第51話 企画書
企画書
俺達は部屋を出て、ギルドの街に戻る。ブルは、祝勝会があるからと、そこで別れ、タカピさんも明日から忙しくなると言って落ちた。
なので、俺とローズとカオリンでVRファントムのギルドルームに入る。
サモンとクリスさんは、狩にでも行っているのか、部屋には居なかった。
俺がソファーに腰掛けると、当然のようにローズが俺の横に座る。
カオリンは、少し迷ってから、俺達の正面に腰掛けた。
「しかし、やっと、それこそ蜘蛛の糸かもしれないが、希望が出て来たよ。うん、ローズもカオリンも本当にありがとう。」
「えへへ。あたいは何もしていないっす。でも、本当に良かったっす。」
「あたしもお礼を言われる筋合いはないわ。シンが頑張った結果よ。ところでローズちゃん、さっきの話、詳しく聞かせて欲しいわ。」
ふむ、これは特に隠す事でもないだろう。
ローズに喋らせると、それこそ碌なことを言いそうにないので、俺が答える。
「あ~、それは、よくよく考えて、結局付き合う事になった。ローズはこんな俺でも好きになってくれた。俺には勿体無いくらいだよ。」
「そ、そう、それは良かったわね。でも、シン、貴方、もし今回の結果、元の身体に戻れたら、その後、どうするつもりなの? ローズちゃんは、そ、その……。」
「ん? そのままリアルでも付き合うだけだよ。それに、ローズの病気も100%治らないと決まっている訳でも無いだろう?」
そう、もしそうなれば、彼女にも可能性が出る!
確かに高いハードルだが、岡田先生の話では、決してゼロでは無い!
「そ、そう…なん…だ。じゃ、じゃあ、あの約束は?」
「シンさんは、こんな私でも、リアルで付き合ってくれると言ってくれました! だから、私はシンさんをこの世界に縛るつもりはありません! そして、あの約束も守った事になります! そ、その、カオリン、ごめんなさい! あ、後、こ、ここだと全部聞かれています。ちょっと場所を変えましょう!」
「え? そ、そうね。シン、ごめんなさい。ちょっとローズちゃんを借りるわよ。」
二人はそのまま出て行った。
う~ん、訳が分らん。
大体、何故ローズが謝る必要がある?
俺が、一人悩んでいると、サモンが来た。
「サモンさん、お帰り、うん、おかげで上手く行ったよ。ありがとう。」
「そか。そら良かった。しかし、シンさんはおもろいな~。あのブルーベリーって人も、VRファントムに入れたんやろ? ギルドメンバーに追加されとった。ほんで、メイガス二人って。はっきし言って、ここ、PVPに出たら最強やろな。」
「まあ、そうなるかな? でも、ブルはプラウを抜けるつもりは無いようで、プラウの人が集まらない時だけ、こっちに遊びに来るらしい。今度紹介するよ。なので、うちとプラウでやったら面白いかもね。平均レベルも同じ80台だし。」
「お、それはそれでおもろそうやな。それより、出来たで! 企画書や!」
「はや! しかし、何かサモンさんにだけやらせて悪いな~。」
「それはええねん。アイデアはシンさんやしな。それに、わいもそろそろ…いや、何でもないわ。ほんでこれ、どうないしたらええやろ?」
サモンはタブレットをテーブルに置く。
ふむ、その中に内容が入っていると。
「うん、後で姉貴に…」
「呼んだかしら~。」
ぶはっ!
目の前に、三頭身美少女が現れた!
「あ、姉貴、お早う。今日は少し早いな。まだ11時半だぞ?」
「アラちゃん、サモンちゃん、おはよ~。う~ん、ちょっと進展があったから、新庄ちゃんも駆り出されちゃって、あんたの相手出来るのは、今、あたしだけなのよ~。」
なるほど。現在、NGMLは、ブルのログを解析するのに大わらわと。
原因である俺が言うのも何だが、可哀想に。新庄の奴、また寝られないな。
「あ、姐さん、おおきに。ほんで、昨日の奴、仕上げときましたで! 目ぇ通して下さい!」
サモンはタブレットを姉貴に手渡す。
「あら。流石は伏見…、いえ、サモンちゃんね~。早速、朝にでも上げておくわ。それで、あんた達、もしこれが通っても、今のNGMLには、この企画に割ける人員が居ないのだけれど?」
ぬお?
それって、間違いなく俺のせいだ!
とは言え、俺には医学の知識も無いし、自分の為にNGMLの研究を手伝える訳も無く。
「あ~っ! 姐さん、読めて来たわ! しかし、それは迷うわ~。わいは今、休養中の身分や。それに、スタッフもおらへん。」
「そうよね~。で、そこの愚弟は、プログラミングとかの知識だけは人並み以上なのよね~。簡単なOSくらいなら、一人で作れるみたいよ~。」
ん? 何の話だ?
サモンが休養中? スタッフ?
そして、何故俺が絡む?
「あ~、姐さん! それ以上は勘弁して下さい! クリスとも相談せなならんし。」
「あら? 私はNGMLには人手が足りないって言っただけよ~? それに、その企画がまだ通るとも限らないわ~。」
「こんなおいしい企画、見過ごす経営者はアホですわ! しかも、シンさんにそないなスキルもあったとは! あ~! もうええですわ! ちょっと失礼させて貰います!」
サモンはそう言って出て行った。
う~ん、訳が分らん。
「姉貴? 今のは、一体何の話だ?」
「う~ん、後はサモンちゃんに任せておけばいいのよ。アラちゃんは、自分に出来る事だけ考えていれば宜しい!」
「いや、今の俺には、その出来る事が何も無いのだが?」
「確かに、今はね。それより、アラちゃん、生き返れた後の事、考えてる~? アラちゃんのスマホにあった、約束していたお客さんには、私から謝罪のメールを出しておいてあげたけど。」
「げ! そういや完全に忘れていた! 姉貴、ありがとう!」
「そんな訳で、アラちゃんは生き返れても、信用はゼロからのスタートね。」
「あ~、そうなるよな~。だけどそれも、全ては生き返れてからなんだよな~。」
「何とかなるでしょ。あの人達も本気だし。じゃあ、私も色々雑用があるから。」
姉貴はそこで消えた。
とにかく、色々分からない事だらけだが、希望が見えたのは確かだろう。
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