愛犬


大鍋に水を張って

火を点けた

それが沸き立つと

中にパスタをぶちまけた

そして弱火で一昼夜、煮込んだのだ

完成した料理を愛犬に食べさせてやることにした

おれは早速、呼んだ

愛犬がこちらへうんざりしたような顔でやって来た

「よう愛犬!」

おれは手を挙げ話しかけた

「元気にしてたか!」

名前は忘れた

いつも忘れてしまうのだ

だからもっと簡単な名前にすれば良かった

例えば犬とか

愛犬はふにゃふにゃのパスタを見下ろした

もそもそと口にした

おれは言った

「あのなあ、手間暇かけて作ったんだぞ」

そこを強調した

愛犬は(うるせーなあ………)と思いながら食べた

そして殆ど残した

「一体どういうことなんだよ?」

おれは怯えた

愛犬の様子がおかしい

頭を撫でようとすると不愉快そうにそれを払い除けた

「もう殺すしかないのかもしれないな」

おれは呟いた

飼い主の愛情に応えてくれないペットなんて飼っていても意味が無いからだ


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