第四話 村々
盗賊退治は、大きな・・・。大きすぎる問題に直結する物を見つけてしまった。誰かに丸投げが正しい対応だろう。
教会が、村々を襲わせていた。
それだけでもかなりのスキャンダルになるのだが、その先の指示が、教会の尊厳だけではなく、国の根幹を揺るがす可能性がある。
ツインズは、早々に情報の権利を放棄した。
立場が微妙な自分たちが持っていていい情報ではないというのが、ツインズの主張だ。
そして・・・。
もう一人の当事者になりえる人物は・・・。
「リン君。はい」
ナナは資料を見てから、俺に渡してきた。
こうなるとは思っていた。
「俺が持っていても、ローザスやハーコムレイに渡してしまうぞ?」
丸投げを宣言する。
「いいわよ。ツインズも、文句はないわよね?」
ナナの言葉で、ツインズも頷いている。
「あぁリンが持っていくのがいいだろう。それに、リーダーはリンだ。盗賊を討伐して得た物だ。リンが持って行けばいい。俺たちは、盗賊を貰えば十分だ」
ツインズの総意として説明をしてくれた。
生き残った盗賊を持って帰って奴隷にするのだと言っている。
犯罪奴隷になるので、高くは無いのだが、通常では使えないような場面に使う事ができる為に、商隊としては一定数の奴隷は確保しておきたいらしい。
リカール・・・。セトラス商隊の隊長からも、多くの奴隷は必要ないが、最低限の人数の確保はしておきたいらしい。
ナナは、戦闘の
マヤとミトナルも、俺に一任の構えを崩していない。
盗賊が持っていた物で、価値がありそうな物は、貨幣を除けば、武器や防具だが、俺たちにはサイズや能力で必要がない物だ。
作り直す方が手間になるだろうという感じだ。
「ナナ。ミル。武器や防具は必要ないのだな?」
「いらないわよ。私には、サビニから貰った武器と防具がある!これ以外はダメ」
「僕も必要ない」
セトラス商隊にも聞いたが、買い取っても二束三文にしかならないと言われた。
教会がバックについているのだから・・・。
「盗賊たちは、酒精を買った。贅沢をしていた。村人なら、粗末な武器や防具で十分」
ミトナルの指摘だが、たしかに納得できてしまう。
「リン君。それに、盗賊たちは、権力者と繋がっていたわね」
「そうだな」
「討伐隊が組織されたら、教会から情報が流れたのではなくて?」
「・・・。そうか、だから、武器や防具よりも、贅沢品に使ったのだな」
ナナは、他にも何に使ったのか解っているのだろう。
俺も解るが、口にする必要はない。
洞窟の奥に、女性の遺体が積み上げられていた。
これだけで、盗賊たちを討伐した意味がある。
遺体は、村々に問い合わせをして、引き取り手を探すことにした。遺体は汚れていたので、綺麗にした。腐敗したり、白骨化したり、判別できない物も多かった。
滅ぼされてしまった村もあるので、最終的には、半分以上は引き取り手が居ない遺体になってしまうだろうと言われた。
遺体は、神殿に送って、葬送されることが決まった。
村々には、事情を説明して、神殿の儀式に参加を希望する人は、そのままセトラス商隊が連れて行くことになった。
ここで、商隊を二つに分ける事になったのだが、神殿に向かう商隊は、ツインズが護衛につくことになった。
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「よろしいのですか?」
「かまいません。討伐隊のリーダーからの指示です」
「ありがたい・・・。お話ですが・・・」
「対価は、先ほどお話した内容で大丈夫ですよ?」
「・・・」
「ご心配ですか?」
「いえ、セトラス商隊の皆さんには・・・。しかし、これだけの武器と防具を、誰も居なくなってしまった家と畑と交換では・・・」
「いえいえ。リーダーの眷属が住むので、餌や水をお願いしているので、こちらとしても、メリットがあります」
俺の考えた村の支援策を、リカールが村長に説明をしてくれている。
この村で5つ目だ。
恐縮しつつも、村長たちは俺の提案を受け入れてくれている。
