第79話 あれはメロンだったのか?
「大変申し訳ございませんでした!!」
目が覚めると脱衣所で土下座するリリカと俺に回復魔法を使っているルナがいた。
何だかすごくいい夢を見ていたような気がする。
「気が付いたわね? もう心配させないでよ」
何だか頭がフラフラするぞ? 首もちょっと寝違えたような。
「えっと、どうなったんだっけ? 俺のぼせた?」
記憶が少し曖昧だ。さっきのは夢だったのか?
「――頭を強くぶつけたからね。これに懲りたら今後はお風呂はルナとだけにしなさい」
「あ、あぁ」
まだ覚醒しきれていないからルナが何を言っているのか良く分からんけど、何だか目が怖いので頷いておく。
「主様、申し訳ありませんでした。この埋め合わせは後日必ず!」
「アンタ、いい度胸ね? 次ジンに怪我させたらホントに怒るからね?」
なにやらルナとリリカが睨み合っているが、リリカはルナと打ち解けたのだろうか。
「ルナ様は尊きお方ですが、主様はそのルナ様を従者とする御人です。妾は主様に此の身の全てを差し出す所存。何なりとお申し付けくだされ」
俺の視線に気付いたリリカがそう言って甲斐甲斐しく頭を下げていた。
「あー、なんだ、そんなに気を使わなくていいぞ? リリカの事は面倒見るって言ったんだし、いきなり叩き出したりしないからさ」
「――そうならないよう、努力致します」
俺の言葉に再度頭を下げるリリカにどうしたものか、とルナを見るけど、
「ジン、諦めなさい。その内慣れて来るわよ。ダンジョンでは随分と好き勝手やってたんだし」
「その節は大変ご迷惑をお掛けしました!」
ルナの言葉でも頭を下げることになった。……頭を下げるのはいいんだが、リリカは未だタオルを巻いただけの姿で頭を下げる度に谷間が……。
「リリカ、分かったから着替えなさい。ジンの変わりの服はあるのよね?」
「はい。こちらに準備しています。どうぞ主様」
「あぁ、ありがとう。……後ろ向いて着替えるからリリカが着替えたら教えてくれ」
「は、はい。……申し訳ない」
脱衣所はそんなに広くないし、仕切になるようなものもないから仕方ないだろう。……すぐ後ろで布の擦れる音が聞こえるのはちょっとヤバいけど。
それからリリカに今日泊まる部屋に案内してもらい、ようやく休むことができたのだが、
「なんでリリカも一緒の部屋なんだ?」
「もちろん主様のお世話をする為じゃ」
いい笑顔だが、それで納得するわけにもいかない。俺の肩に怖い顔した精霊が座っているんだから。
「別に世話はいらん。これから一緒に生活するんだし、気楽にしていいんだぞ」
「でも上からの物言いはダメよ。特に家に戻って他の二人にそんな真似したら叩き出すわよ」
「うむ。心得た!」
……まぁ、その内慣れるだろ。ベットは二つあるから一緒の部屋でも構わんか。
「それじゃリリカはそっちの――」
「ルナ様はこちらのベットをお使い下さい! 妾は主様のお傍で――イタッ」
ルナにベッドを進めたリリカがこちらのベッドに入って来たのでチョップをする。
「お前は向こうだ。大人しく寝れないなら本気で眠らせるからな?」
「わ、分かったのじゃ。大人しく寝るからそう怖い顔せんでくれ」
「はぁ、何やってんのよ」
その後リリカが乱入してくることもなく、静かに夜が更けていく。
「……リリカ寝たみたいね。やっぱり今日はキツかったんじゃないかしら?」
「そうだな。俺もそれなりに疲れたけど、だいぶ体力が上がっているみたいだ。初日としたら全然疲れ方が違うぞ」
今日のダンジョン攻略もそれなりに走り回ったし、フーカが居ない分結構戦ったけど、まだ余裕がある。これがレベルの恩恵なのだろうか。
「これからはリリカも加わるからもっと楽できるでしょ。……リリカはどういう扱いにするつもり? フーカ達より上に扱うの?」
それはフーカ達が奴隷でリリカが貴族だからってことだよな?
「……いや、俺の元にいる以上、奴隷も貴族もない。むしろフーカの方が先輩だろ? 実力にしてもさ」
「そうかも知れないけど、フーカは嫌がるわよ。絶対」
まぁ、貴族のお嬢様連れて来て「今日からフーカの後輩だ。面倒見てくれ」とか言ったらフーカは大パニックになるだろうな。
「まぁ、リリカの方が年上だし、お互いに尊重し合ってくれればいいけどな」
リリカが俺達の元に居る限り他の貴族は下手な真似は出来ないだろうし、俺達にとってはプラスのことが大きいからな。
「フーカもリムリも頭の良い子だから分かってくれるわ。ふぁ、ルナもそろそろ眠くなってきたわ」
「あぁ俺も寝るよ。おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
フーカ達も今日はゆっくり休めるといいけどなぁ。
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