39話 人間ですよね?
テーブルに集まった5人は静かに向かい合っている、美憂はいまだに目にハンカチを当ている。
「命を閉じる…か、言い方を変えてるだけでそれは自殺だろ。その前に生身の肉体に戻るとか考えなかったのか?」
「魂の摘出は出来ましたが戻す事は出来ませんでした、記憶だけ体に入れても意識は芽生えませんでしたし、それにガイルアが襲ってきた時と重なってしまい、充分な研究ができずまず機械化を進めるだけで精いっぱいでした。ガイルアはロボットには反応しませんでしたから、住人を救うためにやもえず急ぎました」
なるほど、突貫作業で生き残るための機械化で後日安全になった時に戻す作戦かな?
しかし、これほどの科学力をもってしても魂の肉体への定着は難しいのか、でも俺はそれが出来るんだけどな。
問題は空っぽの体をどうやって手に入れるかだが・・・
「なにも今死ぬ必要はない、やはり自然に寿命を迎える方がいいんじゃないかな?」
「その後もリヴァララを使い研究していましたが魂の定着は出来ませんでした、何度も試しましたがやはり科学は自然に勝てないのでしょう」
何度も試した・・・か、おそらく人体実験だろうな、目覚めが悪くなるので詳しくは聞かないでおこう、そして試したということは体は作れるようだしな。
よし、これを交渉材料にしてこの科学力を手に入れる絶好のチャンス到来だ。
そんなことを考えながらテナを見ていると隣で瑠偉が眉間にしわを寄せて俺を見ていた。
<助けてあげたら?> か <また何か悪だくみしているわね>と考えているようだな、おそらく後者だろうが・・・
「体を用意できるなら俺の力で魂の定着が可能だ、最後ぐらい人として生きて寿命を迎えた方がいいと思う、どうだやってやろうか?」
「あんたって何でもありね、呆れます」
「なんだよ瑠偉、過去に1回だけやっているから失敗はしないぞ、それに何となく出来ることはまだ結構あるんだぜ?」
「さすがチート侍」
麻衣が満面の笑顔で俺に言ってきた。
「ほう・・」と麻衣を少し睨む付けると目線を下に向け「つ・・つい」と言い肩を落とした。
テナを見ると何か考えているのか黙り続けている、無表情なので次がどういう展開になるか予想がつかない。
そんな長い沈黙の間は美憂のすすり泣く音のみが聞こえている。
「織田様、私は貴方に聞きたいことが1つだけあります、いいでしょうか?」
「何でも聞いてくれてもかわない、我々はそれなりの利益をテナから貰っているからな」
おそらく俺の力の事だろうな、予想を超えて麻衣との関係を聞かれたりして?
それはまずい、瑠偉と美憂の攻略に支障が出る。
「織田様はガイルアではありませんか? 微弱ですが同じ反応を検知しました」
「・・・・は? 俺が?」
女子達がやっぱりと言った表情で一斉に俺を見た。
「やっぱり人間じゃなかったんですね?」と瑠偉
「うぁぁぁぁ」と唸る美憂
「か・・界●神様なの?」とズレてる麻衣、さっそく麻衣のアゴを力で固定すると「んんんん」と唸り始めた。
確かに子供のころの記憶はないが、人間のはずだが? 改めて聞かれると困る。
「人間だよ? 子供も出来たことあるしDNA的に人間・・・・・・・・のはず」
「DNA的にはそうかもしれません、でもその能力は異常です」
「ですよね、飛行機ごと34光年の距離をテレポートとか常識を超えてますよね」
「んんん・・・んんん」と麻衣が瑠偉の後に何か言いたそうだがそのままにしておく
一般人が超能力者の常識を語るなよ。しかし俺に匹敵するもしくは近い能力を使うやつは居ないのは確かだな、まぁ地球限定だが・・・
「で、でもマ●ニートはかなりデカい物を動かせるだろ?」
「それ映画の話ね? 麻衣の病気でも伝染したの?」
「お・・・おぅ、そうだな映画の話だった・・・な」
その後4人は静寂に包まれる中、麻衣の声にならない音が部屋中に響き渡っている。
話題を切り替え本題の話を切り出すか、テナが生身の肉体に戻っても1人で生活しなければならない、ではどうするか?
「テナよ地球に来るか? 生身の体に戻っても1人じゃ辛いだろう、地球人として生きるのも楽しいと思うぜ?」
「地球ですか・・・・それは・・・考えさせてください」
そういってテナは立ち上がると、座っていた椅子が下がって床に吸収される、そのまま来た時と同じ無表情で振り返り、そのまま部屋から出て行った。
その時、麻衣から力の発動を感じそちらを見ると麻衣は両手でアゴ周辺を抑えながら立ち上がった。
「んんんんおわん・・・・わああああああああがぁ」
まじか・・・・自力で解除しやがった、しかもフルパワーでやったのか体が宙に浮いてる。
瑠偉が「えっ」と言って半口開け麻衣を見ている、美憂は麻衣の顔と浮いてる足を交互に何度も見比べている。
「どうだぁ! 自力で解いてやったわぁ!」と麻衣は浮いたまま腕組をしてドヤ顔をしている。
っち、麻衣に超能力を与えたのがバレたか? ややこしくなるから素早く逃げよう。
俺は立ち上がりテレポートで現状から逃げることにした。
「あっ、そうだ温泉に入ってこないとな、じゃあな!」
「あっ、こら逃げない!」
瑠偉はあわてて俺に声をかけるが、同時に俺はテレポートでその場を離れるのであった。
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