第二十話 資金援助

/*** リン=フリークス・テルメン Side ***/


 全員の話を聞いて、真命を変更して、ジョブの変更を申し出る場合には、ジョブの変更を行って、スキルの隠蔽を行う。


 皆で、集まって、サリーカが鑑定で見ていく、全員が無事変更できた事が確認できた。


 3時間ぶっ続けで、女子と話をしていた事になる。

 それも、全員可愛い女の子だ。精神的にも疲れた、話の端々に、日本や地球での事を織り交ぜてくる。誰のアイディアか聞きたくなってしまう。どうせ、サリーカかフェムのどちらかだろう。ひとみならど直球で聞いてくるだろう。

 他の子は、それほど知っているわけではない。名前と顔が一致する程度だ。それでも、なぜか”神崎凛”の事を知っているのが気になった。気になったが、聞かないことにした。そういう人物が居る程度に思う事にする。


 話の中で、男子は1人も見つけていないようだ。

 怪しいと思ったのは、フェムが見つけた男子だけのようだ。


 それから、フレットの話では、明日辺りから、貴族や商人関係者がパシリカを、うけ始めるので、そっちに来ているのかも知れないという事だ。話を聞いていると、親の片方か両方が、地球の時の商売に近いという事だ。

 それなら、立花は間違いなく貴族様だろう。他にも、同じようなかんじになっている可能性は高い。


 隠蔽が終わったので帰っても良かったのだが、少ない魔力が減ってしまって、少しだるかった事もあり、ご飯食べていきなよという言葉に素直に従った。ミルは、マヤの買い物が終わったら、すぐに戻ってくると言っていたので、まだ戻ってこない所を見ると、買い物の最中なのだろう。


 さて、あの書類をどうするのか相談してみるか?

 ”ミヤナック”と”コンラート”が、書類の但し書きにかかれていた家名なら、協力して貰う必要がある。


 さて、皆の話に付き合っていると、俺の話はいつになってもできない。


「皆さん。少しお聞きしたい事が有るのですがいいですか?」

「なに?」


 やはり、仕切りはフェムのようだ。


「俺は、アゾレム領の田舎の更に辺境から来て、王都の情勢や貴族や教会の事を知りません。噂はなしでもいいので、貴族間の事や教会での事を教えて頂けられ嬉しいです」

「リンはどうして、そんな事を気にするの?」

「先程のフェムの話で、”ぼうけんしゃぎるど”でしたか?すごく面白そうな事を話されていました。俺のオヤジもオフクロも、お話に聞いたような事をしています。探求者と名乗っていまして、俺もマヤと一緒にいろんな所に行ってみたいと思っていますが、貴族とか教会はなんとなく、子供の頃のトラウマで面倒だって印象がつきまとっています。うまく付き合うにはどうしたらいいのかなと思いましてね」


