも来てないかもしれないし」
ポニーちゃんも心配そうに言います。
「平気平気。もう来てたよ。みんな来てた」
「でも、時々まだ変な電話がかかってくるから用心してってイオン君が……」
「お母ちゃん、心配しすぎ! まだ開園してないし手出しはできないよ。開園までもう少しあるから、遊んでくるねえー」
すっかり大きくなったポニーちゃんは、親の言うことなんて聞きやしません。
ぴゅうっと小屋から出て行ってしまいました。
「ねえ、ぶた太おじさん」
「なんだブ。おいらおじさんじゃないブ」
「ごめんごめん」
ポニーちゃんは、ぺこりとベロを出しました。
「しょうがないなあ、ポライオンに頭下げられたら許すしかないぞブ」
ぶた太は、尻尾をぶんぶん振り回しました。
「ねえ、お母ちゃんから聞いたんだけど…… おじさんは昔動物園から脱走したことがあるんでしょ」
「そうだブ! おいらたちオラアルブ探検隊って言って、アルダブラ君やオライオン君たちと一緒に脱走していろいろ探検したんだブ」
「ふうーん。探検、ねえ」
ポライオンはニヤリとしました。
「なんだブ」
ぶた太が、ポライオンをにらみました。
「なんでもなーい」
ポライオンは、キャッキャと笑いました。
「ポライオンが大きくなったら、入れてやるってオライオンと約束したブ」
ぶた太が言いましたが、ポライオンは知らん顔で言いました。
「えー。探検隊なんて入らないよ。だって、ぶた太おじさんは湧水で泥遊びしたまま眠ってしまったって、それでみんなが探しに来たんでしょう。泣きながらりょうさんにしがみついたって聞いたわ」
ぶた太はかーっと顔が赤くなりました。
「まったく、生意気だな、ポライオンは! ブッブー」
「じゃあねえ、またねー」
ポニーちゃんは、キャッキャと笑いながらリクガメの部屋に行きました。
リクガメの部屋では、ひょうもん君とガラパゴス君、アルダブラ君が仲良く草を食べていました。
「ねえ、リクガメさんたち」
「おはよう~ ポライオン。今日も元気そうだね」
三匹は仲良く口をそろえて言いました。
「ええ、元気よ。そういえばお父ちゃんから聞いたんだけど」
「なーにー?」
ガラパゴス君が聞きました。
「アルダブラおじさんが、昔脱走したって本当?」
ひょうもんくんが、ぬっと顔を上げました。
「本当も何も、アルダブラが脱走したからこの動物園はいろいろ起こったし変化したんだぞ。なあ」
とアルダブラ君の顔を見ます。
「照れるなあ~~~」
アルダブラ君は、もぐもぐと草を食べながら答えました。
「僕がはじめに脱走したなのは確かだけど~~~ たまたま動物園の入り口が開いてただけだし~~~ でも、脱走したからオラアルブ探検隊も結成したし~~~ 僕のおかげでポニーちゃんとオライオンも結婚してポライオンが生まれたし~~~」
「ポニーちゃんとオライオンが結婚したのは関係ないだろ」
ひょうもんくんが、横やりを入れます。
「関係あるよ~~~ 僕が脱走しなければ、みんな海に行かなかったでしょ?」
アルダブラ君は、じっとひょうもん君を見つめました。
「そういわれればそうだな。あーもう一度海に行きたいな。あの時はウミガメに会えなかったし」
ひょうもん君が遠い目でつぶやきました。
「動物園もにぎやかになったし~~~ エサもおいしくなったよね~~~」
「エサは関係ないだろ」
ひょうもんくんが、つっこみを入れます。
「関係あるよ~~~ やっぱりお客さんが多くなってからの方がおいしい草や野菜がもらえてるよ~~~」
アルダブラ君は、きっぱりと答えました。
「そういわれると、そうかも」
ガラパゴス君も、同調しました。
「ポライオンのおかげだよ~~~ ありがとう~」
ポライオンは、お礼を言われると思っていなかったので調子が狂いました。
「ふ、ふん。お礼を言われるほどでもないけど!」
ポライオンは、たったったっとアルパカさんと羊のところへ向かいました。
「アルパカおばさん。羊おばさん」
「なんだい、ポライオン。ポニーちゃんは元気かい?」
アルパカさんが、柵の中から答えました。
「元気よ。だけど、最近暑いでしょ。ちょっと疲れてるかも」
ポライオンは、少し声を落としました。
