36話 キプロス星の日常 城島瑠偉 その2


 私はコントロール室と呼ばれている11脚の椅子中央に昨日と同じように腰かけている。


「リヴァララさん、おはようございます」

『おはようございます、城島様』


 音程の無い無機質な言葉が部屋に響き、声の出ている方向を見るがそこは何もない空間でした。


(…ほんとに、どこから声が出てるのでしょう? )


「始める前にお願いがあるのですが?」

『私のできる範囲であればお受けします』


「トイレを改良できませんか?」

『その程度でしたら、すぐに対応可能です。詳しくお聞かせください』


 地球にある便座式のトイレの説明をする、特に地球人の女性は座ってする事をわかるように説明した。


(…うん、相手は機械、独り言だと思えば恥ずかしくない)


『了解しました修正しておきます。全部は組み替えれませんので部分的に変更します、デザインはお任せください』

「では、お願いします」


『それでは昨日の続きを始めさせていただきます。

 まず城島様が寝られている時にストックしておいた物からお見せします。

 1枚20秒ほどで次に移ります、気になるものがあれば申し出ください』


 言葉が終わると同時に部屋の中央に巨大な半透明のスクリーンが出現する、そこに一つの惑星が映し出された、そこには地球のような青い海と陸地、そして白い雲で所々覆われている惑星が映し出された。


(…これは地球ですかね? でも陸地の形が若干違います、悩ましいです)


「止めてください」

『了解しました、映像停止します』


(…似ている、凄く似ている、見れば見るほど似ているでも陸地の形が部分部分おかしいです。

 どうしましょう? )


「すごく似ているんだけど、少し違うのですが」

『では、この惑星を保存しておきます。他の惑星を見てから最終結論を出しましょう』


「そ、そうですね・・・では続けてください」


 映像が切り替わり、月のようにクレーターが大量にある惑星が映し出される。


(…大気の無い惑星ですね、宇宙にはいろんな惑星があるんですね。今地球人でこの惑星の姿を知っているのは私だけですね)


 スクリーンをずーっと見つめる私、大きな溜息をすると次の惑星の映像に切り替わった。


 ………

 ……

 …


 感覚的に3時間くらい経過したと思う。


(…やはり最初の惑星が気になります、その後の物は地球の姿とはかけ離れています)


「疲れたので、少し休憩します」

『了解しました、始めるときに声をおかけください』


 部屋が明るくなり、あの青髪の少年が入ってくる。


『飲み物をお持ちしました』


 リヴァララが発言する、少年は無言で歩いてきて私の前で止まると前の床がせり上がり机が出現した、少年はティカップを置き何も言わずそのまま退室する。

 私はティーカップの中身を見て目をしかめた。


(…また青い液体が入ってますね、味はいいんですが見た目が毒々しいです)


 一口飲んで「はぁー」と息をし立ち上がった。


(…行きたくないけどトイレに行きましょう)


 廊下を出てトイレの前で立ち止まる、扉の右にあるボタンを押すと扉は音もなく開く。

 中を見ると今まであった男性用小便器の場所に地球にある洋式の便座があった。


(…たしかに座ってできる洋式の便座だけど、私の思っていたのと違います)


 そこにあったのは男性用トイレの下部に蓋の無い洋式便座が無造作にのっかっていた、洋式トイレの水タンクの部分には当然男性用便器の部分がむき出しに解放されている。


(…イメージを言葉で伝えるのって難しいですね、まぁ座って出来るのでよしとしましょう。

 これでやっとトイレの苦痛からは解放されますね)


 トイレを出てコントロール室に戻る、机に置いてあるティカップを持ち残りを飲み干した。


「リヴァララさん、続きをお願いします」

『了解しました』


 両肩を椅子の背もたれに押し付け深呼吸をする、巨大なスクリーンを見ていると惑星が表示されている。


「パスで」

『了解しました』


「ところで何故5分程度の時間が必要なのですか?」

『望遠鏡の角度を調整しなければなりません、そのための時間です』


(…それでは仕方がないですね、この待ち時間が無駄に疲れます。

 今日は夕食後に温泉に行ってみましょう、そすればよく眠れるかもしれませんね)


「バカ・・・いえ、兼次と連絡取れますか?」

『呼び出します、しばらくお待ちください』


 腕を組み目を閉じ待っていると、イラっとする声が聞こえてきた。


「おう瑠偉、なんかようか? 手短に頼む」

「今日の夕食後、お風呂…いえ温泉に入りたいんですが」


「いいぜ、連れて行ってやる。で・・・お願いしますは?」

「お…お願いします、連れて行ってください」

「うむ・・・まぁいいだろう、では食後な」


「リヴァララさん、通信を切ってください」

『通信を切断しました』


(…はあああ、ストレスがああ、ストレスがああぁ)


『城島様、お疲れのようですので音楽でも流しますか?』

「ええ、お願いします」


 部屋全体に音楽が響き渡った。


(…これは、クラシック音楽? まずい、眠くなる・・・)


「この音楽は何でしょう?」

『7万年前ほど前に開発された、リラックスできる音楽です』


「そうですか、でも眠くなるので中止してください・・・

 あっ、寝るときに部屋に流せませんか?」

『可能です』


「では私がベットに入ったら先ほどの音楽を流してください」

『了解しました、それでは映像確認を始めましょう』


 部屋が薄暗くなりスクリーンに新しい惑星が表示された。


「パスで」

『了解しました』


(…あと5時間くらいかな? 長いなー)


 暗くなった部屋、中央のスクリーンをぼんやり眺めている。


「早く家に帰りたい・・・」


 と私は思わず声に出てしまっていた。


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