感覚菓子
私はテーブルの上のお菓子をじっと見つめていた。パッケージには『
私は悩んだ末にマッサージ味を手に取って食べた。その瞬間、体中を快感が駆け抜けた。まるで本当に誰かにマッサージをされているかのような感覚だった。わざわざ店に行かなくても、マッサージを体験できるのは嬉しい。
次はどの味を食べようか。いろんな味があって迷うが、殺人味が気になり、私は手に取って食べた。すると両手を嫌な感覚が駆け抜けた。続いて体に何かが飛び散ったかのような感覚がした。返り血だろうか? さらに言い表しようのない感覚が体を包んでいく。これが殺人の感覚なのか?
私が思うに今のは刃物か何かで人を刺した時の感覚だろう。推測が当たっているかを確認するために、パッケージの裏を見る。そこには『※これは刺殺の殺人味です』と書かれていた。殺人味は何の殺人の感覚なのかがちゃんと記載されているのだ。
次はどれにしようかと考えていると、携帯電話が鳴った。携帯電話を手に取ると、耳に当てた。相手は友達の母親だった。母親は開口一番に友達が交通事故死したことを告げた。突然の知らせに私は頭が真っ白になった。母親はお通夜と葬式の日程を告げると、電話を切った。
私はしばし放心状態だったが、ふとある味の『感覚菓子』が目に入った。それは交通事故味だった。友達はどんなに痛い思いをしたのか。この味を食べれば分かるかもしれない。
私は交通事故味を食べた。その瞬間、想像を絶するほどの痛みが体中を駆け抜けた。これが交通事故の感覚なのか? あまりの痛みに私は座り込んでしまった。
そして私は意識を失った。
――ある女性が交通事故味を食べてショック死したことが判明し、全国のお店から『感覚菓子』は回収された。
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