第七話 眷属長?


「わかった。味方は欲しい」


”ありがとうございます”


 オーガには、ラトギの名を与えた。黒竜には、ブロッホの名を与えた。


 ブロッホは、ワイバーンを眷属にしていたために、その者たちも眷属に加わる。


 ラトギは進化の兆しが見えた為に、ヒューマに命じて里に移動させた。

 ブロッホは進化を抑え込んだようだ。種族的な進化はしなかったが、スキルが大幅に進化して、ブロッホは”人化”できるようになった。


「リン様」


 全裸の状態で、俺の目の前で跪いているブロッホが居る。

 どうしていいのか迷っていると、人化を解いて竜に戻った。


「ロルフは駄目だ・・・。そうだ!アウレイアかアイルの眷属が、ポルタに居るな」


「・・・」


「リデル。アウレイアかアイルの眷属に、ポルタ村まで行かせて、服や下着を大量に運ばせろ」


”リン様。ポルタ村の位置がわかれば、我の眷属を向かわせます”


 ブロッホの提案が良いように思えた。


「そうか?ワイバーンなら確かに障害は少ないな。リデル!ジャッロかヴェルデに、話ができる眷属を祠に向かせてくれ、護衛は・・・。あぁワイバーンが護衛になるな」


”はい”


”かしこまりました”


 ブロッホがワイバーンだけで大丈夫だと判断した。実際に、ワイバーンが進化してブラックワイバーンとなり、ブロッホの属性が使えるようになっている。スキルに目覚めた者も出ている。進化の眠りを制御した者から、5体を選び出し、ポルタ村に向かわせる。


「ラトギとブロッホは、神殿に付いてきてくれ・・・。そうだ、ヒューマ!」


 ヒューマが俺の前に出てきて跪く。


「はっ」


「進化の眠りについた者たちを頼む。起きたら、神殿に来るように伝えてくれ」


 ヒューマの後ろに進化を終えたラトギが跪いているのが見える。

 進化の眠りには入らなかったようだ。


「かしこまりました。リン様」


「ん?」


「可能でしたら、ワイバーンを2-3体、祠に常駐させたく思います」


「そうだな。現状では、ここが唯一の接点だし、守りを固めるか?」


”リン様。ワイバーンの数は増やせます。守りを固めるのでしたら、他の竜族に連絡をしてもよろしいでしょうか?”


「ん?ブロッホ。簡単に説明してくれ、他の竜族・・・。その前に、ワイバーンを増やせる?」


 ワイバーンが増えるのなら、増やしたい。情報収集の観点だけを考えても、地上からだけではなく上空からの情報収集は必要になってくる。奴らが国を動かすのなら、対抗できる手段が必要になってくる。


”まずは、眷属ですが、我の魔力を与えることで増やすことが出来ます。その場合は、意識は我と同期されます”


「自然繁殖は出来ないのか?」


”眷属であるワイバーンは、自然繁殖で増えた者と、我の分身体に分かれます。自然繁殖で増えた者たちは、自然繁殖でしか増えません”


「そうなのか・・・。分身体に名付けをしたらどうなる?」


”・・・”


「今度、やってみよう。まずは、ポルタ村までの移動を頼む。リデルの眷属なら、上に乗っても大丈夫だろう?」


”リン様がお乗りになっても大丈夫です”


「そうか、それは今度だな。ブロッホ。頼む」


”御意”


 ブロッホが、一体のワイバーンを呼んで、跪かせた。

 ”なに”をおこなったのか解らないが、ワイバーンが倍々ゲームのように増えていく、16体になった所でブロッホがこちらを見る。


”リン様。16体ほどですが、問題はありませんか?”


「大丈夫だ。リデル。案内を頼む」


”はい!”


 リデルが、眷属を16体呼び出した。

 同時に、ヴェルデの進化している眷属が16体連れ立って跪いた。


「指示は聞いているな?」


『はい!』


 皆が揃って返事をする。

 ワイバーンは、念話での会話が出来ないようだが、言っている内容は理解出来ているようだ。


 リデルの眷属とヴェルデの眷属がワイバーンに乗って空に上った。祠を一周してから、ポルタ村とは反対方向に一度向ってから、大きく迂回してポルタ村に向かう。

 ブロッホが言うには、この時期の風向きから祠からポルタ村の方角からの向かい風が吹いているために、ワイバーンだと速度が乗らない上に魔力の消費も激しいだそうだ。そのために、反対方向から迂回した方が距離は長くなるが、魔力の消費が抑えられるようだ。


「リデル。ロルフ。今日は、ヒューマの所に行く、神殿に伝言を頼む」


 リデルとロルフが、神殿に向っていったのを確認して、ラトギを見る。


「ラトギ。眷属を集めて、進化の状態を報告してくれ」


「かしこまりました」


 ラトギが立ち上がって、ヒューマの眷属と一緒に眷属たちを誘導するために、祠から離れた。


「ブロッホ。それで、他の竜族というのは?」


”はい。我は、黒竜と呼ばれています。竜種は他にも、黄竜、灰竜、青竜、紫竜、赤竜、白竜が存在します”


「・・・。魔法の属性と同一なのか?」


”はい”


「そうなると、ブロッホは、”水”か?」


”はい”


 そうなると、俺も黒魔法が使えるようになる可能性が高いな。

 初代が、国を興せた理由が解ってきた。確かに、魔物たちを束ねるだけでも大いなる力になるが、それ以上にスキルが使えるようになるのは大きい。ステータスも上がっているだろう。


「他の竜族は、神殿に来てくれると思うか?」


”わかりませぬ。初めての事で、我もリン様にお会いするまで半信半疑でした”


「そうか・・・。他の竜族は、ひとまず置いておこう。連絡だけはしておいてくれ、リアクションがあればそのときに対応しよう」


”はっ”


「俺は、神殿をあまり離れるわけにはいかない」


”それは?”


「ロルフから聞いていないのか?」


 ブロッホが頷いたので、マヤとミルの話をした。

 それだけではわかりにくいと思ったので、敵と認定している者たちや、これから”敵”になる可能性が高い者たちの説明を行う。


 ブロッホに一通りの説明をした所で、ロルフが戻ってきた。


『マスター。ご提案があります』


「ん?」


 ロルフは、珍しく真面目な声で、ブロッホの横に座りながら話しかけてきた。

 提案の内容は、ロルフにしては珍しく役に立つ提案だ。


 ブロッホを人化させて、俺の執事にさせるという提案だ。ブロッホも問題はないし、是非と言っているので、執事として控えてもらうことにする。ロルフとしては、ブロッホに護衛としての役割と眷属との連絡係をやらせたいようだ。俺は、気にしないのだが。族長を除いて、俺に連絡するのを躊躇う者も出てきていると話していた。今の所は、問題は発生していないが、急を要する場合には俺に直接連絡できないのは困ってしまう。

 ロルフは、意識改革を行うのは難しいと判断した。そこで、自分に眷属からの意見を集中させようかと思ったが、ロルフの負担が大きくなる上にやはり眷属の中には、ロルフでも遠慮してしまう者が出てきた。そこで、ヒューマに相談して、善後策を考えたが、考えがまとまる前にブロッホが訪ねてきた。


 そこで、ロルフは神殿に残っている族長たちに話をした。竜族なら、執事としても、護衛としても、安心できる上に、魔物の頂点だが俺やロルフに話をするよりは”まし”だと考えたようだ。


 ブロッホも、問題がないと言っているので、俺の執事としての役割を与えることに決まった。


 まずは、服を用意しなければならないだが、服をポルタ村から搾取してくる。まずは、しばらくは服や下着を含めて、間に合わせる。その後、ヴェルデやビアンコたちが服の生産を行う。


 祠で一泊したら、ワイバーンたちが戻ってきた。

 自殺したり、逃げ出そうとして死んだり、人が居なくなった家から服や下着や家具を一通り持ってきた。

 家具は必要ないが、どうやらジャッロやヴェルデが欲していたようだ。神殿の内装の参考にしたいと言っていた。村で使うような安い物ではなく、貴族が使うような家具は今後の課題として、まずは必要な物がこれで揃った。


 神殿に戻って、ロルフに改修の可否を聞いたら、”好きにしてください”と言われた。

 眷属たちが増えた事で、今まで利用できなかった施設が開放された。それだけではなく、祠以外の場所にも転移門が設置できる。


 ロルフとブロッホの意見で、まずは俺の居住スペースの充実を図ることに決まった。寝る場所があればいいと思ったが、ブロッホだけではなく族長たちから反対されてしまった。神殿の主であり、自分たちの主が粗末な作りの場所に住んでいるのは我慢出来ないと言われてしまった。

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