15話 ポンコツ復讐神

遡ること五日前。優とミーシェは洞窟の外を目指して歩いていた。

「なぁミーシェ。ひとつ思ったことがあるんだが。」

「ん?どうしたの?」

「…ここの魔物強すぎね?」

優とミーシェは現在ゴーレムのような魔物と交戦中だった。

「そうだね。Lv1000近くあるからね。」

「は?嘘だろ?1000?」

「そうよ?」

「そうよ?じゃなくて…てかここどこなんだ?」

「ここは最果ての洞窟よ。人間が入ってくることなんてないわ。

…ごめん。もう人間じゃないんだっけ?」

「うるせー。…ていうかなんで戦ってるの俺だけなんだよ…お前も手伝ってくれよ。」

「えぇー…私弱いよ?」

「何言ってんだ。仮にも神様なんだろ?」

「…私、回復系の魔法しか出来ないの。」

「え?ちょっと何言ってんの?」

「だから!私戦えないの!」

「マジですか…」

そういえば戦ってるとこ見たことねえなとは思っていたが…

「…うん。」

「わーったよ…よっと…」

話しながらもゴーレムの拳を躱す。

「ダークボール。」

「ゴ、…ゴゴゴ」

「きいてるなー。」

「…ユウ、その調子。」

「はいよ。エンチャントダークホール。…はっ!」

「ゴ…ガ…」

ふう…倒した倒した。

「おつかれー。」

「…お前…使えねえな…」

「むっ!か、回復魔法なら負けないもん!」

「さいですか…じゃあ早速たのむよ。」

「ヒール。」

「ありがとう。じゃあ行くか。」

「そういえばもうすぐ出口のはずよ。」

「やっとか…ありがたい。」

「出たらまずどうするの?」

「取り敢えず近くの国でも目指すさ。」

「ここから近いとなると…ロキア帝国ね。」

ロキア帝国か…かなり大きな国だとセバスさんに教えて貰った気がする。

「…ユウそこにお姉ちゃんの魂も封印されてるの…」

「そうか。じゃあまずはそれからだな。」

「…本当にいいの?復讐の…邪魔にならない?」

「大丈夫だ。それに近くにあるのがロキア帝国だとすればピルーク王国は結構遠そうだからな。そのついでだ。」

「…ありがとう。」

「また泣くなよ?」

「!失礼な!もう泣かないし!」

「そうか…」

ちょと残念…あの時のミーシェはとても可愛かったです…

「ん?なにか来るな…」

「数が多いわね。…ブラッドウルフの群れね…行ける?」

「任せとけ。下がってろミーシェ。」

ドラゴンキラーを抜く。

「エンチャントダークホール」

ブラッドウルフが一斉に飛びかかってくる。

「はぁ!」

ドラゴンキラーで薙ぎ払う。

だが数が多いため次々に襲いかかってくる。足を噛みつかれたがすぐに切り離す。

「…ちっ。多すぎだろ…仕方ねぇ。ブラックホール。」

ブラックホールは闇属性魔法の上位魔法だ。対象を引力で引き寄せ押しつぶす。

押し潰されたブラッドウルフの血が飛び散る。

自分がやったことだがかなりグロテスクだ。

「今のは多かったな…」

「ユウすごい。もうブラックホールをマスターしたの?」

「まあな。誰かさんが戦えない分俺が倒してきたからな。」

「面目無い。」

「で?次はどっちだ?」

「左よ。そろそろ出口が見えるはず…ほらっ!」

おお…久々の光だ。

「やっとか…」

「早く出よー?」

「ああ。」

足早に出口に向かった。




洞窟から出るとそこは森の中だった。

「あー…久しぶりに外の空気吸ったわー。」

「ふふ…お疲れ様。」

「んじゃロキア帝国目指してもうひと頑張りだな。…てか俺って魔族なんだよな?入れんの?」

「外見は変わらないもの。あとはステータスを隠蔽すれば大丈夫よ。」

「なるほど。」

「…私も疲れたわ…着いたらまずは宿をとって…そういえばユウ。

お金持ってる?」

「は?お金?持ってるわけねえだろ?」

「…ふぇ?」

「…ふぇ?」

「それじゃぁ私たち…ロキア帝国に入れない!」

「入るのに金が必要なのか?」

「うん…でもどうしよう。」

「魔物倒せば手に入るものじゃないのか?」

「今までだって手に入らなかったでしょ?お金手に入れるには倒した魔物の素材を売らなきゃいけないの?」

「素材って…全部おいてきちまったぞ?」

「大丈夫。全部私が持ってきたから。」

「いつの間に…てかどこにもないじゃん。」

「私、アイテムボックス使えるから。」

「なるへそ。」

「どうしよう…入れないんじゃ…」

「野宿しかねえか…」

「…そうね…ちょっと危険だけどしょうがないわ。」

ぐぅー。

腹がなった。

「腹減ったー…パン食べたい…」

「あ、ユウは魔人だから普通のごはんは食べれないよ?」

「え?」

「魔人は魔物の肉を食べて育つの。」

「えっ?何それ聞いてないよ?」

「今言ったもん。」

「それを先言え!このポンコツ復讐神!」

「いたーい!ほっぺ引っ張んないで〜」

「ちょっと待って…え?俺もうなんも食えないの?」

「話聞いてた?魔物の肉なら食べられるわ。」

「…パン…お米…」

「えーと…そのお米ってのは何か知らないけどパンは食べられないってことはないよ?すぐ吐き出しちゃうと思うけど…」

なんだそれ!?東京〇種てきなやつか?…勘弁してくれ…

「まぁ魔物のお肉美味しいよ?…はい。今焼いてみたの。どうぞ」

「…ああ。なんの肉だ?」

「グランドドラゴンよ。最初に倒したやつね。」

アイツか…まぁ食べてみるか…もぐっ…

!!!!!!!!!

「う、うめえ!」

「ふふ、でしょ?」

なんだこれ?美味すぎる。魔物ってうまいのか?

「魔物の肉は人間にとっては毒なのよ。」

「こんな上手いものを食えないなんて…可哀相に。」

「魔人もいいものでしょ?」

「…まあそうだが…」

またこのポンコツ復讐神に丸め込まれた気がする。

まあいいか。

そのままユウとミーシェは眠りにつくことにした。

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