「へぇ探求者なの?ほとんどお家に居ないよね?」

「えぇそうですね1年くらい帰ってこない事も珍しくないですよ」

「寂しくない?」

「マヤも居ますし、村長が良くしてくれていますからね」

「そうなんだね。貴族だと、ルナだよね。なんと行っても、伯爵で、5英雄の末裔だよね」


「やめてよ。家は、兄が継ぐ事が決まっているし、私はそんなんじゃないよ。でも、何を聞きたいの?」

「伯爵様のご令嬢とは知らずに、申し訳ありませんでした」


 立ち上がって一礼する。


「やめてよ。気にしないで、今まで通りでお願い。なんとなく、リンさんに敬語使われると、悲しくなる。だから、私の事もルナって呼んで」

「わかりました。それでは、俺の事も、リンと呼んでください。あっ皆さんもできましたら、リンと呼んでくれると嬉しいです」


 それから、それならばという事で、敬語なしで呼び捨てで呼び合う事が決まった。


「そうね。簡単に説明すると、私の家、ミヤナック家は”皇太子派”と呼ばれているわ」

「”皇太子派”?」

「えぇ皇太子のローザス殿下でまとまっている派閥ね」

「へぇそうなると、反対側は、弟殿下とかですか?」

「いえ、弟殿下も、ローザス様のお味方ね」

「ねぇルナ。ローザス殿下の正妻候補は、貴女なんでしょ?」

「え?そうなのですか?」


 ルナは嫌そうな顔を隠さない。

 可愛い顔が歪むと本当に嫌がっている事が解る。


「えぇ残念ながらそうね。ローザス殿下が乗り気だったり、乗り気じゃなかったり、変人なのよね。あの人」

「へぇ会ってみたいですね」

「リンも変わっているわね。皇太子に会ってみたいなんて・・・」

「だって、一生に一度会えるかどうかの人ですよ?」

「まぁそうね。遠くから見ている分には、イケメンで問題ないのだけどね?」

「”いけめん”?」

「あっごめん。顔がいいって意味ね」

「あっそうなのですね。でも、それじゃ誰が対立軸なのですか?」

「宰相よ。正確には、王弟殿下ね」


 宰相(王弟殿下)vs変人皇子か・・・勝負は、宰相の勝ちだろうな。


「その、勢力図は?」

「リンは、変な事聞くのね。全部詳しく知っているわけでは無いけど、貴方の村があるアゾレムは、宰相派ね。それも、宰相の特攻男爵とか呼ばれているわね。難癖つけて、紛争をふっかけるので有名ね。どこに、それだけの資金があるのか謎だって言われているわ」

「そうなのですか・・・ルナ。おかしな事を聞きますが、現ミヤナック辺境伯は、確か、セイメン・フォン・ミヤナックですよね?」

「えぇそうよ。父を知っているのね」

「お名前だけですけど、でも本当は、”セイメン=ニフタル・フォン・ミヤナック”といいませんか?」

「え?なぜ?家族と本当に親しい人しか知らない真命を?」

「そうですか・・・それで、お兄さんは、ハーコムレイ・フォン・ミヤナックですか?」

「・・・なぜ?貴方?何者?」

「俺は、しがない、村出身の田舎者ですよ」

「うそ!兄は、外では、ハーレイ・フォン・ミヤナックと名乗っているはずよ。その名前を知っているのは、父の古くからの友人と家族だけのはずよ!」


 ネタバラシの必要がありそうだな。

 でも、その前に・・・。


「すみません。ルナ。後で、私が知っている事を話ます。少し待ってください」

「いいわよ。全部聞くまで帰らせないからね!」

「それは怖いですね。でも、ありがとう御座います」


 フレットの方を見る。


「フレット・コンラート。教会のコンラート家に連なる人と判断してよろしいですか?」

「間違いない」

「よかった。お父様は、”リンザー・コンラート”ですよね?」

「え?なぜ、リンザーの名前を?」


 ふぅ間違い無いようだ。

 ニノサの奴。面倒な物を持たせやがって、もしかして、俺たちが狙われたのは、これが原因じゃないのか?


「その前に、ボルダボ家。リヒター家。リチーカ家。グラーフ家。そして、コンラート家、この中で、コンラート家と対立しているのは、ボルダボ家で間違いないですか?そして、コンラート家の令嬢を嫁によこせと言ってきたり、ミヤナック家のご令嬢をよこせと言ってきたり、あまつさえ、第三皇女までも嫁によこせと言ってくるバカな家がありますよね?宰相派閥で、アゾレムに近い関係で」


 ルナとフレットが立ち上がって、腰の短剣に手を置く。


 俺は、敵意が無いことを示すために、両手の平を上に向けて、テーブルの上に置く。


「ルナ!フレット!まだ、リンの説明が終わっていないわよ!」


 ひとみだ。

 こういう所はさすがは委員長だな。


 ルナとフレットは、釈然としない表情のまま椅子に座り直す。


「ありがとう。イリメリ。すみません。いきなり過ぎましたね。お二人に見て欲しい物があります。書類なのですが、書類自身はお見せできません。お見せできるのは、どんな書類なのかと、誰によって作られた書類なのかを示す物です」

