7-3 強くなる 又は、 イヤよイヤよも
お姉ちゃんと暮らしてたことはあんまり覚えてない。
お姉ちゃんと別れて、お義兄ちゃんと暮らし始めたときのこともよく覚えてない。
だから、生まれたときからずっとお義兄ちゃんと暮らしてたみたいな気がする。
お義兄ちゃんは、あたしがケガをしそうになったり、病気になりそうになったりすると、とても悲しそうな顔をする。だけど、あんなに悲しそうな顔してるのを、自分では気づいてないみたいだ。
あたしがカゼをひかないように心配して自分がカゼをひいたりする。だけど、自分が苦しいのや危ない目に遭うのは平気みたいだ。
お義兄ちゃんにはいつも笑っていてほしい。あたしも一緒に笑っていたい。
あんな悲しそうな顔や心配そうな顔をしてほしくない。
あたしが弱いのがいけないんだよね。あたしが強ければいいんだ。ケガにも病気にもなんにも負けないくらい。
お義父さんやお母さんに「強くなりたい」って相談したら、友だちを紹介してくれた。突きや蹴りの打撃系、絞め技や関節技、何でも取り入れた格闘術の天才だそうだ。
毎日通って一生懸命練習したら、「すごい才能だ」ってほめられた。師匠には「試合に出ないか」「本格的な選手にならないか」と熱心に勧められるけど、興味はない。
有名になるのはイヤだ。試合なんかに出たら、お義兄ちゃんに知られたら、心配される。ケガしたら、あんな悲しそうな顔されるのもイヤだ。
トロフィーがほしくてやってるんじゃない。
ただ強くなりたかっただけ。
あたしは強くなった。内緒で練習してるから誰も知らないけど、学年であたしに勝てる生徒はたぶんいない。3歳年上で、ウェートも6階級ぐらい上なお義兄ちゃんだって、あたしが本気になったら秒殺だ。
あたしが殴ったり蹴ったりかまうのをイヤそうにする。でも、あんな悲しそうな顔をすることはない。だから、ほんとはイヤじゃないんだよね。ねえ、お義兄ちゃん。
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