直さなきゃ

 幼い頃は素直で可愛かった娘が不良になってしまった。朝方に帰宅することが多くなり、注意しても口答えするばかりで反省の色が見られない。それに悪い連中とつるんでもいる。

 きっと頭の回路がバグったんだ。でなければ娘が不良になるはずがない。何としてでも直さなければならない。

 娘はまだ帰ってきていない。もう朝の六時だというのに、娘はいったい何をしているのだろうか?

 娘が帰ってくるのをひたすら待っていると、玄関の扉が開く音がした。娘は欠伸をしながら、リビングに入ってきた。

 私は無言で立ち上がると、さっきまで座っていた椅子を持ち上げ、娘を叩いた。

「痛っ! 何すんだよ、クソババア!」

「……テレビの調子が悪くなった時、叩いたら直ることがあるわよね。それと同じようにあなたも叩くのよ。叩けば直るかもしれないから」

「は? 私は機械じゃねえし!」

 娘は鬼のような形相で私を睨んできた。目尻には涙が浮かんでいる。

「安心して! 私が責任を持ってあなたを必ず直してあげるから」

 私は娘が直ることを願い、椅子を思いっきり振り上げた。

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