手鏡


手鏡を使って行う犯罪でわたしは捕まった

軽犯罪だ

それは重犯罪ではなかった

だから重犯罪よりずっと良いことだった

まともだった

世の中には人を殺したりする奴もいるらしかった

そいつらに比べればずっと正常だった

今朝のことだ

駅の階段に女子高生がいた

今、思うにあれは罠だったのだろうか

むっちりとした太腿

その奥に隠されている下着

不思議だ

どうしてあのようなただの生地に欲情してしまったのか

だが抗いがたい吸引力があった

釘づけだった

わたしは手鏡をそっと差し込むように出した

しかしこういう考え方も出来ると思うのだ

わたしは女子高生の下着を見たわけではなかった

下着が映った鏡を見ていたのだ

鏡を見ていたのか下着を見ていたのか

そのどっちだと問われればわたしは鏡を見ていたと答える

天地薄明に誓う

「下着は見ていない、わたしは鏡を見ていたのだ」

個室で警官は言った

「でもそこに下着が映ってたんだろ? あんただって大学教授なんだからそのぐらいわかるだろ?」

ええ

確かにその通りです

あなたの言い分は正しい

論理的です

認めましょう

やって来た家族のわたしを見る目つき


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