声優さえできればいい

東郷 アリス

第1話プロローグ


「ねえねぇ、昨日の観た?」


「すごかったよね!」


「あれは…神だ」


「やっぱ、カノンちゃんって最高だよね!」


俺はそんな話をしているグループの横を通る。


「カノンちゃんってかわいいよねぇ!」


「声もいいし、欠点っていうとこないよね!」


さっきから俺が話しているグループの横を通るたびに聞くカノンちゃん。


正式に言うと 赤宮 カノン。


彼女は去年デビューしたての声優だ。

そんな彼女が何故こんなにもみんなに知られているのか。


その理由は絶対にこれだろう。


そして俺は、街に流れている動画をチラッと見てみる。


青春。


これが彼女の一躍有名になった理由だろう。

この青春とは、とある動画サイトで放送された動画の名前だ。


その動画がみんなの共感を生み、また一人、また一人と広がっていった。


そしてそれを認められ、彼女は声優業界へ入っていった。


そして見事デビュー作がヒット。

彼女はより有名になり、次から次へとメインヒロインの座を獲得していった。


そしてその人気はデビューして一年と半年ほど経っても衰えることを知らない。

むしろもっと人気になったくらいだ。


「ただいま」


「あっ、カノンちゃじゃなかった、きりんお帰り」


「ああ、ただいま」


言っとくけど、きりんって名前だけど男だからな!


俺はリビングのソファーにダイブし寝転がる。


「今日の予定はどうし………!!!」


そう、俺が手帳で今日の予定を確認しようとした時だった。


俺の身体が突然に変化し始めた。

そして一気に変化してその変化は止まる。


「きりん。今日の予定は……あっ、カノンちゃんになってる」


そう、私がカノンちゃん、赤宮 カノン本人だ。

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