天宮のプレアデス

まほろば

プロローグ

 ――今から話すのはね。あなたが産まれるずっと昔の、遠い国での物語。

 あの時、私は確かに冒険をしたんだ。

 心配性で、でも仲間思いの魔法剣士と。

 天真爛漫で、みんなを笑顔にしてくれる盗賊シーフと。

 いっつも眉間にしわ寄せて、でも、ここぞって時にみんなを助けてくれる魔術師マジシャンと。

 臆病で、でも、どんな敵にも勇敢に立ち向かう守護騎士ガーディアンと。

 みんなに優しくて、その実、怒らせると一番怖い僧侶ヒーラーと。

 そして、私が初めて恋をした人。

 こことは違う世界からやって来た、不器用で、口汚くて、出不精で、変な言葉遣いの商人と。

 とっても楽しくて、嬉しくて、綺麗で、ほんのちょっぴり悲しい大冒険を、してきたんだ。


 ――でも。でもね?


 ああ。どこから間違っちゃったんだろう。

 どこから、おかしくなっちゃったんだろう?

 私がここに囚われてから幾星霜。最後に外の世界を見たのはいつ?

 こっちが嫉妬しちゃうくらい、あんなにも楽しそうだったヒトや動物たちの営みが。

 泣きたいくらい綺麗だった大地が。海が。空が。――この世界が!

 記憶の遥か彼方に過ぎ去って、まるで夢か幻でも見ていたかのように感じてしまう。

 あの子は。ううん、あの子たちは。どこから狂っていってしまったの?

 私の所為? 私が、ちゃんと見てあげなかった所為?

 今となってはもう分からない。

 どれだけ力を込めても、鎖で繋がれたこの腕はピクリとも動かない。


 それでも、私は諦めない。

 どんな手を使っても。どれだけ犠牲を払っても。それでどんなに、私が悲しい想いをしても。

 ここから逃げて、もっと強くなって、あの子たちを止めて見せる。

 あの人が愛し、旅したこの世界を守って見せる。

 この星の未来を、奪わせはしない!


 だから、待ってて?

 いつかまた、平和な暮らしが出来るようにするから。

 みんなが笑顔で一日を迎えられるよう、頑張るから。

 どのくらい時間が掛かるのか、まだ分からないけれど。


 それでも、私はやり遂げて見せる。

 絶対に、この星を救ってみせるよ!

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