不倫
滝野は彼のことを思い浮かべながら、姿見の前に行き、髪を整えた。姿見には黒のワンピースを着た滝野が映っていた。彼の好みに合わせて黒のワンピースを着ている。
姿見の前で回っていると、インターホンが鳴った。滝野はドキドキしながら、玄関に向かった。玄関の扉を開けると、彼が笑顔で立っていた。
「やあ、美穂さん」
「
滝野は彼を自宅に招き入れた。
☆☆
滝野は目覚めると、ゆっくり体を起こした。隣では彼が寝息を立てて熟睡していた。夜中まで彼と事に及んでそのまま寝てしまったのだ。ふとベッドサイドの写真立てが目に入った。その写真には滝野の祖父母が写っていたが、祖母の顔は切り取られていた。
「何を見てるの?」
隣から声が聞こえ、顔を横に向けると、いつの間にか彼が起きていた。彼は滝野の視線を辿ると、すぐに顔をしかめた。
「前から思ってたんだけど、何で顔が切り取られているんだい?」
「おばあちゃんは不倫相手と駆け落ちしたらしくてね。それ以来、音信不通みたい。おじいちゃんは不倫が許せなくておばあちゃんの顔だけを切り取ったみたいなの」
「へえ、そうだったのか」
彼はそう呟くと、ベッドから降りて服を着た。それから滝野にキスをすると、仕事に出かけた。彼の会社は近くにあり、滝野の自宅に泊まった時はここから直接仕事に出かけていた。
滝野も服を着ると、庭に出て花に水やりを始めた。祖父がガーデニングを趣味としており、その影響で滝野も始めたのだ。祖父とは一緒に暮らしている。
端から順番に水をやっていると、滝野は花壇の中心だけが枯れていることに気付いた。いつも中心の花だけが枯れてしまう。何でここだけ枯れるのだろうかと滝野は疑問に思い、手で掘り始めた。
「え? なにこれ?」
花壇から頭蓋骨と思しきものが二個も出てきた。頭蓋骨の側には紙があった。紙を開けてみると、『滝野美穂様へ』と書かれているのが目に入った。それは
この頭蓋骨は祖母と土野良平という人のだろうか? だとすると祖母は不倫相手と駆け落ちしたのではなく、何者かに殺されたことになる。花壇に埋まっていたことを考えると、その可能性が高いだろう。
「あぁ、見つかってしまったか」
突然、後ろから声が聞こえ、滝野は振り返った。祖父が包丁を手に持ち、無表情で立っていた。
「お、おじい――」
滝野は言い切る前に喉を包丁で刺されて絶命した。祖父は無言で滝野を花壇に埋めた。出張中に滝野美穂が土野良平を自宅に招き入れたことを知った時のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます