死因

 オレは住宅街を歩いていた。

 人の気配がしない家が何軒かある。空き家か留守かのどちらかだろう。

 オレは何軒かあるうちの一軒に侵入することにした。

 オレは泥棒を生業としている。なりたくて、泥棒になったわけじゃない。両親が泥棒になりなさい、と言ったから。泥棒以外になったら、殺すと脅されたから。

 その時の表情を思い出すと今でも震えが止まらない。

 周りを見回して誰もいないことを確認すると、塀を蹴って上がる。さらに縁を蹴ると、屋根を掴んで上がった。

 煙突に入って、両手両足を横に広げてゆっくりと落ちる。着地して部屋に入った。

 部屋を散策して金目の物を盗んだ。 

 別の部屋も探そうと思い、扉を開けて部屋を出る。

 廊下に若い女性の死体が転がっていた。タンクトップを身に着け、下着が足首までずり下ろされていた。

 唇の端から涎が垂れ、うっとりとした表情をしていた。女性の性器からは血が出ていた。

 う~む。抵抗したような跡はないな。それにこの表情だし、合意の上でやったのかな。

 まあ、とりあえず警察に通報するか。不法侵入してるから、オレは確実に逮捕されるな。

 携帯を取り出して110番にかける。

「民家で死体を見つけたのですが――」


 ☆☆


 数十分後、警察が到着した。

「通報したのはあなたですか?」

 刑事がオレに声をかけた。

「あ、はい。オレ――いや、ワタシです。どうも、泥棒を生業としている緋色雨月ひいろうづきと申します」

 オレは頭を下げた。

「これは懇切丁寧にどうも――え? 泥棒?」

 刑事はなぜかぽかんとした表情をしている。

「そうです。ワタシ、この民家に不法侵入して死体を発見したのです。そうだ、これを」

 オレはポケットから先ほど盗んだ金目の物を取り出す。

「これは?」

 刑事は受け取り、聞いてくる。

「この民家から、盗んだものです」

「えっと、質問してもいいですか」 

 困った表情で刑事が質問してくる。

「いいですよ。何ですか」

「緋色さんはなぜ泥棒を」

「両親に泥棒になりなさいと言われましてね。泥棒以外になったら、殺すと脅されて仕方なく泥棒をやってるんですよ」

 苦笑しながら、オレは言った。

「逮捕するべきかしないべきか」

 刑事はこめかみに指を当てながら言った。

「するべきですよ。不法侵入していますし、盗みましたし。さあ、どうぞ」

 両手を前に出して言った。

「しかし、緋色さんは盗んだものをこちらに渡してくれましたし、不法侵入したことによって死体を発見し通報してくれたんですから」

「そうですか」

 むすっとした表情で言った。

「なぜ、不満そうな顔をするんですか」

 別の刑事がこちらに向かってくる。

「家の者が現れました。こちらです」

「そうか。今いく」

 刑事は別の刑事に連れられ去っていく。

 オレも後をついていった。


 ☆☆


 オレは驚いていた。家の者というのがオレの両親だったから。

「驚いたな。オレが家を出たあとにこの民家に引っ越したのか」

「ええ。そうよ。まさか、こんなところでわが娘に会えるなんてね」

 お袋は愛しくて仕方ないといった表情でオレを見つめてくる。手を伸ばし、胸を触ってきた。

「何をする。お袋」

「貧乳ね。小さい頃からまったく大きくならないわね」

 お袋はそう言いながら服をめくり、ブラを剥ぎ取る。

「やめてくれ、お袋」

 オレは顔が赤くなるのを感じながらも必死で抵抗する。

「恥ずかしがらなくてもいいのよ。親子なんだし。それに貧乳なんだから、ブラをする必要ないでしょう」

 両手で小さな胸を力強く揉んでくる。

「そういう問題じゃない。周りには刑事がいるんだぞ」

「それがどうしたって言うの? あなたのためを思ってやってるんだから」

 オレのためだと?

「どういうことだ? お袋」

「あなたは男勝りな性格だから。一人称もオレだし。胸を揉みまくって興奮させれば、少しは女らしくなるかなと」

「……お袋。ただ単にオレの胸を触りたいだけなんじゃ」

「あら、ばれちゃった。こうしてやる~!」

 ズボンとパンツを脱がされ、最後の砦である服も脱がされ全裸にされてしまった。

「母さんね。すごく興奮してるわ。父さんと交じり合った時よりも」

 親父の顔を見るとそんな、って表情をしていた。どんまい親父。

「これ、何か分かる?」

 お袋が手に持っていたのは家の鍵だった。

 オレは押し倒されて両足の足首を片手で掴まれてグイッと真っ直ぐに上げられた。お尻が丸見えだ。恥ずかしいですぜ。

「雨月の可愛い可愛い肛門に鍵を挿入しちゃいま~す!」

 鍵を肛門に差し込まれた挙げ句、グリグリされた。

 やめろ。それ以上やると、

「ふは~」

 ほら、出てしまったやん。大便が。

「雨月の大便。欲しい」

 え? 何と、お袋は素手で大便を食べ始めた。

「あら、意外といけるわね」

 アンタの味覚どうかしてるよ。

「ぺろぺろ。へへ」

 肛門を舐められた。

「あのー」

 オレに質問をした刑事がお袋に声をかけた。

「何でしょうか」

「娘さん。いい身体していますね」

「でしょ!」

 この変態刑事め!

「若い女性はどなたでしょうか」

 若い女性? そういえば、そうだった。お袋のせいで忘れてた。

「私の妹の娘……姪っ子ですね」

 オレからすれば、従妹だな。何年も会ってなかったから気づかなかった。

「姪っ子さんはこの家の鍵をお持ちで?」

「ええ、持っていました。多分、私たちが出かけてる時に合鍵を使って家に入ったんでしょう」

「そうですか」

「死因は分かったのですか」

「まだ、調べてるところです」

「もしかして、死因はアレじゃないかと私は思ってるんですよ」

 アレ? なんだろう。ってか、肛門に指を入れながら、喋んなよ。服を着させろよ。

「アレといいますと?」

 お袋は小さく息を吸い込み推測を語り始める。


「姪は心臓が小さい頃から弱かったんです。性器に針を挿入し、傷つけたりして遊んでました。性器から血が流れていたのは、これが原因でしょう。おそらく、興奮しすぎて心臓発作となってしまったんではないかと。要するに、死んだのは自業自得ということですね」

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