2話 世界政府会議
KamiyoHachiyo、40年ほど前に全世界相手に宣戦布告をし勝利をおさめ世界各国を支配下に置く組織、その本拠地ビルの一室で年齢性別がバラバラの者達が一つの大きな円形のテーブルを囲み真剣な表情でお互いに見つめ合い、誰かが声を発するのを待っている。
「始めようか」
最初に声をかけたのは白髪の頭にアゴ髭の老人、アゴ髭は長く伸び腹部辺りまで達している。背も高くイスに座っているが背筋が真っすぐ伸びていて高い座高がより高く見えてた。
「まず、アレの動向がだが報告をしてくれ」
白髪の老人は右側の若い男に向かって言った、目線を向けられて男はテーブルの上に置いてある資料を取り話し始めた。
「現在<死の流動体>はアフリカ・サハラ砂漠上空に停滞しています、停滞してから1カ月ほど経ってますが動く気配はありません。前回の会議からエジプト、スーダン、チャドで約70万人の被害が出ました。動物に関しては家畜等はほぼやられております、野生動物は個体によっては1種族100匹を切っている種もあり絶滅は時間の問題かと思われます」
「ふむ、状況は良くならないか・・・で、アレを駆除する方法は? なにかアイデアが出たものは居るか?」
そう言うと白髪の老人はテーブルに座っている老若男女を見渡す、だが誰も言葉を発することはなく白髪の老人を見つめ返す。
「ないか・・・・毎回毎回、被害報告を聞くのみ、何か新しい情報は無いのか?」
白髪の老人はもう一度テーブルを見渡すが誰も反応せず全員が黙り込んでいた。
そんな時出入り口の扉がノックをする音と共に少しずつ開いて、若い女性が入ってきた。
「中条様、緊急の報告があります」
「会議中なのだが・・・まぁ意見もないし聞こうか」
中条は入り口の女性に目線を向けると入り口の女性は話し始める。
「アメリカ自治区から報告が来ました、なにやら巨大な建造物が空から出現したとのことです。戦闘機を向かわせましたが無線にも応答はありませんし電波等の受信も確認されておりません、現在は太平洋に向かって移動中とのことです。
…どういたしましょう?」
中条と呼ばれた白髪の老人は右手でアゴ髭を触りながら扉から出てきた女性の報告を聞いていた。中条は再びテーブルに座っているメンバーを見渡し再び入り口にいる女性に振り向く。
「とりあえず様子見だ・・・彩音よ視れるか?」
中条は対面居座っている80代の女性を見た、彼女は腕をテーブルに乗せ表情をこわばらせている、テーブルに乗せた腕は少し震えていた。
「いる、あいつが・・・・織田兼次が、戻ってきてる」
「彩音さん、織田兼次とは誰ですか?」
隣に座っていた若い男性が彩音に話しかけるが彩音は男性に見向きもせず正面の中条を見ていた、何も言わず震えている彩音に見かねて中条は代わりに話し始めた。
「織田兼次とは我々が世界を支配する以前、我らと対立していた強力な能力者だ。現在の組織、全能力者で迎え撃っても勝てないだろう、それほど強力な力だった」
「中条さんがそこまで言うとは、興味がありますね」
そんな発言をした男性を中条は無言で睨みつける、自信に満ちたその笑みは中条に睨まれ申し訳なさそうに目線を逸らした。
「最初に言っておこう、織田兼次に出会ったら絶対に刺激はするなよ、下手に反感を買ったら我々の組織が滅びかねん。若い連中は知らないと思うから後で詳しく話す」
中条はそう言うと入り口にいる女性に退室するように促した。
「あ、あの・・・」
「まだ何かあるのかね?」
中条が入り口の女性に声を掛けるとほぼ同時に女性の脇を子供がすり抜けて部屋の中に入ってきた、子供は恐らく10歳前後で髪が肩まである少女である。その少女は部屋に入ると左手を腰に当て右手をあげた。
「ヤホー、みんな元気かなぁ~??」
少女の発する言葉と同時に部屋中の視線が一斉に少女に集まる、少女の近くにいた若い女性が椅子を下げそのまま少女の近くまでイスで進んでいく、女性は少女の頭に手を置いた
「お嬢ちゃん、ここに入ってきちゃダメでしょ?
……で、なぜ入れたの?」
女性はそのまま入り口の女性に向い睨みつけながら問いかけた。
「いえ、合言葉を知っていたので幹部の方かと・・・
し、失礼しました」
そう言うと入り口の女性は逃げるように扉から出て行った。
「ちょっと、おばさん、邪魔よ!」
「なっ、お…ば…さん?」
少女におばさんと言われた女性は右目をピクピクさせながら少女の頭から手を離す。
少女は右手をアゴに当て、ふむふむと言いながら部屋中を歩き回り座っている者達を丹念に観察していった。
「お~、中条さん。イイ感じに歳を取りましたね! グッジョブです!
で、狂犬とまで言われた彩音さんは、すっかりお婆ちゃんですね~
その他のおじさん、おばさん達は知らない人だ~」
全員が少女の発言に驚いている時、中条が少女に話しかけた。
「お嬢さん、まずは名前を名乗りなさい」
「お~っと、忘れてました。私は組織のアイドル、白井夜巳ちゃんです」
夜巳は両手を肩辺りで左右に振り、体を少し右に傾ける往年のアイドルポーズをした。
そんな夜巳を見ながら最初に彩音が話しかけた。
「彼女は死んだはずですが?」
「簡単に言えば、転生しました」
彩音の言葉に簡潔に答える夜巳、見た目通り子供向けの返答である。
「夜巳よ、もう少し詳しく話してくれんかの?」
中条は孫を見るような優しい目で夜巳に話しかける、その表情は何故か嬉しそうだった。
「残念ですがそんな時間はありません、兼次様がもうすぐここに来ます」
兼次と聞いて中条と彩音の表情が強張る、中条は夜巳から目線を外し再び円形テーブルに座っているメンバーを見渡し話し始めた。
「そうか来るか・・・まぁ、あれだけの事をすれば怒ってるだろうな、
皆は彼が来ても大人しくしておいてくれよ、対応は儂がする。
いいか絶対に口を挟むなよ!」
中条はメンバーに強く警告をするとそのまま夜巳を見る、夜巳は部屋の何もない場所を黙って見つめている、おそらく視線の先に織田兼次が来るのだろう、中条はそう感じ同じ場所を眺めた。
暫らくして夜巳は少女の外見に似つかない表情で言った。
「来ます」
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