ニキビの呪い

「えっと、この『私の思いを届け ~愛情たっぷりの目玉焼き入りオムライス~』をお願いします」

「かしこまりました」

 猫を思わせる格好をした女店員がペコリと頭を下げ、去っていく。

 私は今話題の猫カフェ『キャットガールズ』に来ていた。テレビで特集を組まれていたのを偶然拝見し、面白そうなカフェだったので、足を運んでみることにしたのだ。

 壁一面には可愛らしい猫の写真が隙間なく貼られていた。100枚は優に超えているのではないだろうか。

 しかし、本物の猫は一匹もいない。猫の格好をした店員がいるだけだ。衛生面のことを考えて猫を置いていないのかもしれない。

「お待たせしました。『私の思いを届け ~愛情たっぷりの目玉焼き入りオムライス~』になります。ごゆっくりどうぞ」

 オムライスは猫の形をしていた。私は早速スプーンをオムライスに差し込んでみた。スプーンは何の抵抗もなく、スッと入り込み、中から半熟の卵がトロリと流れ出てきた。

 私は卵をこぼさないように口に運んだ。卵がご飯全体に絡み合い、おいしさを引き立たせていた。

 オムライスを口に運び続けていると、一人の男性客が入店するのが目に入った。

 その男性客は顔中がニキビだらけだった。私はげんなりしてしまう。食事中にそんなのは見たくなかった。

「……気持ち悪い」

 私は思わず、そう呟いた。その瞬間、男性客は血相を変え、私に近づいてきた。

「ごめんなさい」

 私は謝ったが、男性客は構わず、私の体を触りまくった。

「セっ……!」

 セクハラと叫ぼうとしたが、私は自分の見た光景が信じられず、声を発することができなかった。

 男性客に触れられた箇所に・・・・・・・・ニキビが発症・・・・・・していた・・・・

「……お揃いだね」

 男性客はニヤリとしながら、私の耳元で囁いた。


 ☆☆


 ――翌日。

 私は昨日のことを思い出しながら、『キャットガールズ』に入店した。

「ちょっと見てよ、あの人、不潔だよね。ちゃんとケアしてから来てほしいよね」

 女子高生と思われる集団が私を指差して、笑っていた。笑っていられるのも今だけだ。すぐに私と同じ目に遭わせてあげるから。

 私は女子高生の集団へと近づいた。

「な、何よ。文句でもあるの?」

 私はその問いかけを無視し、女子高生たちの体中を触りまくった。

『セっ……!』

 女子高生たちは昨日の私とまったく同じ反応を示し、固まった。それも無理からぬことだろう。

 私が触れた箇所にニキビが・・・・発症している・・・・・・のだから。

「……お揃いだね」

 私と同じ体質・・・・になった・・・・女子高生たち・・・・・・に満面の笑みを向けた。

 ――次は君たちの番だよ。

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