ヒーロー志望

「聞いて驚くな。私は本日を持ってアルバイト人生をおさらばし、ヒーローになる!」 

 声を高らかに上げ、オバカな発言をしたのは恥ずかしながら俺の姉である。

「へぇ~」

 とりあえず、相槌を打つことにした。

「あんまり驚いてないな」

 ムスッとした表情で姉は言った。

「驚くなと言われたから」

「言ったことをきちんと守るとはな。そんなことじゃ世の中渡り歩いていけんぞ」

 世の中渡り歩いてない奴に言われたくないんだがな。

「それはいいとして話を進めるぞ。これが私の想像するヒーローだ」

 姉は言いながら、テーブルに紙を置いた。

 見てみるとそこにはボロボロの服を身にまとい、ヒゲがぼーぼーに生え、前歯が数本ない冴えない男が描かれていた。

「仕事と奥さんを失くし、生きる意味を見失って途方にくれてる中年の親父みたいだな。子供からすればかっこ悪いヒーローだな」

「……子供のことを考慮してなかった。私としたことが不覚。私だけじゃヒーローになれない。お前が必要だ。私と共にヒーローになろうじゃないか!」


 ☆☆

  

 これを国語の作文で書いて、提出したら怒られた。まじめに書けと。俺としては結構まじめに書いたんだがな。

 こいつを許せなくて俺はヒーローになると誓った。ヒーローになって見返してやるんだと。

 ……自分で言ってて恥ずかしくなったから、ヒーローになるん止めるわ。


 数年後。

 俺を怒った教師がヒーローになった。何があった?

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