「本当に最近は暑いからねえ。私たちもばてそうだよ。それでも、イオン君がシャワーをつけてくれたり工夫してくれてるから、何とかしのいでいるよ」
アルパカさんがもぐもぐと口を動かしながら言いました。
「それにしてもポライオンもすっかり大きくなっためえ」
羊さんがしみじみと言いました。
「まだまだ、ポニーとしてもライオンとしても小さい方だけどね。お父ちゃんたちが話していたけど、ライオンとポニーの子供はそんなに大きくなれないんだって」
ポライオンは、ふっと息を吐きました。
「そうなのかい。でも、こんなにおしゃべりが上手になっておばさんはうれしいよ」
アルパカさんが言いました。
ポライオンは答えませんでした。
「このところポニーちゃんと別々の場所で暮らすようになったから、同じ動物園の中でもなかなか会えなくて寂しいめえ。ポニーちゃんによろしくね」
羊さんが、ポライオンの顔をペロリンとなめました。
ポライオンは、くすぐったくて思わずくすくす笑ってしまいました。
「お父さんとお母さんを大事にするんだよ」
「はあい」
アルパカさんとと羊さんにさよならをして、自分の小屋に帰ろうとしました。
その時です。
「ポライオンちゃ~ん」
後ろを見ると、アルダブラ君がポライオンのあとをつけてきていました。
「さっき、なにか話があったんじゃないの~」
アルダブラ君は、ゆっくりと首を上げて言いました。
「うん。アルダブラおじさんが逃げ出したときの話を聞こうと思って来たんだけど……」
「やっぱりそうだったんだ~~~ なんだかそうじゃないかと思って追いかけてきたんだけど~ ポライオンちゃんは歩くのが速いからなかなか追いつかなかったよ~」
アルダブラ君は、はあはあ言っていました。
「大丈夫?」
「平気だよ~ このくらい」
そういったものの、アルダブラ君はふらふらと座り込んでしまいました。
今日も気温がぐいぐい上がっていました。
「ちょっと待っていて」
というと、ポライオンはたったっとイオン君を探しに行きました。
イオン君の姿は見当たりませんでした。
「どうしたの?」
うろうろしているポニーちゃんを見つけて、りょうさんは声をかけました。
「りょうさん、アルダブラおじさんが大変なの」
ポライオンが、りょうさんのズボンのすそを噛みました。
「アルダブラ君がどうしたの?」
「アルダブラおじさんが、あたしを探し回って疲れて座り込んでしまったの」
ポライオンが泣きそうな顔をしています。
「アルダブラ君はどこにいるの?」
りょうさんは、近くにあった水道で水を汲むとコップと一緒に持ちました。
「こっちよ」
ポライオンは、りょうさんの袖を引っ張ります。
りょうさんとポライオンは、アルダブラ君が座り込んでいるところまでやってきました。
「アルダブラ君!」
「あ~ りょうさん~」
アルダブラ君が、うつろな目で答えました。
「ほら、お水」
持ってきた水を飲ませます。
コップだと飲みにくそうなので、口をあけて飲ませてあげました。
「おいしい~」
アルダブラ君は、そのまま寝てしまいました。
「おじさんは、大丈夫なの?」
ポニーちゃんが心配そうにりょうさんに聞きます。
「平気だよ。アルダブラ君はあんまり暑いのは得意じゃないから、あんまり無理はできないんだよ」
りょうさんは、冷静に答えました。
「おじさんは、わざわざあたしが話したりないのではと思ってきてくれたの」
ポニーちゃんが、心配そうにアルダブラ君をのぞき込んでいます。
「アルダブラ君は、やさしいからね~ 昔からみんなの気持ちを察するところがあるんだよ。今日も、ポライオンが何かを知りたがっているんじゃないかと察したのかもしれないね」
りょうさんは、ポライオンの顔をじっと見ました。
「あたし、アルダブラおじさんが目を覚ますまでここにいるわ」
ポライオンが言いましたが、りょうさんは首を縦に振りませんでした。
「今日は35度まで上がるというし、ポライオンまで倒れてしまうよ。小屋にお戻り。アルダブラ君は何とかするから」
りょうさんに言われて、ポライオンはしぶしぶ小屋に戻りました。
りょうさんは、イオン君に手伝いを頼みに行きました。
小屋では、イオン君がポライオンの帰りを待っていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます