第十七話 各種設定


 アデレードとルアリーナとサリーカの旅立ちは延期された。

 主な理由は、アデレードとルアリーナとサリーカが、自分の眷属を愛でる時間が欲しいと言い出したからだ。それなら、俺が王都に向かおうと思ったのだが、そっちはロルフとフェナサリムとタシアナに反対された。


 神殿の整備を任せていたロルフが俺の所に、マヤと一緒に来た。マヤは、ミトナルと入れ替わっている。


 皆には事情を説明しているが、大きくなった姿での挨拶をしておこうと思ったようだ。


「え?そうなると、今は、ミルが妖精なの?」


 喰い付いたのはタシアナだ。

 膝の上には、従属になったカーバンクルを乗せている。リデルの一族から、タシアナに懐いた子が従属した。タシアナは名付けをして可愛がっている。


「ミル?今は、寝ているよ?」


 マヤが簡単に説明をしているが、それでは伝わらないと思う。


「寝ている?」


「うん。僕の中で寝ている状況だよ?」


 流石はマヤだ・・・。説明になっていない。

 代わりに、説明をしたら”疑問はあるが納得する”と言っていた。


 最後には”そういう物”だと理解してもらった。


「それで、ロルフ。何か問題が発生したのか?」


『問題ではありませんが、ご報告しておいた方が”よい”と判断をしました』


「何があった?」


『はい。神殿としては、ありがたいのですが、上にある町から人が落されてきています。合わせて、壊れた武具や道具なども落ちてきています』


「人?それは」


『既に死んでいます』


「殺されて落されたのか?」


『不明です』


「しっかりと弔ってやれ」


 神殿で弔ってから、神殿の力になってもらう。


『はい』


 ロルフの話は、設定の調整を含めての話だったが、大きな問題はないと判断されている。

 神殿としての拡張方針を決める必要がある。


 ミトナルが起きて妖精の姿で現れたので、現状の説明を含めて行うことになった。神殿の内部ではなく、ギルドが管理する場所もミトナルが詳しい。


 ミトナルが話に加わるようになると、マヤがロルフを抱き上げて何かを注意している。雰囲気は、深刻なことではない。マヤが笑顔でロルフに命令を出している。細切れにしか聞こえないが、ロルフとマヤだ。変なことはしないだろう。と、信じている。多分、大丈夫だ。


 説明が終わって、拡張の方針を決める必要があると聞いた。


「リンの好きにすればいいと思う」


 ミトナルの言葉だ。


「そうか?」


「うん。文句は言わない」


 周りにギルドのメンバーが居る。

 ミトナルの言葉に、皆が頷いている。


 好きにしていいと言われても、意外と困ってしまう。

 皆のためにとか考えていない。正確には、多分数パーセントだけ、皆のことを考えている程度だ。もともと、自分のために神殿の権能を使おうと考えていた。その中で仲間になりそうな者たちを集めた結果が、ギルドの誘致だ。


「わかった。まずは、森を”魔境”にしよう」


「え?」「はぁ?」


 批判されているような雰囲気ではない。

 俺が何を言っているのか解らないという雰囲気だ。


 実際に、俺も自分以外の人間が言ったら意味が解らないだろう。


 簡単に説明をした。

 アデレードとルアリーナと子供たち以外は、ミトナルの案内で訓練ができるダンジョン(もどき)に案内されている。俺の説明で、なんとなく解ってくれた。ルアリーナはゲームのダンジョンだと言えば解ってくれた。