「いいわ」「問題ない」


 手紙を取り出す。

 最後の一枚は、俺にあてた物だ。これを見た時には、泣き叫びたくなったが、俺がやるのはそれじゃない。二人の意思を継ぐことだと心に誓った。そして、マヤを守る。


 最初の手紙を二人に見せる。

 書類の説明と、書類の届け先。そして、書類の届け先との関係が書かれている。俺が、二人に語った話は、全部、ニノサの書いた文章に書かれていた物だ。


「リン。その書類をどうするの?」


 ルナが聞いてきた。当然だろう、真実なら・・・いや、この世界では、真実かどうかではなくて、力ある物が、書類を真実だと発表する。これで十分だ痛手になる。その上、書類が真実かどうかの証明をしなければならない。


「ニノサ。俺の父さんだけどな。ニノサの指示に従うよ。だから、二人には協力して欲しい。ダメかな?うまく事が運んだ場合には、ルナの婚姻が決定的になってしまう可能性がある」

「・・・いいわよ。このままジリ貧になって、ボルダボのバカの所や、下品で粗暴な男爵家に行くよりは数億倍ましだし、ローザス殿下は私だけを見てくれると約束してくれているからね」

「私も異論は無い。バカのボルダボを失脚できるかもしれないのに、それに乗らない手はない」


 さて、今後の事を話す事にしよう。

 その前に、出来る・・・打てる手は打っておこう。全部、ニノサの責任にしておこう。


「皆さん。話の流れで解ると思いますが、俺は、ルナとフレットに協力を求めました、そこで、ニノサがやりたかった事に、協力していただきたいのですが・・・」

「なに?まだ有るの?」


「えぇまず1つは、フェムに関係する事ですが、ニノサも俺に、探求者をまとめる組織ができないかと話していました。作ろうと思って、準備をした事も会ったようです。その時に、アゾレムとゴーチエとドライト家に潰されたそうです」


 一気に、本当っぽい嘘の話をする。

 ゴーチエとドライト家は、ニノサの手紙に有った家の名前だ。


「まず。フェム。冒険者ギルドでしたっけ?本気で作るのですよね?」

「もちろん!いろいろ考えは有るけど、まずはお金貯めないとダメだろうから、私とイリメリとタシアナとできれば、ミルにも協力してほしいけど・・・。パーティーを組んで、お金を稼ぐ!サリーカは商人として協力してくれる。アルマールは、今はちょっと言えないけど、変わった物を沢山作りだしてもらう。カルーネは、武器と防具を作ってくれる。それに、ルナとフレットが権威付けをしてくれる事になる」


 ふむ一応考えているのだな。

 最初のブーストさえできれば問題はなさそうだな。あとは、ひとみがうまくやっていくのだろう。


「わかりました。それでは、これを使ってください」


・コボルト魔核74個

・魔核999個

・魔核999個

・白金貨15枚


 を、テーブルの上に出す。


「これは?」

「鑑定してみてください。サリーカなら解ると思いますよ?」


 小分けにした袋を取り出す。


「え?リン!これって」

「コボルト魔核ですね。全部で、74個あります」

「はぁぁぁあんた何考えているの?こんな簡単に出していいものじゃないわよ!」

「そう言われても、俺には、それほど価値が有るものではありませんからね」

「はぁ?価値。これ一個で、あんたがどんな暮らしをしてきたか知らないけど、1~2年なんて余裕で暮らせるわよ!」

「そうなのですか?それはよかった。フェム。これを使ってください」


「リン。ほかも見るわよ。いいわよね?」

「えぇどうぞ!」


 同じ事を、あと3回繰り返す事になる。


 疲れ切ったサリーカを置いておいて

「フェム。あと、皆さん。これだけあれば、即座に動けますよね?権威付けに関しても、先程の話がうまく行けば話が進みますよね?」

「えっえぇそうね。でも、いいの?」

「いいですよ。先程も言った用に、ニノサの頼みでもありますからね。それに、ミルから聞いた話では、貴方たちは立場は違うけど、仲間なのですよね?そして、裏切られる心配がない仲間だと聞いています。そして、ギルドを作る事が目的ではなく、もっと違う目的があると聞いています。違いますか?」


 皆が黙ってしまった。


「うけましょう」

「イリメリ?」

「せっかくの申し出でよ。確かに、自分たちの手で作ろうって話し合っていたけど、今のままでは、最低でも5年は必要になってくる。それが短縮されるのよ?まだまだと思っていてもあっという間に期限が来てしまうわよ」