供出している武器と防具は、盗賊から奪った物だけではなく、神殿にあった使い道がなかった物や、森の中で見つけた物も含まれている。足りなくなると思って、ブロッホに持ってきてもらった。
そして、眷属たちを村に派遣する。
次に盗賊が襲ってきても、大丈夫なように配置を考えている。主に、スコルたちだ。アイルが森で見つけた群れを支配した関係で、数が増えてしまっていた。就職先としても村々を有効活用しようと考えた。
定期的に、入れ替える事をしている。
そして、眷属たちには、近くに出る魔物を狩って、村々に提供するように指示を出している。
眷属たちが狩ってきた魔物をどうするのかで、村への対応を変えようと考えている。指標になるだろう。助ける価値があるのかないのか・・・。
ひとまずは、神殿への移住を薦めるのは、見極めるのが必要だと言われていた。
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村々を回って、大きなお土産と小さなお土産を入手した。
セトラス商隊が言っていた内容が正しかったことも認識ができた。
村々は、税の取り立てのために、作付けする物を指定されていた。
その為に、村々では余っている作物が違っている。相互に、交換をおこなえば、もっと豊かな生活ができる。村も、ある程度の規模になると、開拓税という訳が分からない税を取り立てられる。
法の欠陥だ。
村からの税と個人からの税を搾取するようになっている。
セトラス商隊として、村々を回って、ローザスに現状の報告をしている。
少しはいい方向に動いているようだけど、まだ足りない。そもそも、村々まで”法”を浸透させるのは、不可能だと思えて来る。
上からの改革を断行しても、途中で腐った奴が一人でも居たら、そこから下は腐ってしまう。
そして、被害を受けるのは上ではなく、税を真面目に納めている人たちだ。
王都には、メルナ側ではなく、反対側の門から入場する。
大回りをした理由の一つだ。
「リン。凄いね」
門には、王都に入るための人たちが行列を作っていた。
昨日はミトナルが身体を使ったので、今日はマヤの番だ。
マヤは、王都に入る時には、マヤの方が警戒されないだろうという判断だけど、意味があるとは思えない。どちらになっても、雰囲気は変わるが、美少女だと言うのには同じだ。目を引くのだ。
王都に近づいてからは、マヤはナナと一緒に居ることが多い。
面倒な奴が現れた時に、ナナが撃退してくれる。
俺は、リカールと一緒に居ることが多い。
王都に入ってからの行動を話し合っている。
王宮には行かずに、ローザスと会う方法として適しているのは、アッシュに取り次いでもらう事だ。
リカールも、普段は書面での報告に済ませているので、ローザスにもハーコムレイにも滅多に会わないらしい。
今回は、
「マヤ。フェムの宿屋は知っているよな?」
「うん!」
「王都に入ったら、ナナと一緒に宿屋で待っていてくれ」
「リンは?」
「アッシュの所に行ってくる」
「わかった。そうだ。フェムのお父さんも神殿に誘うよね?」
「あぁそのつもりだ。フェムからの手紙も預かっている」
「僕とナナで話をしていい?」
「ん?いいぞ?手紙を渡して、質問を受けるだけだぞ?」
「うん!大丈夫」
ナナも居るから大丈夫だよな?
それに、ミトナルも中から助言をしてくれるだろう。
何も仕事を与えないと、王都の中を散策しかねないから、宿屋で待っていてもらうのに、丁度いいかもしれないな。
「わかった。マヤとナナに任せる。答えられない質問は、俺が帰ってきてから答えるから、宿屋で待っていてくれ。俺は、リカールとアッシュに会ってから、ローザスとハーコムレイと話をする。長くなりそうなら、宿屋に連絡をする」
「うん。わかった」
ナナも、大丈夫だと言っているから、大丈夫だと思いたい。
フラグを立てたくないけど、心配になってしまう。
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