第10話

授業中、ずっとソワソワしてた。

いつ渡そう。

いつ話そう。

というか、話せるかな。

渡せるかな。

そんなことばかり。

先生ごめんなさい。授業に集中していませんでした。


授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

よし、渡せるかな……?!

とか思って、桐山くんの方を見ると、まさかのもういない。

え、信じられないんだけど。

どんだけいなくなるの早いの。


そんなことをずーっと繰り返していた。

昼休みも、掃除の時間も、スグにいなくなっちゃった。

チャンスは放課後。


「桐山くん!」

「えっ、はい、なんでしょう……」


帰ろうとしていた桐山くんを引き止める。

やっと話が出来る。

やっとお礼が言える。

やっと、パウンドケーキを渡せる。


「これ、この前のお礼。」

「お、おう。」

「リンゴのパウンドケーキ。」

「へぇ、うまそうだな。サンキュ」

「……どういたしまして。」


笑顔がとても眩しかった。

とてもキラキラ輝いて見えた。

金髪に反射する夕日もあるけれど、それだけではなく、

桐山くんの笑顔が、眩しかった。


どこかで、きゅんっと音がするのが、聞こえたような

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