 アデレードだけが、何を言っているのか理解が出来ていなかったが、ルアリーナがあとで説明をしてくれることになった。


「それで、リン?僕たちの設定でいいの?」


「あぁ廃墟の周りが弱くて徐々に強くなるのだよな?」


「うん。ポップの設定を変更するね」


「エンカウント率が高めで設定が出来れば・・・」


「うん。でも、そうしたら森の中が・・・。あ!だから、という表現を使ったのだね」


「そうだ。ロルフ!」


『はいにゃ!』


 さっき、マヤがロルフに言っていたのは・・・。

 マヤを見ると、笑っているので、注意したのは、語尾の”にゃ”だろう。俺も忘れていたが、キャラ付けとしては必要なのだろう。それでなくても、ロルフの話し方は硬い。


「廃墟から伸びる街道に、何か理由がありそうな物を等間隔に配置してくれ」


『何をする物なのかにゃ?』


「実際には、何もしない。街道を通る者には、”魔物避け”と説明ができる物がいい」


『解ったにゃ』


「メルナに伸びる街道にも、壊れた形で配置してくれ」


『メルナ側には、街道がないにゃ?』


「昔、街道が合ったように見せかけたいだけだから、適当な場所に配置するだけでいい」


『はいにゃ』


 ロルフがマヤを連れて設定を行うために、部屋を出て行った。

 ミトナルは、俺の肩に乗っている。


 どうやら、ミトナルの姿を見たギルドのメンバーがいろいろ聞いていたようだ。疲れて、俺の肩に乗ったというのが現状でわかっていることだ。

 そして、どうやら妖精の姿の時には、マヤが取得しているスキルが発動するようだ。もちろん、ミトナルが取得していたスキルの発動にも問題はない。かなりチートな状況になっている。ミトナルは、スキルがチートな上にダンジョンで戦闘訓練を行った。ブロッホやヒューマと模擬戦を行っていたことで、スキルを磨き上げている。努力をしたチート持ちだ。ステータスは、俺の方が上だが、純粋な戦闘ではミトナルの方が上の可能性が高い。

 それを聞いたギルドのメンバーは、ダンジョンや魔境での訓練を行うことにしたようだ。


「そうだ。フェム。ギルドや住むところは大丈夫か?」


「うん。マヤちゃんにお願いして調整してもらった」


「そうか?」


 フェナサリムが、俺の作った状態からの変更点を教えてくれた。


 変更点?

 全面的に改修したよな?


 ”問題はない”と言っているが・・・。いろいろ改修が必要だとも言われた。部屋を作ったが、貴族出身の者と同じようにするのは問題だとか、この世界に合致した修正が多数に渡って行われた。

 それから、施設の子供たちの部屋は大部屋と4-5人で寝るための部屋などに細かく使い方が選べるように作り替えられている。

 ロルフに聞いて、空調や家電に近い物ができないのか確認して、設置したようだ。家電に似た物は、俺も欲しいから、ロルフに後でお願いしようと思う。


 ギルドの近くには、宿屋を設置したようだ。

 自分たちが住む場所は、ギルドの裏側にして、表通りは店舗に使えるような建物だけにしたようだ。


 大きな改修はそのくらいだ。

 あとは、部屋を使いやすいように細かい変更は、個人で行ったようだ。家具は、最低限の物は備え付けで作ったが、それがダメだったようだ。


 家具を作る職人も王都から連れて来るらしい。

 イリメリが帰ってくれば事情が変わる可能性がある。らしい。


「イリメリの出身地域は、家具や小物を作る者たちが多いのか?」


「私も、そこまでは詳しくないのですが、多かったはずです」


 俺の質問に答えてくれたのは、ルアリーナだ。貴族の教育で、地域ごとの特産物を覚えさせられた。と、笑っていた。


「そうね。詳しい話なら、お兄様が知っているとは思うけど、イリメリの出身地域が、前までセトラス商隊が仕入れを行っていたのは聞いています」


 サリーカも話に加わってきた。


「前?今では、仕入れていないのか?」


「はい。領主がクズで、関税が凄くて仕入れをしても、旨味がないので仕入れには・・・」


 そうか、情報は必要だから商隊としての仕入れではなく、密偵は送られていたのだな。行商を送っていた感じかな?


「ん?家具や道具を作る時の資源は・・・。あぁ森の木か?」


「そうだね。詳しい話は、村民が来てくれた時でいいと思う」


「わかった。木なら、ミルが潜っているダンジョンからでも採取ができるよな?」


「できるよ。鉱石もあるよ。あと、ゲームと違って、倒した魔物は消えないからね。素材として使うのなら、持ち帰らないとダメだよ?」


「え?」「そうなの?ミルはどうしていたの?」


「僕?放置だよ。そうしたら、他の魔物が食べる。食べた魔物は強くなる。強くなった魔物と戦える。リンの役に立てる」


 ミトナルさん。

 それでは、俺がミトナルを戦わせているように聞こえてしまう。


 実際には、倒された魔物を吸収することもできるが、行っていない。

 この吸収の設定が、問題になりそうだと考えた。確かに、消えるほうが楽なのだが、そうなると、ダンジョンで戦って人が死んだ時にも、ダンジョンが吸収してしまう。蘇生のスキル持ちは居なかったと思うが、この世界には蘇生の物語が残っている。

 神殿の力で蘇生を行える(可能性がある)。吸収はしないで、死体が残るようにした。死体が残っていれば、解体する必要はあるが、素材は大量に取れると思われる。ドロップは行われないし、宝箱も出ないが、出るほうが不思議なので、問題はないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る