「そうね。私も賛成だよ。でも、その前に、リンに聞きたい事がある」


 サリーカだ。

 こういう時の女の勘はものすごく怖い。


「ねぇリン。なんで、私たちにこれほど良くしてくれるの?」

「えぇ何のことでしょう?皆さんが可愛いからでは納得してくれないですよね?」

「それでもいいわ。でも、その場合だと、これだけの物を出す条件で、私たち最低でも1人、いや、全員の身体を要求してもいい。正直、全部換金できたら、王都全部買ってもお釣りが来る。それだけの物よ?」


「うーん。魅力的な話ですあ、俺は興味がありません。いえ、貴方たちに興味がないというわけではなく、身体を要求するのなら、先に言っていますし、そんな関係よりも、もっと違った関係を望んでいます」

「違う関係?」

「そうですね。この先、俺やマヤに貴族や教会の一部が強硬手段に出る事が考えられます」

「・・・」「うん」


 フレットと、ルナが肯定してくれた。

 やはり、あの書類はそれだけの価値が有るものなのだ。


「で、その時に味方が欲しいのです」

「でも、それじゃ全然弱いですよ。先程の隠蔽だけで十分だと思われます」

「そういう考えもできますが、それですと、俺は、助けを求める時に、いろんな所にいかなければなりません」


 そう、これで解決出来る大きな問題は、”俺の味方”になってくれそうな奴らが王都に集まっている。この一点にある。王都に来て、ギルドに駆け込めばいい事になる。そして、逃げる場所があるのは、何をやるにしても安心出来る材料にもなる。


「そういう事ね。何かある事に、リンは、ギルドを使うと言っているのね」

「そうですね。お金をだすので、そのくらいの融通はしてもらえると考えています」

「いいわ。その理由なら、なんとか納得してあげる」


 それから詳細が話し合われた。

 資金提供は受けるが、俺の名前は出さない。換金できなかった物は、ひとまず、ミヤナック家に預ける事にする。ミヤナック家との交渉だが、保管料として5%程度渡す事にする。そのかわり、必ずギルドの後ろ盾になってもらう事を確約する。

 これで、宰相派にあって、変人皇子派になかった資金源がえきた事になる。


 さて次だ!


「タシアナ」

「へ?」


 このタイミングで、自分が呼ばれるとは思っていなかったのだろう。


「できるだけ、早く、タシアナの育った孤児院で、院長先生と会えないか?」

「なぜ?」

「うーん。簡単に言うと、ナッセ・ブラウンに会う必要があるって事だ」

「え?なんで、お父さんの名前を?」

「簡単なことだ。さっき、タシアナの話の中で、ナッセ先生と言っていて、俺もバカじゃないこれだけ偶然が重なっていれば、なにかあると思うだろう。ニノサの探求者仲間で、ナッセ・ブラウンという人が居て、孤児院の院長だと書かれていた」

「え?うそ?」

「本当だ。それにフェム」

「え?私?」

「ギルドの責任者にしたいと言っていた男は見つかっていないのだよな?」


 フェムだけじゃなくて、イリメリとサリーカとルナとタシアナが首を横にふる。


「そうか、でも、見つかったとしても、俺と同じで、今年パシリカだよな?」

「そうね」

「年齢は同じという事になる。そのギルドがどういった組織になるのか知らないが、トップがこんな餓鬼で信用される組織なのか?貴族や教会の色が濃い人がトップをやって良い組織なのか?なんか違うよな?」

「えぇそうね。残念ながら」

「それなら、ちょうど、孤児院の院長をやっている人物が居るのだから、トップをその男が見つかって、トップに見合うようになるまでお願いしたらどうだ?さっきの資金があれば、孤児院の運営も出来るだろう?人手が必要になるだろうから、孤児院ごとギルドに組み込んだりできないのか?」


 資金ブーストができれば、だいぶ状況も見えやすくなるだろう。

 さて、人との面談なんて、やったこと無いけど、会わないことには話が進まないだろう。


 面談の日程が整ったら、宿屋に連絡して欲しい旨を言い残して、宿屋い戻る事にした。

 フェムたちはまだ少し残って話すようだ。

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