トレイントレイン


ばばあがいた

なんだばばあか

おれは思った

ここは電車の中

おれはばばあに親切にしてやることにした

席を譲ってやったのだ

しかも無料で

ばばあは無言で座り込んだ

おれは何かしらの見返りが欲しいと思った

「ばばあよ………」

口を開いた

車内が隅々まで静まり返った

まるで全世界がおれに注目しているかのようなそんな感覚を味わった

さらに続けた

「ばばあよ、椅子の座り心地はどうだ?」

ばばあはおれの発言を無視した

というよりおれという存在がここにいないかのようなそんな素振りをした

これにはがっかりだ

「何てばばあだ………」

おれは呟いた

このばばあは明日、死ぬ


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