通り魔
通り魔がいた
通り魔が包丁を握り締めた
焦点の合わない瞳で何か呟いていた
自分にしか通用しない理屈を頭の中で反芻した
誰でも良かった
だがおばちゃんが通り魔にびんたした
もう片方の手にはスーパーの白いビニール袋が吊るされていた
「あんた邪魔なのよっ」
道を塞ぐように立っていた通り魔は倒れた
「あれまあっ」
背後で誰かが見ていることを知るとおばちゃんは驚きの声をあげた
まるで自分が通りすがりの第一発見者のように
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