人殺し


狂ったように雑草が

おれの足元で生い茂っていた

絡み付いて身動きをとれなくさせていた

おれは人殺しだった

これから人を殺そうと思っていた

それを邪魔するのだ

足元で絡み付く物言わぬ第三者の存在

空の青さには明確な意思を感じさせた

「お前なんてこの世界に生まれて来なければ良かった」

そのような囁きが聞こえて来た

一言、言わせてもらうなら

おれだって別に人を殺すのが好きなわけではないのだ

ただ殺すべき対象がいる限りやはり人を殺すしかないのだとは思う

仕事だ

仕事を楽しく行なう奴

そんな奴は寧ろ稀だろう

人殺しは皆、休日になると農園で有機野菜を栽培したりしている

そして次の日には同じ腕で人を殺す

何も問題は無い

「人殺しなんて卒業しろよ」

よくそう言われる

何かを勘違いしている

人殺しというのは遺伝子に組み込まれた情報であって行為ではないのだ

「ああ」

昔から返事だけはよく出来る子と評価されていた

「本当にか?」

おれはそいつの耳たぶに弾丸をぶち込んだ

「二度とおれの前で正論を吐くな」

誰にも何も言わせるつもりはない

人殺しがいる

そしてたまたまそれが自分だっただけだ

お前でも良かった

だが今回はおれだった

狂った雑草は視界の全てを覆い尽くすよう繁茂していた

火炎放射器で燃やせば良い


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